人気ランキング

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

メルマガ

お好きなジャンルのコラムや
ニュース、番組情報をお届け!

メルマガ一覧へ

コラム&ブログ一覧

サッカー フットサル コラム 2022年11月8日

ジェラール・ピケの《望まれた引退》

木村浩嗣コラム by 木村浩嗣
  • Line
ファンに挨拶をするジェラール・ピケ

ファンに挨拶をするジェラール・ピケ

ジェラール・ピケが引退した。

5日のアルメリア戦の84分、カンプノウのお客さんのスタンディングオベーションの中、ピケは主審、グラウンドにいたチームメイト全員、ベンチの全員、スタンドにいた招集外選手全員と抱き合ってお別れをした。スタンドからはベッケンバウワーをもじったあだ名“ピッケンバウワー”コールが起きていた。ベンチに座り込んだ彼は笑顔の中にも涙ぐんでいるようだった。

理想的な引退の仕方のように見えた。だが、レジェンドの身の引き方は難しい、と改めて感じざるを得なかった。

J SPORTS オンデマンド番組情報

そもそも、“歓迎される引退”というのが形容矛盾である。“辞めて欲しくない”というのが普通の反応であって、“辞めてもらって構わない”あるいは“辞めてくれてありがとう”というのはやはり悲しいものだ。

昨夏に戦力外通知をシャビから受けていた。

「レギュラーを奪い返してみせる」と言い返したようだが、それは叶わなかった。今季の先発はチームの全試合の4分の1で、試合時間では18番目、「第5のCB」と呼ばれ、負傷したクリステンセンの代役は左SBが本職のマルコス・アロンソだった。CL第4節インテル戦での、相手センタリングをスルーする信じられないミスで失点の原因となり、CL敗退の戦犯の一人とされた。

加えて、ベンチ生活で高給が一層クローズアップされることになり、「不釣り合いな高年俸で財政を圧迫する張本人の一人」と地元メディアに指を差されるようになっていた。突然の引退に拍手が送られたのは、冬の移籍市場前のタイミングで年俸枠を空けること=新戦力獲得枠を空けることが「クラブ愛の賜物」と解釈されたからだ。

選手としてのパフォーマンスが下り坂の一方で、欧州サッカー界の慣習でサラリーは上がる一方。プロ野球で見るような個人成績とリンクしての現状維持とか大幅ダウンとかは聞いたことがない。となれば“パフォーマンス以上にもらっている状態”になるのは、名選手であれば避けられない。

つまり、惜しまれた引退ではなく、望まれた引退だった。

選手としての実績はスペインサッカー界のレジェンドに相応しい。

バルセロナとともに616試合出場52得点7アシスト、リーガ8冠、CL3冠、コパ・デルレイ7冠、クラブW杯3冠、UEFAスーパーカップ3冠、スペインスーパーカップ3冠。代表とともにW杯1冠、EURO1冠――。

副業では楽天のスポンサー契約、スペインスーパーカップのサウジアラビア行き、新フォーマットのデビスカップ等を仲介し、2部のFCアンドラのオーナー。私生活では歌手シャキラとの愛と別れもあった。

いずれバルセロナに帰ってくるが、その時は会長ピケ、ということになるのだろう。

文:木村浩嗣

木村浩嗣

編集者、コピーライターを経て94年からスペインへ。2006年に帰国し『footballista フットボリスタ』編集長に就任。08年からスペインに拠点を移し特派員兼編集長に。15年編集長を辞し指導を再開。スペインサッカーを追いつつセビージャ市王者となった少年チームを率いた。現在はグラナダ在住で映画評の執筆も。

  • Line

あわせて読みたい

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

ジャンル一覧

J SPORTSで
サッカー フットサルを応援しよう!

サッカー フットサルの放送・配信ページへ