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久保はソシエダで輝けるか
ついに今週末リーガが開幕する。
現時点(8月8日)でどこが的確な補強をし、仕上がりが良いのか、をランキングしてみた。対象は昇格組を除く17チーム(アルメリア、バジャドリー、ジローナはもう少し見させてください)。
良い夏を過ごしたナンバー1はもちろんバルセロナ。レバンドフスキ、クンデを始めとする顔ぶれは十分に夢を見させてくれるもの。CBはエリック・ガルシアかピケが、MFはガビが、FWはフェラン・トーレスやオーバメヤンが控えになりかねない戦力の充実ぶりは、1年前とは比べものにならない。
ただし、今週末に限っては、そのせっかくの新戦力がどれだけプレーできるかわからない。放出が滞り年俸枠をオーバーしているからだ。どうやり繰りするのかマネージメントの腕前にまず注目したい。
2位はレアル・マドリー。数は少なかったがリュディガー、チュアメニは間違いのない戦力。彼らによりアラバが左SB、カマビンガがインサイドMFで使えること、セバージョスの復活も大きい。唯一の不安はベンゼマの控えがおらず、アザールの偽CFが機能しそうにないことだ。
3位はアトレティコ・マドリーとビジャレアル。この両チームについてはそもそも戦力が充実しており、いかに引き抜かれないかが重要だった。アトレティコに入ったモラタはW杯前にやる気満々で、年俸枠の問題で放出を余儀なくされない限り、大きなプラスになるはず。とはいえ、今季最も注目されるのはついにブレイクするフェリックスとなるだろう。ビジャレアルはFWのモラレス、ジェラール・モレノ、ダンジュマの、MFのジェレミ、チェクウェゼの、左サイドのコケラン、ペドロサ、アルベルト・モレノのポジション争いのレベルが高過ぎ!
5位はベティス。ペジェグリーニ監督の戦術なのか人柄なのか、ボルハ、カナーレス、フェキル、ロドリ、ファンミといったタレントが気持ち良くプレー。突破力で勝負の新戦力ルイス・エンリケが、パス打開とは違うアクセントを加えてくれるはず。「死ぬまでベティス」というファンの期待も例年以上に熱い。アレックス・モレノの残留にも成功しCL出場権も狙える。
6位は安定のアスレティック・ビルバオ。いつも通り目立った放出も獲得もなく、経年による成長の上積みがある。イニゴ・マルティネスを引き留められたのは大きい。プレミア勢やバルセロナの札束攻勢にも耐えられる財政状態の良さが生きた。ウィリアムス兄弟の弟ニコがブレイクするかもしれない。
7位は意外に伏兵になるかもの、ヘタフェ、セルタ、エルチェ。ヘタフェはフローレス監督が、MFに4人のセントラルMF(マクシモビッチ、アランバッリ、アラニャ、セオアネ)を並べるという面白い試みをしている。染み付いたロングカウンターのイメージとは違うサッカーを見せてくれるかも。セルタとエルチェはボールを繋ぐことへのこだわりを買う。小気味よいパスサッカーの要、前者のベルトランとセルビ、後者のグンバウとラウール・グティに特に注目。
10位はできることを着実にやっている、ロングカウンターの雄オサスナとカディス。ともに[4−4−2]で、2ボランチを強度のあるMFと創造力のあるMFで組み、サイドにスピードもしくはテクニックで単独突破できる攻撃的MFを配し、2トップには単独でシュートに持ち込める強力なFWを置く、というシナリオに沿った間違いのないチーム作りができた。ともに、違いを作る選手はSBにおり、オサスナのマヌ・サンチェス、カディスのエスピノの攻撃参加は要注目。
ここからはチーム作りが遅れている、または補強の効果が出ていないチームとなる。
12位は久保建英が入ったソシエダ。新戦力の久保、ブライス・メンデス、アリ・チョーが思うようなインパクトを与えられていない。一方、上積みになりそうなのはケガから復帰のバレネチェアとカルロス・フェルナンデス、Bチームから上がったトゥリエンテス。このままだと得点力不足に苦しんだ昨季の二の舞になるかも。
13位はラジョ・バジェカーノとマジョルカ。ラジョは昨季の前半はサプライズとなったが、後半は尻すぼみ。主力はほぼ全員残ったが、尻すぼみのままの戦力で上積みがまだない。同じことはマジョルカにも言える。残留を勝ち取ったサッカーのままで進化をしていない(求めていない?)。ラジョは面白く、マジョルカは面白くない、という違いがあっても、ともに残留がやっと、という点では変わらないかも。
ランキングを締めくくるのは不安が一杯、という3チームだ。
15位はセビージャ。イスコ獲得は“そこじゃない!”の典型。補強が必要なのは売ったCBコンビの代役なのに。しかもトップ下タイプ――イスコ、ラキティッチ、スソ、テカティート、パプ、オリベル――の過剰に拍車がかかる。いくらボールに触ってもゴールへは一向に近づかない。そんなサッカーをまた見せられるのだろうか?
16位はバレンシア。ガットゥーゾが来た。サム・カスティジェホも来た。が、ゲデスとシレッセンが出て行き、次はレシッチか、カルロス・ソレールか、マキシ・ゴメスかと言われている。選手を出し入れして結局、戦力はダウンするの連鎖。今となってはイ・ガンイン、ワス、コンドグビア、フェラン・トーレス、ロドリゴ、コケラン、パレホがいたことが奇跡に思える。モンチのようなマジックを持たないスポーツディレクターがチームをいじるとどうなるか、の典型例。
最下位はエスパニョール。ここはとにかく残留する気がゼロのラウール・デ・トマスの売却が終わらないと何もできない。補強費はそこからしか出ないのだから。グラナダを昇格させ、欧州へ導いたディエゴ・マルティネス監督の招へいが唯一の希望だ。
文:木村浩嗣
木村浩嗣
編集者、コピーライターを経て94年からスペインへ。2006年に帰国し『footballista フットボリスタ』編集長に就任。08年からスペインに拠点を移し特派員兼編集長に。15年編集長を辞し指導を再開。スペインサッカーを追いつつセビージャ市王者となった少年チームを率いた。現在はグラナダ在住で映画評の執筆も。
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