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サッカー フットサル コラム 2022年9月9日

メガクラブ特有のプレッシャーがポッターに降りかかる

粕谷秀樹のOWN GOAL,FINE GOAL by 粕谷 秀樹
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ブライトンを指揮するグレアム・ポッター

チェルシーの新監督グレアム・ポッター

現地時間9月7日、チェルシーがトーマス・トゥヘル監督を解任した。在任期間は短いというべきか、チェルシーにしては長いのか、589日だった。

【1】クラウディオ・ラニエリ:1352日
【2】ジョゼ・モウリーニョ(第一期):1204日
【3】ジョゼ・モウリーニョ(第二期):927日
【4】アントニオ・コンテ:741日
【5】カルロ・アンチェロッティ:690日

トゥヘルの在任期間は錚々たるメンバーに次ぐ第6位で、2020/21シーズンはチャンピオンズリーグを獲得したのだから胸を張っていい。フランク・ランパードの後任としてチェルシーを率いてから、わずか半年の快挙だった。

しかし、新オーナーのトッド・ベーリーが獲得を目論んだクリスチャーノ・ロナウドを、「チームプランに適していない」とトゥヘルが全否定。オーナーと監督の間に確執が生じた。

さらに、何回かミーティングを重ねた結果、トゥヘルの気難しい性格にベーリーが不快感を抱き、9月末のインターナショナル・ブレイクを待って解雇が決定していた、との情報も飛びかっている。

したがってディナモ・ザグレブ戦(CLグループステージ第1戦)の敗北は、トゥヘルにとって絶妙のアシストになったのかもしれない。

また、第2節のトッテナム戦で、必要以上に感情的になったこと。記者会見でネガティヴな発言が増えたこと。テクニカルエリアでもベンチでも会見場でも苛立ちを隠せず、怒りをまき散らすイメージがついてまわった。当然、選手間でも求心力が失われ、この雰囲気をベーリーが敏感に察知したのか。

そして昨シーズン終盤も含めた25試合の成績が、13勝5分け7敗。ランパードが解雇された当時の13勝7分け5敗と似通っていたため、チェルシー上層部は結論を導きやすかったのかもしれない。

それにしてもチェルシーは、ロマン・アブラモヴィッチ(前オーナー)の時代から監督人事が拙速だ。アブラム・グラントとアンドレ・ヴィラス=ボラス、ロベルト・ディマテオが8か月、ルイス・フェリペ・スコラーリは7か月、ラファエル・ベニテスは6か月でその座を追われている。

大半がジョン・テリーとの権力闘争に敗れた末の解雇だとしても、6~8か月でチームを構築できるはずがない。

さて、チェルシーは現地時間9月8日、後任監督としてブライトンのグレアム・ポッターを招聘した。

ポジショナルプレーからのポゼッションをチームに植えつけ、リスクが伴うハイラインではなく、失点を最小限に抑えられる無理のない守備戦術まで織り込んだ名将だ。

ここ数年、「ステップアップは近い」と噂されていただけに、好奇の視線にさらされるチェルシーで手腕を発揮できるのか、興味深いところだ。ブライトンとは注目度が月とスッポンほどに違う。

敏腕ディレクターのダン・アシュワーズ、リクルート担当のカイル・マコーレイ、コーチのビリー・リード、ビョルン・ハムベリ、ベン・ロバーツなど、いわゆる “ファミリー” を引き連れての移籍だ。ポッターが孤立する心配はない。

ただ、監督というポストを軽視し、次から次へと首を挿げかえてきたチェルシーの非情人事は、フットボール業界で評判が悪い。オーナーがアブラモヴィッチからベーリーに代わっても、悪しき伝統は受け継がれてしまった。一部のタブロイド紙は早くも、「ポッターは年内で解任か!?」と根拠もなく騒ぎはじめている

みずからのプロジェクトを全面的に支援してくれたブライトンとは異質のクラブだけに、新監督がプレッシャーに苛まれる日々がいつか必ず訪れる。CLも未知の世界だ。強き味方、“不死鳥の騎士団” は現れるだろうか。

文:粕谷秀樹

粕谷 秀樹

ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。

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