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勝負のデンマーク戦は、立ち上がりこそ4-2-3-1がハマらず、苦しい展開を強いられたが、すぐに4-3-3に変更すると、前半の内に本田と遠藤保仁の直接FKで2点をリードする。終盤には相手の絶対的エース、ヨン・ダール・トマソンに1点を返されるも、最後は岡崎慎司のダメ押しゴールで3-1と快勝。堂々と決勝トーナメントへと勝ち上がる。
パラグアイとの熱戦は、PK戦で終止符が打たれた。そこまで全試合にフル出場を果たし、右サイドで上下動を繰り返し続けた駒野友一のキックがクロスバーを叩き、南アフリカでのチャレンジはラウンド16で幕を閉じたが、大会前の期待度を遥かに上回る日本代表の奮闘は、多くのサッカーファンの記憶に焼き付いていることだろう。
その年の9月。私はスペインにいた。J SPORTSのサッカー番組『Foot!』のロケで赴いた現地で、個人的にどうしても実現させたかった企画があったからだ。日本代表がベスト8への道を閉ざされたPK戦の終了直後、泣き崩れる駒野に対し、パラグアイ代表のFWネルソン・アエド・バルデスが駆け寄ったシーンは、大会のベストシーンの1つにも数えられるほど印象的であり、その時にどんな言葉を掛けていたのかが大きな話題になっていたため、バルデス本人に真相を確かめたいと思ったのだ。
当時バルデスが所属していたのはエルクレスという地方のスモールクラブ。もちろんアポを取って練習場へと赴いたのだが、その日の午前中に予定されていた練習はなぜか中止に。せっかくスペインまで来たのにもかかわらず、“バルデス直撃”は幻に終わり掛けていた。
それでも、まだツキは残っていた。バルデスがその数日前のリーグ戦でバルセロナ相手にゴールを決める活躍をしていたことで、その日の午後にテレビ局で番組出演があるというのだ。どうなるかはわからない状況の中、クラブハウスに現れた本人と一緒にテレビ局へと向かう展開に。出演が終わるまで待っていると、『さあ、始めようぜ』とバルデスの“神の一声”が。会議室をお借りして、無事インタビューを敢行することができた。その時の映像を放送した回は、やはり大きな反響を戴けたことを覚えている。
私の中で南アフリカワールドカップといえば、やはりパラグアイとの激闘が真っ先に思い浮かぶ。あの日、いくつもの偶然が重なって、テレビ局の会議室で話を聞くことができた、ネルソン・アエド・バルデスの笑顔とともに。
文:土屋雅史
土屋 雅史
1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。
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