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開幕戦でゴールを決めた久保建英
カディス戦は久保建英のリーガでのベストマッチだった。
ゴールも良かったが、それよりもチームのメカニズムの中に完全に組み込まれている点が評価できる。とにかく名前を呼ばれる回数が多かった。
ボールを触り、ボールを追い掛けた。
いつもなら「単独のポイント」:主にドリブルと被ファウルとボールロストについて話さなければならないが、この試合ではシュート、ドリブル、センタリング、コンビネーション、ポジションチェンジ、チェイス、インターセプトについても話すことがある。プレーに関わっている時間が長かった。
「途切れない線」としてチームのプレーに関わっていた。
サッカーの攻守は連続している。つまり、攻撃をしていない時には守備をしている。
ボールを動かして、前進して、崩して、フィニッシュした後に、ボールを追い掛けて、パスの受け手をつかまえて、スペースを狭めてロストを誘ったりファウルをされたりしてボールを奪い返す。そして再び、ボールを動かして……が始まる。
これらの作業はすべてチームとして行っている。マイボールでは主にシルバ、メリーノ、たまにブライスとの協同作業となり、相手ボールでは主にメリーノ、ディエゴ・リコ、たまにスビメンディと一緒に働く。久保はこうした作業にまんべんなく切れ目なく関わっていた。
で、ボールが足下にあった時に個人作業のトラップ&ボレーシュート、対角線侵入&浮かしたセンタリングをこなした。
つまり、チームの一員としても個としても立派な仕事ぶりだった。
アルグアシル監督は「まるで3年間プレーしているみたい。誰かのレポートを読んでいたのか」と冗談めかして感心していた。
先週、ここでソシエダの仕上がりが遅い、と書いたばかりだ。それは久保、シルバ、ブライス、メリーノが過不足なくそろい踏みする解法、中盤ダイヤモンド型の[4-4-2]で久保:左トップ、シルバ:トップ下、ブライス:右サイド、メリーノ:左サイドと、その機能性を読めなかった、私の不明のせいである。
一方、バルセロナの方は新戦力がほぼ全員そろって個としては優れていたが、チームとしては機能性が低かった。
シュートの雨を降らすもGKの美技で引き分けること自体はよくあることだが、心配すべきはテア・シュテーゲンとの1対1が、2、3度あったことだ。ラジョはほとんどバルセロナゴールに近づけなかったが、近づけた時は決定的だった。
個として攻守ともに最も貢献していたのはブスケッツ。あまりプレーに単独で関わり過ぎて最後にレッドカードをもらったほどだ。
ニコの放出にOKを出したシャビの理屈からすると、ソシエダ戦の先発はピアニッチ。大型補強に隠れて行われている、下部組織の若手を冷遇するようなオペレーションの是非がいきなり問われることになった。
あと個として光っていたのは守備ではテア・シュテーゲン、攻撃ではデンベレ。レバンドフスキとラフィーニャは普通。ペドリとガビとアラウホとジョルディ・アルバは消えていた。
以上のことから言えるのは、今のところバルセロナは個の守備力とか打開力に頼るチームであり、パスを繋いで攻守をコントロールするチームではなく、速い攻守の切り替えからウインガーの単独突破任せで攻めるチームであるということだ。
大外から攻めて中央から攻められる。中盤はボールの通過点に過ぎず、存在意義が極めて低い。中盤が主役でチームとして機能している中で個が光るソシエダとは、真逆である。バルセロナの個の輝きはまばゆいほどだが、協同作業の方は、行き当たりばったりで複数の手が入る、という以上の意味はない。
ソシエダの方が良いサッカーをしているが、勝つのに良いサッカーをする必要がないのが、バルセロナである。久保がバルセロナという過去と決別する試合になるかもしれない。
21日が楽しみだ。
文:木村浩嗣
木村浩嗣
編集者、コピーライターを経て94年からスペインへ。2006年に帰国し『footballista フットボリスタ』編集長に就任。08年からスペインに拠点を移し特派員兼編集長に。15年編集長を辞し指導を再開。スペインサッカーを追いつつセビージャ市王者となった少年チームを率いた。現在はグラナダ在住で映画評の執筆も。
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