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ワールドカップ初出場のタンザニアに4-0で快勝。初戦の難関を乗り越え、リトルなでしこが好発進へ【FIFA U-17女子ワールドカップ現地レポート】
サッカーニュース by 松原渓
U-17女子ワールドカップ2022がインドで開幕した。U-17日本女子代表(リトルなでしこ)は、過去の全6大会で決勝トーナメントに進出。うち3大会で決勝の舞台に立ち、2014年大会で初優勝した実績がある(2010年と16年はPK戦で敗れて準優勝)。また、3大会で日本人選手がMVPを受賞しており、08年はFW岩渕真奈(結果はベスト8)、14年はMF杉田妃和(優勝)、16年はMF長野風花。3人とも、現在のなでしこジャパンで主力として活躍する選手たちだ。
欧州の強豪国でも、この大会で名を馳せた選手がその後にA代表で活躍するケースが少なくない。つまり、“次世代スターの見本市”とも言える舞台なのだ。
8月にコスタリカで行われたU-20ワールドカップでは、U-20女子日本代表(ヤングなでしこ)が準優勝の結果を収めたことも、リトルなでしこを勇気づけただろう。プレッシャーもあるかもしれないが、それに打ち克つことで、若い選手たちは大きな成長を見せてくれるはずだ。
日本はグループステージでタンザニア(12日)、カナダ(15日)、フランス(18日)と対戦する。会場はインドの西海岸に位置するゴア州のネルースタジアム。ゴアは現在は乾季だが、基本的に高温多湿で、年間を通して気温が高い。今大会は夕方以降の試合が多く、12日に行われた初戦のタンザニア戦は、20時という遅い時間帯のキックオフとなった。気温は25度前後だが、湿度は80%近くあり、座っていてもじっとりと汗が滲んでくる。
ネルースタジアム
タンザニアは全カテゴリーを通じて、今大会で初めてワールドカップに出場している。そのため国を挙げてチームの強化をバックアップしており、大会前にはイングランドで2週間の長期合宿を組んで準備を進めてきたという。そして、日本との対戦が記念すべきワールドカップデビュー戦となった。
試合は予想通り、日本が主導権を握る展開となった。中盤のMF谷川萌々子が長短のパスで攻撃の起点となり、左サイドのMF松永未夢が得意のドリブルで仕掛けるなど、要所で個の力の差を見せながら相手陣内に攻め込む。しかし、タンザニアはアフリカ勢特有のバネを生かした球際の寄せや、GKフスナ・ムトゥンダの再三の好セーブで粘り強く守り、日本を苦しめた。
日本代表メンバー
日本は前半、選手間の距離感がやや遠く、ボールは持っているものの相手陣内でラストパスが引っかかる場面が目立った。20分にFWネーマ・キネガがレッドカードで退場し、相手が10人になってからもゴールは遠かった。狩野監督は「大会の雰囲気に乗り切れていないところがあって、技術的なミスにもつながっていた」と、初戦の硬さがあったことを明かす。
だが、左サイドハーフで先発した松永がその嫌な流れを打破する。「自分は背が低い(155cm)ので、タッチを細かくして、相手の動きに反応できるようにしている」という16歳は、緩急をつけたドリブルで何度も相手を置き去りにし、スタンドを沸かせた。そして33分、相手陣内の深い位置までドリブルで侵入。2人を引きつけてマイナスに折り返すと、中央から走り込んだFW白垣うのが決めてついに先制に成功。
白垣うの(FW)
このゴールで流れに乗るかに思われたが、その後もミスが多く、リズムに乗り切れない。1人少ないタンザニアは失点を最小に食い止めようと考えたのか、時間稼ぎに終始し、ストレスの溜まる展開が続いた。GKのムトゥンダはボールを止めるたびに痛がってピッチを転げ回り、グローブを付け直すなど、様々な手を使って時計の針を進めようとした。
しかし、「時間稼ぎをよくやってくるということは情報として持っていた」と狩野監督。選手たちも動じることなく淡々と試合を進め、後半に入ると再び試合が動く。
ゴールラッシュの口火を切ったのは、交代で入ったFW板村真央だ。「三笘薫選手のドリブルに憧れている」という板村は、
投入された3分後の67分に相手陣内でボールを奪うと、軽やかなターンと股抜きで2人をかわし、GKの逆をついたファインゴールを決めた。
さらに、75分には板村のスルーパスを受けたFW辻澤亜唯が、GKとの1対1を制してリードを3点に広げる。さらに81分には、再三惜しいミドルシュートを放っていた谷川が直接フリーキックを沈め、4-0。守ってはタンザニアのシュートを2本に抑え、快勝を収めた。
谷川萌々子(MF)
終わってみればシュート数30本と、力の差を見せつけた。しかし、試合後の選手たちの表情や言葉からは、勝利の喜びはそこそこに、すでに次のカナダ戦に目を向けていることが伝わってきた。
「初戦ということもあって前へ、前へと焦ってしまい、落ち着く時間帯を作れなかった」と、反省を口にしたのは谷川だ。板村は、「簡単なミスが多くて連係が取れない場面があったので、カナダ戦に向けて修正したい」と表情を引き締めた。また、先制点を決めた白垣は、関西弁で「バリバリ緊張しました…」と素直な思いを明かし、「カナダ戦は日本らしさをしっかり出して勝ちたい」と、力強くコメントした。
同グループのカナダとフランスは初戦で引き分けたため、日本は初戦を終えて暫定首位となった。中2日で迎えるグループステージ第2戦の相手は、カナダ。前回、2018年のU-17ワールドカップではベスト4入りした強豪国で、東京五輪で優勝したA代表から一貫したコンセプトで育成にも力を入れている強豪国だ。ミドルシュートの精度が高い7番や、恵まれた体格でアジリティも高い11番など、個の強さも印象的なチームである。
狩野監督は、「フィジカルが高く、しっかり守ってくる相手に対してより攻撃的な姿勢を示したい。ただ前線にはスピードのある選手がいるので、十分に注意しなければいけないなと思っています」と、揺るぎない口調で語った。
第3戦で待ち受けるフランスとの対戦に向けて、2連勝でアドバンテージを得ておきたい。グループステージ第2戦のフランス戦は、日本時間10月15日(水)23時30分にキックオフとなる。
文・写真:松原渓
松原渓
女子サッカーの最前線で取材し、国内のなでしこリーグはもちろん、なでしこジャパンが出場するワールドカップやオリンピック、海外遠征などにも精力的に足を運ぶ。自身も小学校からサッカー選手としてプレーした経験を活かして執筆活動を行い、様々な媒体に寄稿している。
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