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サッカー フットサル コラム 2022年6月21日

久保建英のレアル・マドリー復帰を阻む《EU外選手》という壁

木村浩嗣コラム by 木村浩嗣
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ベンチから試合を眺める久保建英

久保建英

来る22-23シーズン、久保建英がレアル・マドリーに復帰できる可能性は低い。マジョルカでの不本意なプレーがレベルに達しないのは明らかだが、たとえスーパーな1年を過ごしていても難しかった。EU外選手という壁が立ちはだかり続けているからだ。

今回は久保の身の振り方を考えるための大前提、EU外枠について書きたい。

EU外選手とは、本来EU加盟24カ国以外の国籍の選手のことだが、今はEUに準ずる国々の選手とコトヌー協定加盟国(アフリカ、カリブ海、太平洋諸国)についてもEU内と認められるようになっている。例えば、ジョビッチは母国セルビアがEUに準ずる国なのでEU内扱いだ。

リーガが認めるクラブ当たりのEU外選手の数は3人。この枠はビニシウス、ミリトン、ロドリゴのブラジル人3人で埋まっている。その外で久保とレイニエル・ジェズスが枠が空くのを待っている状態だ。

枠を空けるためには、二重国籍取得が手っ取り早い。が、これがなかなか進んでいない。

二重国籍を取るには、ブラジル人の場合は2年連続でスペインに居住している必要がある。3人のEU外選手のうち18-19からリーガでプレーしている先輩格のビニシウスは2020年夏にこの条件を満たし、スペイン語の試験にも社会・文化の試験にも合格して必要な手続きを完了したが、2年近く経った今も法務省の返事待ち。チームで最後にスペイン国籍を取得したフェデ・バルベルデの場合は手続き完了から約1年で取れており、本来なら昨夏には出ていなければならないのだが……。

この遅延は、コロナ禍ですべての行政手続きが滞っているせいだ。

報道によれば、法務省で国籍の審査を待つ者は、30万人以上に上っている、という。

お役所のやることなので目途というのはまったく立っていない。明日出るかもしれないし、来夏もまだ待っているかもしれない。かつてはクラブが裏から手を回してサッカー選手の国籍取得を優先させる、ということもあったが、非難を浴びてからは特別扱いはなくなっている。

もっとも、選手登録期限の9月までにビニシウスがEU外でなくなったとしても、久保がその枠を使えるとは限らない。

エムバペに逃げられたクラブはFWの補強を狙っており、ガブリエス・ジェズスやスターリング(いずれもマンチェスター・シティ)からオファーが来たが、ともにEU外ーーブラジル人とイギリス人=ブレグジットによりEU外ーーということで断ったとされる。空いた枠はFWの新戦力に持っていかれる可能性も十分あるのだ。

ちなみに、日本は二重国籍を禁じているので久保がスペイン国籍を取るためには日本国籍を捨てる必要がある。で、そのスペイン国籍を取得するには日本人の場合は10年の居住歴が必要なので、可能性をうんぬんすること自体がナンセンスだ。

文:木村浩嗣

木村浩嗣

編集者、コピーライターを経て94年からスペインへ。2006年に帰国し『footballista フットボリスタ』編集長に就任。08年からスペインに拠点を移し特派員兼編集長に。15年編集長を辞し指導を再開。スペインサッカーを追いつつセビージャ市王者となった少年チームを率いた。現在はグラナダ在住で映画評の執筆も。

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