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サッカー フットサル コラム 2022年9月26日

「ルイス・エンリケ軍団」のスペイン代表。一貫性は美しいが、度が過ぎると柔軟性を失う

木村浩嗣コラム by 木村浩嗣
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スペイン代表を率いるルイス・エンリケ監督

スペイン代表を率いるルイス・エンリケ監督

スペイン対スイスを見ていると、アナウンサーが面白いことを言った。

「ちょうど今、アセンシオのプレー時間がレアル・マドリーのそれを超えました」

試合は後半に入ったばかり。そう、この日偽CFとして先発したマルコ・アセンシオのレアル・マドリーでの今季プレー時間は、たった47分(リーガ11分間、CL36分間)なのである。クラブの消化試合数はリーガ6試合、CL2試合の8。それで47分だからバックアッパーですらない現状がわかるだろう。

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アセンシオだけではない。

この日の先発のうち5人、アセンシオ、サラビア、フェラン、ジョルディ・アルバ、アスピリクエタは所属クラブでレギュラーではない。途中出場したカルロス・ソレールに至ってはパリ・サンジェルマンに移籍してからのプレー時間は11分間に過ぎない。

代表監督の考え方としては“クラブで好調の者をピックアップする”というのが普通だが、ルイス・エンリケの考え方は“自分が作る代表チームにマッチする者を選ぶ”というもの。今回アセンシオとソレールを招集したことによって方針にブレがないことを証明した。

自分の設計思想に最適の選手を選ぶ、というのは悪くない。一貫したチーム作りができるからだ。

同じ顔ぶれをそろえることで戦術理解度と、その実践精度はどんどん高まっていく。同時に、不調でも呼ばれ続けることでモラルが高まり、チームの結束は固くなっていく。実際、今のスペイン代表は「ルイス・エンリケ軍団」で、選手たちはボスに絶対服従の「兵士」という形容がぴったりだ。

だが、弊害も当然ある。

ゲーム感がない者がプレーしている裏で、波に乗っている者が呼ばれさえしない。特にツキに左右されるゴールゲットで、クラブで得点を量産中の者のツキを代表でも発揮させられないのは、戦力面で明らかにマイナスだ。例えばイアゴ・アスパスは6試合で5ゴール、1アシストなのだが、二人の間に何があったか知らないが、今回もルイス・エンリケは呼ばない姿勢を貫いた。

一貫性は美しいが、度が過ぎると柔軟性を失う。アスパスのケースは一貫しているゆえにチームにマイナスをもたらしている、と思う。何事も過ぎたるは及ばざるがごとしだ。もっとも、一貫性のない監督は誰からも相手にされない、というのも事実である。

スペインがスイスに敗れたのは、監督の方針のせいだ、とは言わない。だが、このコーナーでも何度か書いてきたが、ルイス・エンリケの外部に対する基本的な立場は“お前らはサッカーを知らない”なので、不満はくすぶっている。次のポルトガル戦のパフォーマンスが悪いと、「選手選考」という突っつき易い論点に火がつき、ひょっとすると大火事になるかもしれない。

文:木村浩嗣

木村浩嗣

編集者、コピーライターを経て94年からスペインへ。2006年に帰国し『footballista フットボリスタ』編集長に就任。08年からスペインに拠点を移し特派員兼編集長に。15年編集長を辞し指導を再開。スペインサッカーを追いつつセビージャ市王者となった少年チームを率いた。現在はグラナダ在住で映画評の執筆も。

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