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4月15日から東南アジア各地で開催されてきたAFCチャンピオンズリーグ(ACL)東地区のグループステージは5月1日に全日程が終了。日本から参加した4チームのうち、浦和レッズ、横浜F・マリノス、ヴィッセル神戸の3チームがラウンド16進出を決めた。
意外だったのは、J1リーグ王者、川崎フロンターレの敗退だった。
川崎は4月30日の最終戦で広州FCに1対0で勝利して他会場の結果を待つこととなった。他会場ではジョホール・ダルルタジムと蔚山現代が対戦。同時刻開催となったこの試合の勝者がグループ首位となるが、もし両者が引き分ければ、川崎を含む3チームが勝点だけでなく3チームの対戦成績もすべて並ぶため、得失点差で川崎が首位となる状況だった。
川崎が広州FC戦の勝利を決めた瞬間、他会場では1対1の同点のままアディショナルタイムに入っていた。アディショナルタイムの3分間も激しい攻防が繰り返された。両チームとも決定的チャンスを作ったものの、シュートがポストに嫌われて決勝点は決まらず、このまま川崎の首位通過が決まるかと思われたが、目安の3分が過ぎたところで地元のジョホール・ダルルタジムが最後の攻撃。蔚山のオウンゴールによる劇的な決着となり、ジョホールが首位の川崎は2位となって、グループステージ敗退が決まったのだ。
グループIには、東地区大会開幕時点でJ1リーグ首位の川崎と同じくKリーグで首位に立っていた蔚山が同居しており、両クラブの一騎打ちかと思われていたのだが、伏兵のジョホールが首位通過し、「日韓両国の雄が揃って敗退」という意外な結果となった。
日本勢と韓国勢に加えて東南アジア勢が“三すくみ”状態となった今年のACLを象徴するようなグループと言っていいだろう。
東地区でラウンド16に進んだのは日本から3クラブ、韓国から2クラブ。そして、タイとマレーシア、香港が各1クラブ。結果的にもまさに“三すくみ”だった。
しかも、日本のクラブは韓国勢相手に1試合も勝てず、一方東南アジア勢に対しては日本は圧倒的に優位を示したのに対して、韓国のクラブは東南アジアのクラブに苦戦という面白い結果となった。
日本の4クラブのうち、ヴィッセル神戸は韓国勢との対戦がなかったが、他の3クラブは韓国勢と合計6試合を戦って3分け3敗と1勝もできなかった(各クラブとも韓国相手には1分1敗)。
しかし、日本のクラブは東南アジアのクラブ相手には圧倒的に優位に立ち、合計8試合戦って6勝2分。一方、韓国のクラブは東南アジア勢相手には4勝2分4敗と苦戦を強いられた。全南ドラゴンズが大会を通じて6戦全敗で終わったフィリピンのユナイテッド・シティに対して2勝した試合を除外すれば、2勝2分4敗負け越しに終わっているのである。
東アジアのクラブ・サッカーの勢力図は、ここ数年、日本と韓国、中国が拮抗した状態にあった。中国のクラブが豊富な資金力を生かしてヨーロッパや南米のワールドクラスの選手と契約していたからだ。
しかし、中国クラブのバックにあった不動産企業が中国での不動産バブルの崩壊によって資金力を失い、さらに中国政府の規制もあってビッグネームの“爆買い”の時代は終わった。しかも、中国政府が「ゼロコロナ政策」に固執して厳しい出入国規制を続けているため、中国のクラブは昨年に続いて最強チームを送り込むことができず、2軍級が参加。中国の2クラブは1分11敗という惨憺たる結果に終わった。
この結果、各グループとも日韓の一騎打ちになるかと思われたが、そこに東南アジア勢が割って入ったのだ。
東南アジア各国の経済発展によってサッカークラブの財政力もアップして、外国籍選手を擁してチーム力を上げていた。
しかも、今回のグループステージはすべて東南アジアでの開催だったので、日本や韓国のクラブは暑さに悩まされた。東南アジア勢は大きなホーム・アドバンテージを持って戦えた。その結果、タイのBGパトゥム・ユナイテッド、マレーシアのジョホール・ダルルタジム、そして香港の傑志(キッチー)の3チームが勝ち残ることになったのだ。
4月は、日韓両国ではまだ冬が明けたばかりの時期であり、日本や韓国のクラブの選手たちの体はまだ夏モードに転換しておらず、汗腺も開いていなかった。気温30度を超える高温多湿の気象コンディションの中で戦うのは困難な状況だったのである。
そこで、韓国のクラブは日本相手の試合では“省エネ・サッカー”に徹した。日本と韓国の対戦では、すべての試合で日本側がボール・ポゼッションで60〜70%を記録。シュート数などの数字でも日本側が大きく上回った。
それに対して、韓国のクラブは割り切って戦った。日本のクラブがボールを持っても引いて守ってゴール前を固め、前線の外国籍選手などを目掛けてロングボールを蹴り込んで“個の力”で突破して1点をもぎ取って勝利を目指したのだ。
本来のスタイルを捨ててでも勝敗に徹してきたあたりが韓国らしいところだが、それにしてもアジアのサッカーのリーダーを自認する韓国が日本相手にプライドも捨てて勝負に徹してきたのにはいささか驚かされた。
こういう“省エネ・サッカー”であれば、高温多湿の中で戦うこともできるし、ラフなロングボールを使って攻めるのであれば、荒れたピッチ・コンディションでも大きな支障はない。
それに対して、人とボールも動かすパス・サッカーという本来のやり方にこだわった日本のクラブは、悪条件下でパス精度が落ちて韓国の守備網を崩すことができなかった。
ところが、格下の東南アジア相手の試合では韓国のクラブは自らボールを持って戦わざるを得なくなり、暑さを苦にしない東南アジア勢相手に苦戦を強いられたのだ。一方、自分たちのスタイルを貫いた日本勢は近代的サッカーで東南アジア勢を圧倒してみせた。
結局、8月に再び集中開催の形で行われる予定の決勝トーナメント(ラウンド16〜準決勝)には日本の3クラブが進出した。決定した組合わせを見ると横浜FMと神戸がラウンド16で対戦。浦和は川崎と蔚山を退けてサプライズを起こしたジョホールと戦うこととなった。そして、韓国の全北現代モーターズと大邱FCもラウンド16で直接対決となった。
この結果、準々決勝には韓国勢は1チームしか勝ち上がってこないことが確実となり、日本勢にとっては有利に進められそうだ。
決勝トーナメントの開催地はまだ決まっていないが、たとえ東南アジア開催となったとしても、8月であれば日本の選手も暑さに馴れた状態なので4月大会のように苦しむことはない。しかも、中2日で6連戦というグループステージと違って、8月開催の集中大会は3試合だけで済むのだ。
今シーズンこそ、日本勢の上位独占を期待したいものである。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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