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悲願の優勝カップを手に、表彰台でチームメイトを待つサンフレッチェ広島キャプテン佐々木翔
10月22日に東京・国立競技場で行われたJリーグYBCルヴァンカップ決勝は、後半アディショナルタイムにサンフレッチェ広島が連続ゴールを決めて逆転するという劇的な展開で広島が初優勝。6日前の第102回天皇は全日本選手権決勝でJ2リーグのヴァンフォーレ甲府相手にまさかの敗戦を喫した広島は、中5日で再び巡ってきたカップファイナルの舞台でのリベンジに成功した。
もっとも、ルヴァンカップ決勝でも広島は大苦戦。セレッソ大阪に先制されて敗退寸前まで追い込まれたものの、試合終盤での2つのVAR判定によって逆転への道が開いたのだ。
2022年のJ1リーグでは、8月から9月にかけて厳しい暑さの中で広島はリーグ戦で5連勝。カップ戦も含めれば公式戦8連勝を記録した。当時は、リーグ戦で川崎フロンターレがなかなか勝点を伸ばせない状況にあり、2位以上も窺がえそうなまさに破竹の勢いだった。
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FIFAワールドカップ 日本代表 激戦の記録 2014 FIFA ワールドカップ ブラジル グループC 第2節 日本 vs. ギリシャ #16
配信期間 : 2022年10月29日午後10:00 ~ 2022年10月29日深夜0:00
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FIFAワールドカップ 日本代表 激戦の記録 2014 FIFA ワールドカップ ブラジル グループC 第3節 日本 vs. コロンビア #17
配信期間 : 2022年10月30日午後3:00 ~ 2022年10月30日午後5:00
もともと集団的サッカーをしていた広島が、今シーズンはミヒャエル・スキッベ監督の下で一体感を増し、パスをつないで2人目、3人目が次々とスペースに入っていくスタイルが冴えわたっていた。
ところが、広島の勢いは秋口に入るとともに翳りが見え始めた。
9月には川崎、10月にはヴィッセル神戸にそれぞれ0対4の大敗を喫し、ルヴァンカップでは決勝進出を果たしたもののアビスパ福岡との準決勝は1勝1分の辛勝。天皇杯準決勝でも京都サンガFCに勝利したが、延長戦にもつれ込んでの大接戦。そして、天皇杯決勝ではJ2で18位に低迷する甲府にも敗れてしまう。
ルヴァンカップ決勝でも、たしかに広島がボールを握って攻める時間は長かったが、C大阪はしっかりと対策を施しており、広島の攻撃を封じ込めていた。
C大阪の前線の3人(中央に加藤陸次樹、右に毎熊晟矢、左に為田大貴)が高い位置に張って広島のスリーバック(右から塩田司、荒木隼人、佐々木翔)の位置を押し下げたため、広島は最終ラインとMFの間が開きすぎてしまった。広島のように、選手が次々とスペースに入り込んでパスをつないで集団的に戦うためには選手間の距離を短く保つ必要があるが、最終ラインが押し下げられてしまったことで、広島の攻撃は機能しなくなってしまった。
そして、C大阪は広島の一つのストロングポイントの一つである両ウィングバックを徹底的にマークして攻撃の起点を作らせなかった。
毎熊と為田はサイドに大きく張って広島の両ウィングバックへのチェックでも奮闘。両サイドバックと協力してサイドで数的優位を作ってウィングバックからの攻撃の組み立てを防いだ。
一方、C大阪の攻撃も必ずしもスムースだったわけではないが、それでも左サイドバックの山中亮輔や右サイドハーフの毎熊からのクロスで何度か大きなチャンスを作っていた。また、スローインからもうまくつないで決定機に繋げていた。
後半に入ってからも同じような展開が続き、C大阪が両サイドを使って攻撃を仕掛けようと圧力を強めていた。そして、53分に広島の佐々木からGK大迫敬介へのバックパスをC大阪の加藤がカットして、そのまま大迫をかわして、やや角度のないところから決めてC大阪がリードした。佐々木の完全なミスだったが、そのミスを誘発したのはC大阪のプレッシャーだった。
「僕の力のなさで広島に4つ目の星をつけられないのかと思った(佐々木翔)」
このゴールが決まったことで停滞していた試合は一気に動き出した。
広島のパススピードもようやく上がり、後ろの選手が前線を追い越していく動きも見られるようになった。だが、それでもC大阪の優位は変わらず、GKからのパントキックやMFの鈴木徳真からの縦への鋭いボールでから何度か決定機も生まれた。ここで2点目が決まっていれば、C大阪はそのまま押し切ることができただろう。
C大阪リードのまま時計の針が刻々と進み、スタジアムには「そのままC大阪が逃げ切るのでは……」といった雰囲気が広がっていった。
ところが、76分にカウンターの形で抜け出そうとした広島のナッシム・ベン・カリファをC大阪のDFマテイ・ヨニッチが止めてイエローカードが示される。すると、すぐにVARが介入。ヨニッチが肘撃ちをしていたとしてカードの色がイエローからレッドに変わって、C大阪は1人少ない状態となってしまう。
VARの介入によりC大阪DFマテイ・ヨニッチのイエローカードがレッドに変わり退場に
しかし、1点リードしているチームが1人少なくなったとしても影響は限定的だ。C大阪の小菊昭雄監督はすぐに交代カードを使ってDFの西尾隆矢を投入。4−2−3の形に変更してC大阪は守りに入る。
広島も交代カードを使って攻撃的な選手を次々と投入しながら圧力を強めるものの、C大阪の割り切った守備の前になかなか決定機を作れず、時計の針は90分を回った。しかし、数的不利のC大阪にとって「9分」のアディショナルタイム表示はかなり重たいものだった。
アディショナルタイムの表示
そして、90+2分の広島の右CKの場面で再びVARが介入。ハンドの反則によってPKの判定となった。
天皇杯決勝でも延長後半にPKをもらいながら失敗したことが見ている人すべての頭をよぎっただろうが、C大阪戦では後半途中から投入されたピエロス・ソティリウがこのPKをしっかり決めて同点に追いついた(得点は90+6分)。
こうなると、数的優位に立ち、攻撃的選手を多数投入していた広島が圧倒的に優位になる。C大阪はなんとか守り切って立て直したいところだが、同時に数的不利の状況で延長に入ればさらに苦しくなるという絶体絶命の状況だ。
そんな中で、広島はさらに90+11分に右CKから再びソティリウが決めて一気に優勝を決めた。
劇的な大逆転劇であり、またチームのレジェンドの1人である佐々木のミスからの失点を最終盤にひっくり返すといったドラマも生まれた試合だった。
後半アディショナルタイム、広島FWピエロス ソティリウが2ゴール目を決め逆転
広島にとっては森保一監督(現日本代表監督)時代の3度のリーグ優勝以のタイトルとなったものの、8月の頃のような勢いを取り戻したわけではない。試合全体を振り返れば、「C大阪の守備に攻撃力を封じられた90分」と言わざるを得ないのだ。
8月の広島の大躍進からわずかに2か月。Jリーグの全チームが「ストップ・ザ・ヒロシマ」のための方法論を見つけて広島封じを仕掛けてくるようになっているのだ。
Jリーグというのは相手の良さを封じることのうまいチームが多い、きわめて難しいリーグなのだ。なにしろ、J1リーグ4位のC大阪だけではなく、J2リーグで18位と低迷している甲府ですら「広島対策」を見事に遂行して見せたのだから……。
しかし、戦術的に封じ込めされても、ルヴァンカップ決勝の終盤のように攻撃を仕掛けるときの圧力の強さも広島のストロングポイントだ。クリアしてもセカンドボールを拾って、ひたむきに攻めてくる重厚感ある攻撃は今までの日本のサッカーではあまり見られなかったものでもある。
広島が来シーズンにどのように進化していくのか、そして、それを封じ込めようという各チームの「広島対策」も進化していくことだろう。こうして、Jリーグの、日本のサッカーはまた新たな要素を吸収して進歩していくのである。
サポーターと歓喜するサンフレッチェ広島
文:後藤健生 写真:Noriko NAGANO
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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