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スペイン代表がUEFAネーションズリーグ優勝
「勝ったらインターコンチネンタルカップに勝った、と胸を張るけど、負けたらトヨタカップに負けた、と言うだけさ」
一昔前、スペインサッカー界にそんなギャグがあった。ご存知の通りインターコンチネンタルカップもトヨタカップも同じ大会なのだが、負けず嫌いで言い訳好きのスペイン人の気質がよく表れている。
昨日(19日)、UEFAネーションズリーグでスペインが優勝した。EURO2012優勝以来、実に11年ぶりのタイトル獲得である。ブラジルW杯に始まった長い低迷に終止符を打った、と言える──と言いたいところだが、そうではない。
内容は良くなかった。
デ・ラ・フエンテ監督の4戦目で、これで3勝1敗となったわけだが、クロアチアのサイドアタックに苦労し、チャンスを作れず、120分で決着をつけられずPK戦での勝利だった(0-0。PK4対5)。
もちろん、決勝なんだからどんな内容でも勝てばよいのだが、3回目の大会で歴史が浅く、“結果良ければすべて良し”と言えるほどの権威は、まだない。
みなさんはこの大会のことをどのくらいご存知だろうか? フォーマット上は一応、スペインは欧州の頂点に登り詰めたわけだが、その威光はEUROと比べるべくもない。
メディアの扱いもそうだ。
勝ったから大騒ぎしているが、負けていたら決勝進出を称えるどころか、“これでEURO2024予選は突破できるのか?”という論調になっていただろう。
大会の開幕は1年前。6月と9月に行われた6試合のグループリーグを苦労して勝ち上がったわけだが、ネーションズリーグ決勝トーナメント進出を喜んだメディアは一つもなかった、と記憶する。それよりも、カタールW杯への不安の方が大いに話題になった(2カ月後、その不安は的中するわけだが)。
カタールで16強止まり。デ・ラ・フエンテ新監督の下、再スタートとなったEURO2024予選はスコットランドに敗れてつまずいた。そんなタイミングで「欧州王者」と言われても、ピンと来ない。
祝勝会の大騒ぎも、選手のレベルが落ちている、という声を掻き消すことはできていない。
ビージャ、イニエスタ、シャビ、セルヒオ・ラモス、プジョル……らレジェンドと比べるのは可哀想なのだが、現代表で黄金時代のメンバーと肩を並べることができるのは、ロドリくらい、と言われている。確かに、昨夜の最終ラインの顔ぶれが、大ベテランのジョルディ・アルバ、ヘスス・ナバスと、フランスとの二重国籍組のラポルテ、ル・ノルマンとなると、そうかもしれない、と思う。
ネーションズリーグが閉幕し、W杯を挟んだ長い、長い欧州の22-23シーズンがやっと終わった。昨夜は負傷者が何人か出た。今は十分に休養してもらうことを願うだけだ。
文:木村浩嗣
木村浩嗣
編集者、コピーライターを経て94年からスペインへ。2006年に帰国し『footballista フットボリスタ』編集長に就任。08年からスペインに拠点を移し特派員兼編集長に。15年編集長を辞し指導を再開。スペインサッカーを追いつつセビージャ市王者となった少年チームを率いた。現在はグラナダ在住で映画評の執筆も。
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