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通用しなかった「自分たちのサッカー」。ブラジルで打ち砕かれた青き勇者の記憶 【2014年ブラジルワールドカップ】
土屋雅史コラム by 土屋 雅史史上最強とも評された日本代表だったが
勝利だけが求められた3戦目の相手は、既に決勝トーナメント進出を決めていたコロンビア。主力を温存した南米の実力者は、それでも強かった。1点のビハインドは岡崎慎司のゴールで跳ね返したものの、後半から登場したハメス・ロドリゲスに翻弄され、ファイナルスコアは1-4。この得点差も2大会前のブラジル戦とまったく同じ。ザックジャパンが追求してきた「自分たちのサッカー」は、世界の舞台でまったく通用せず、深い失望感を突き付けられる結果だけが残った。
このチームは日本代表の歴史の中で、2つの大きな意味を持っていたように感じている。1つは監督の選定方法。それまではトップダウンで決められていた監督人事が、初めて強化担当者が国籍を問うことなく広く候補者をリストアップし、正式な交渉を経る形で行われた。欧州サッカーに明るい原博実技術委員長と霜田正浩技術委員は、何人もの世界的な監督と実際に会い、熟考を重ねてザッケローニに白羽の矢を立てている。
彼の後を継いだハビエル・アギーレやヴァイッド・ハリルホジッチも同様の形で、代表監督として招聘されたものの、それ以降は再びかつてのような形で監督人事が行われていることは、原と霜田の未来を見据えて奮闘した努力を考えると、何とも残念な気がしてならない。
もう1つは欧州を主戦場にする選手の急増だ。南アフリカワールドカップの時にはわずかに4人だったいわゆる“欧州組”が、ブラジルワールドカップ時には前述した本田や香川を筆頭に、登録メンバーの過半数を超える12人を数えていた。
高いレベルで切磋琢磨できる環境に身を置く才能が増えた半面、以前のようにチームとしての成熟度を高めるための機会はどうしても限られる。コロナ禍の2020年10月に開催された日本代表のオランダ遠征では選手全員が“欧州組”で構成されていたが、事の良し悪しは別にして、日本のサッカー界自体が新たなフェーズに突入したことを感じさせたのがブラジル大会であったことは、語り落とせないのではないだろうか。
最後に1つだけ付記しておきたいことがある。10月21日、J3のテゲバジャーロ宮崎に所属していた工藤壮人選手が逝去された。工藤はザッケローニ監督体制下の2013年に日本代表へ初招集。7月の東アジアカップでは全3試合に出場し、チームの優勝に貢献する。この時の代表では右サイドハーフを務めることもあり、最後まで本大会のメンバー入りを争っていた。享年32歳。あまりに早過ぎるサッカーとの別れに哀悼の意を表したい。
文:土屋雅史
土屋 雅史
1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。
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