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サッカー フットサル コラム 2022年3月16日

GKは大きく蹴らずショートパスで繋ぐべき?マジョルカ対レアル・マドリー戦を受けての考察

木村浩嗣コラム by 木村浩嗣
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久保建英

レアル・マドリー戦に出場した久保建英

「グアルディオラは与えた害は大きかった」とため息をつくことが、スペインメディア界では常識となっている。

マジョルカ対レアル・マドリーでのレアル・マドリーの先制点のように、GKからのボール出しのミスで簡単に失点してしまった場合の決まり文句だ。

グアルディオラのバルセロナの成功によって、GKは大きく蹴らず、ショートパスでボールを出すことが流行になった。

が、そうすることで当然ミスも起こる。GKあるいは、CBあるいは、セントラルMFがボールロストすればそれは必ずと言っていいほど失点に直結する。マジョルカのババ(セントラルMF)のケースしかり、カディスのレデスマ(GK)のケースしかり、パリ・サンジェルマンのドンナルンマ(GK)のケースしかりである。これらが今週たまたま、重なったので、「グアルディオラは与えた害は大きかった」という声があちこちで聞こえた。

が、こういう意見は、いかにも結果論で物を言う、ジャーナリストらしい意見で個人的には同意できない。

3人とも時間をかけず蹴っておけば失点はしなかったのは間違いなく、判断ミスがあったことに疑いはない。

ババは正面にいた右SBマフェオにパスを送っていれば良かったし、レデスマは左CBの開き方が甘くパスコースがなかったので正面に大きく蹴っていれば良かったし、ドンナルンマもベンゼマが詰めてくる前に蹴りさえすればいくらでもパスコースはあったはずだ。

ただ、GKから繋いでいくことの是非を問うならメリットの方も見なくてはならないのだが、結果論者はそちらには目をつむる。

数的優位を作ってボールを持ち上がると、相手は下がるしかなく、敵陣に容易に侵入できる。GKからボールを繋ぎマイボールを一度も失うことなく得点する、という見事なチームプレーを目撃したとしても、“メリットはボール出しにあり”とは思わないで、アシストを出した者、シュートを決めた者にだけ注目する。

さらに、結果論者はGKがロングボールを蹴ることのデメリットも無視をする。GKからのロングキックがマイボールになる確率はせいぜい2、3割だろう。大半は相手ボールになって再び攻め込まれる羽目になる。

マジョルカがバックパスからGK、CB、セントラルMFへと繋いだのは間違っていなかった。正面にマフェオがサイドに開いてパスを待っており、彼にはマークがついていなかった。ビニシウスの背後は常に守備の空白地帯なのだ。マフェオにボールが渡っていればレアル・マドリーは後退するしかなかったはずだ。

グアルディオラを真似しようとしてボール出しに失敗し失点が増えているのは事実だろう。プロレベルでもアマチュアレベルでも。私も少年チームの監督時代に痛い失点を何度もしたし、逆に、ボール出しにプレスをかけ得点したことも何度もある。が、だからと言って、ボール出しを止めようとは思わなかった。失敗は成功の元であるし、ミスは修正すればよい。

最終的にはボール出しのメリットはデメリットよりもはるかに大きい、と思っている。

グアルディオラがもたらしたものは害よりも利益の方がはるかに大きいのは、マンチェスター・シティの成績とプレー内容を見ていればわかる。

最後に、この試合の久保について書いておこう。

マジョルカのMVPは両SBで、久保は彼らに次ぐ出来だった。このところの好パフォーマンスを維持しており、イ・カンインのレベルが上がってこないこともあってルイス・ガルシア監督に先発から外す、という選択肢はない。相変わらずファウルあるいはファウルに近いプレーでしか止められない状態だ。

ただ、両SBが良いセンタリングを上げる度に久保へボールが渡る機会が減っている、とも言える。対角線侵入やシュートがあまり見られなくなった。前にも書いたが、ムリキが攻撃の中心になったことの弊害だ。

久保を見ながら、もしレアル・マドリーに来季呼び戻されたら、どうなるか?と夢想した。

右FWとしてはロドリゴの控えだろうが、アセンシオよりは優先順位が高くなるのではないか? ボールを強く正確に叩く能力、シュート力は圧倒的に劣るが、プレーへの介入回数と介入度合では上ではないか? アセンシオはチームのプレーにアクセントが付けられないが、久保は付けられる。それがどの程度、チームのパフォーマンスをアップさせるかどうかはわからないが。まだ、ちょっと気が早いが、トップチームに同行するはずの夏のプレシーズンマッチで、どこまで通用するか通用しないのかを見てみたい。

文:木村浩嗣

木村浩嗣

編集者、コピーライターを経て94年からスペインへ。2006年に帰国し『footballista フットボリスタ』編集長に就任。08年からスペインに拠点を移し特派員兼編集長に。15年編集長を辞し指導を再開。スペインサッカーを追いつつセビージャ市王者となった少年チームを率いた。現在はグラナダ在住で映画評の執筆も。

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