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サッカー フットサル コラム 2022年8月2日

セビージャの宿命。モンチのマジックでしか成立しない自転車操業

木村浩嗣コラム by 木村浩嗣
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モンチ

モンチ

セビージャは“バルセロナの下部組織”と呼ばれている。

ジュール・クンデの移籍が決まり、これでダニ・アウベス、レングレット、ラキティッチ、アレイクス・ビダル、ケイタ、アドリアーノと7人の主力を同じコンペティションを戦うライバルへ送り込んだことになる。

スポーツ・ディレクターのモンチが安く無名の若手を発掘してきて、セビージャで2、3年プレーさせて欧州の一流リーグに通用するレベルに育てる。それをバルセロナが買いに来るというルートが確立されているのだ。

プロサッカーは突き詰めればお金である。

コンペティションは11人対11人だからセビージャがバルセロナに勝つこともあるが、市場は違う。でかい財布を持っている者が金の無い者よりも間違いなく偉くて強い。

とはいえ、泣く泣く手離すのではない。引き抜きとは違う。

こちらから「いいのがいますよ!」と揉み手をしながらさ差し出して、「毎度ありー」と買っていただくのである。グランド上ではライバルだが、商いは商い。お客様は神様だ。

モンチもバルセロナのオファーの方がチェルシーより上だった、と認めている。ライバルを補強したくないのはやまやまだが、入札値が高い方へ売るのがあきんどである。正直、1年前ならともかく今の値段は4000万ユーロだったら御の字、だと思っていたら、さすがラポルタ社長!、6000万(固定5000万+出来高1000万)という大盤振る舞いで、こちらもニコニコである。

こうしてセビージャは7人トータルで1億9000万ユーロ(約266億円)ものお金をお得意様バルセロナからいただくことになった。スペインの地方都市のクラブでは大きな宣伝効果が見込めないから、国際的な企業はスポンサーに付かない。セビージャのシャツがアジアや北米、中東で爆発的に売れるわけもない。よって、安く買って高く売るを繰り返すことでしか、ビッグクラブと伍していけるだけの資金は手に入らない。

モンチのマジックでしか成立しない自転車操業で、漕ぎ続けないと倒れる。それがセビージャの宿命なのだ。

ファンも宿命を受け入れている。不平を言っても仕方がない。お金持ちのクラブを応援したかったらバルセロナのファンになればいいのだから。ジエゴ・カルロスとクンデという欧州でもトップクラスのCBコンビは完全に消滅したが、2人を売らない、という選択肢はなかった。

ファンはバルセロナのクンデを多分、無関心で迎えると思う。出て行った選手を追って贔屓のクラブを乗り換える、というウェットな心情はスペインには存在しない。逆に、ブーイングする筋合いもない。在籍中は活躍してくれたし、何よりクラブ史上最高額の移籍金をもたらしてくれた財政上のヒーローなのだから。

セルヒオ・ラモスがブーイングされるのは“金に目がくらんでセビージャを見捨てた”という嘘を当時の会長が流し、不名誉な移籍を正当化しようとしたからである。

セビージャはクンデを売った直後にアーセナルに6-0と大敗、レスターにも敗れた。ロペテギ監督は補強を要求しているそうだ。そりゃそうだよな、と思う。

文:木村浩嗣

木村浩嗣

編集者、コピーライターを経て94年からスペインへ。2006年に帰国し『footballista フットボリスタ』編集長に就任。08年からスペインに拠点を移し特派員兼編集長に。15年編集長を辞し指導を再開。スペインサッカーを追いつつセビージャ市王者となった少年チームを率いた。現在はグラナダ在住で映画評の執筆も。

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