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サッカー フットサル コラム 2022年2月22日

ムリキの加入が久保に与えるプラスとマイナスの影響

木村浩嗣コラム by 木村浩嗣
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久保建英(写真左)とムリキ(写真右)

ゴール後に喜ぶ久保建英(左)とムリキ(右)

冬の移籍市場でマジョルカに加入したベダト・ムリキが強烈なインパクトを与えている。リーガ出場3試合で2ゴール1アシスト。勝ち点6の獲得に直接貢献し、リーガ4連敗で降格圏に足を踏み入れかけたチームを救った。

彼の加入で運も味方に付けたようだ。負ければ降格圏入り、決戦となったカディス戦では、あれでPKではGKが可哀想、という微妙なジャッジでもらったPKをムリキが決めて勝利。アスレティック・ビルバオ戦では決勝点がオウンゴールだった。久保のシュートが枠に当たりリバウンドがGKに当たりネットを揺らす。ムリキの貢献はハイボールを久保に落としたことだった。ちょっと早いが、ムリキがいる限りマジョルカの降格はない、と言い切りたいくらいだ。
ムリキの存在はチームの戦い方も変えた。

フォーメーションは[4-2-3-1]から[4-4-2]になった。空中での競り合いでほぼ全勝のムリキへロングボールを入れ、彼の周りで落としたボールを拾えるセカンドトップ(アンヘル)を置く。マジョルカの弱点はボール出しにプレスを掛けられて大きく蹴ったボールが、すべて敵へのプレゼントになってしまうことだったが、ムリキとやはり新加入のGKセルヒオ・リコがいることで、かなりの割合でマイボールにできている。

マジョルカのストロングポイントは、これまでは久保、ダニ・ロドリゲス、イ・カンインがいる2列目だったが、1列目のムリキとアンヘルだけでシュートに持ち込める態勢になり前掛かりになった分、1人人数が減った中盤の比重が軽くなった。

これはチームにとってはプラスだが、久保にとってはどうなのか? ムリキ加入の久保にとってのプラスマイナスを考えてみた。

まず、間違いなくプラスなのが、前でボールを持てる時間が長くなり、久保が力を発揮できる敵陣でのプレー参加が容易になること。

これまでは久保なりダニ・ロドリゲスなりイ・カンインにボールが入り、ドリブルで持ち上がることで攻撃のスイッチが入っていたが、これからはその部分が省略可能。ムリキの落としたセカンドボールを直接拾うか、アンヘル経由でもらった場所は、相手のペナルティエリア近くのはず。久保はそのままシュートを撃て、アシストを出せる。あのアスレティック・ビルバオ戦でのオウンゴールに繋がったシュートがまさにそれだ。

次に、プラスでもマイナスでもないが、久保のプレーの質も変わる。ライン際でもらい対角線に切り込んで行き放つシュートは、これまで久保のハイライトと呼べるプレーだった。が、これからはムリキのヘディングシュートを生かせるセンタリングこそがハイライトとなる。

となると、久保の役目はアーリークロスを入れるか、背後をオーバーラップしてきたマフェオにセンタリングをさせることになる。そうして自らはセカンドボールを拾える位置へ動く。ムリキはCKだけでなくスローインさえも決定的なチャンスに変えられるから、サイドライン際の小細工も要らない。久保の攻撃時の主戦場は右サイドではなく、中央寄りになり、対角線ドリブルの代わりに飛び込んでシュート、というシーンをよく目にするようになるだろう。

最後に、マイナス面を。

直近のベティス戦で久保は前半だけで交代させられた。1点リードされた場面でルイス・ガルシア監督の思い切りの良い(良過ぎた?)采配だった。久保はマイボールではいつもの決定的なプレーをしそうな雰囲気を出していたが、彼のサイドは相手SBアレックス・モレノに狙われて穴になっていた。

ムリキの加入によるフォーメーション変更でMFの数が5人から4人に減った。久保の控えには計算できるイ・カンインがいる。監督にとっては久保を代えやすい環境が整った、と言うこともできる。

以上、プラスマイナスを通算すればもちろんプラス。得点力アップがアタッカーにマイナスになるわけがない。ただ、これまでとは少し違う姿の久保になるだけだ。

文/木村浩嗣

木村浩嗣

編集者、コピーライターを経て94年からスペインへ。2006年に帰国し『footballista フットボリスタ』編集長に就任。08年からスペインに拠点を移し特派員兼編集長に。15年編集長を辞し指導を再開。スペインサッカーを追いつつセビージャ市王者となった少年チームを率いた。現在はグラナダ在住で映画評の執筆も。

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