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サッカー フットサル コラム 2022年4月19日

次節は残留争いの直接対決。後半の勝負どころで久保かイ・ガンインを投入か?

木村浩嗣コラム by 木村浩嗣
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ベンチから試合を眺める久保建英

ベンチから試合を眺める久保建英

「彼らはアクティブだし足技もある。しかし、サッカーは攻撃と守備と両方ある。(中略)。彼らには崩しを仕掛けるタイミングを見つけてあげなければならない」

先週エルチェ戦後のハビエル・アギーレ監督のイ・ガンイン、久保建英評である。

解釈するとこういうことだろう。“攻撃は良いが守備が悪い。だから先発では使えないが、点を取りに行くタイミングで使いたい”。

エルチェ戦で言えば、点を取りに行くタイミングとはリードされた時であり、前半終了間際に失点したことで後半開始からイ・ガンインと久保を投入した采配は、冒頭のコメントをきちんと踏襲したものだ。要は、スタートは守備重視で0−0を長く続けることを目指す。よって、イ・ガンインと久保は先発させられないのだが、失点したら点が欲しいので2人を使う、という理屈である。

だが、このシナリオは試合再開から十数分後に2−0となってもろくも崩れる。あちらを立てればこちらが立たず。守備が不得意な2人を、しかもDFを1枚減らして4バックにして入れたことで、バランスが攻撃に傾き過ぎて失点、実質的に勝敗が決まってしまう。

結果論、後出しじゃんけんのそしりは免れないが、守備重視から攻撃重視へのシナリオの変更がドラスティック過ぎたのではないか、と思う。というのも、前節アトレティコ・マドリー戦では、[3−5−2]を維持してイ・ガンインと久保をセカンドトップとして同時起用しないやり方で勝利し、攻守の理想的なバランスを見出したかのようだったからだ。

この日もFW+FW(ムリキ+アマス)の2トップはまったく攻撃の形を作れなかった。ムリキはDF2人がかりで抑え込まれるか、あえて競らずセカンドボールを狙う、というふうに対策されて、ボールがまったく収まらなかった。ロングボールは相手へのプレゼントになって防戦一方。前半のマジョルカは攻撃で無力、守備でも無力だった。

で、4バックに変更してFW+FW+攻撃的MF2枚(イ・ガンイン、久保)にしたところ、2失点して試合が壊れた。攻撃力は確かにアップした。ボールを収めて裏へパスを送り込める久保の存在で、FWがゴール前で動けるようになり、CKやFKを獲得、久保自身も惜しい2本のシュートを放った。だが、守備が耐え切れなかった。

前節の[3−5−2]でイ・ガンインまたは久保がセカンドトップという構成から、いきなり[4−4−2]でイ・ガンインと久保をサイドMFとして同時起用へ。アギーレの解釈からすると、守備の不得意な選手=FW2枚+攻撃的MF2枚で計4枚置く、というのはやり過ぎた。せいぜい3枚=ムリキ+イ・ガンイン+久保、あるいはムリキ+FW+イ・ガンインまたは久保なら、ある程度守りもケアできたのではないか。

ついでに言うと、イ・ガンイン、久保のどちらかを選ばないといけないとすると、今なら久保の方が攻撃へのインパクトが大きい。彼は絶好調を維持しており、プレー時間を増やすためにこれ以上何を監督にアピールすべきかわからない。

攻撃力が上がれば守備の時間が少なくなり、結果守備力が上がることもあるのだが、アギーレはそういう発想はしないようだ。だから今後も、久保を入れる時は守備を犠牲にする覚悟で臨むのだろうし、そうであればなかなか先発にはできない。

次節アラベス戦(スペイン時間19日19時)は残留争いの直接対決。0−0狙いでいき、後半の勝負どころで久保かイ・ガンインを投入という、残留のシナリオはまたも踏襲されることになるのだろうか?

文:木村浩嗣

木村浩嗣

編集者、コピーライターを経て94年からスペインへ。2006年に帰国し『footballista フットボリスタ』編集長に就任。08年からスペインに拠点を移し特派員兼編集長に。15年編集長を辞し指導を再開。スペインサッカーを追いつつセビージャ市王者となった少年チームを率いた。現在はグラナダ在住で映画評の執筆も。

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