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サッカー フットサル コラム 2022年1月17日

アルコールを控えさえすればキャロルの人生は変わっていた

粕谷秀樹のOWN GOAL,FINE GOAL by 粕谷 秀樹
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リヴァプール時代のアンディ・キャロル

リヴァプール時代のアンディ・キャロル

強烈すぎるインパクトだった──。

彼の左足から放たれる一撃は、うなりをあげてゴールに突き刺さった。

2~3人のDFに囲まれていても意に介さず、193cmの長身を利して真下にたたきつけるようなヘディングは、数多くのGKを無力にした。

1970年代にリヴァプールのアイコンとして活躍したケヴィン・キーガンが、「史上トップ3に入りうる逸材」と絶賛。イングランドの世論も「しばらくの間、ストライカーには困らないな」と、左利きのアタッカーに期待を寄せていたのだが……。

アンディ・キャロルである。並外れたスピードこそなかったが、ツボにはまったときの破壊力は凄まじいの一語に尽きた。左足のシュートも打点の高いヘディングも、相手守備陣は分かっていても止められなかった。

いまから10年ほど前、イングランド代表の前線はウェイン・ルーニーにおんぶにだっこ。攻撃の幅を広げ、ルーニーの負担を軽くする意味でも、キャロルはうってつけの存在だった。

豊富な運動量と卓越したビジョンを持つルーニーと、ポストワーカーのキャロル。補完性も十分なはずだった。

「とにもかくにも、アルコールを控えなければならない」

イングランド代表監督(当時)のファビオ・カペッロは、何度となく苦言を呈している。

キャロルは酒にまつわるトラブルが絶えなかった。バーで客ともめたり、けがのリハビリ中に大量のビールをあおったり、危機意識と自己管理能力が著しく欠如していた。

当然、コンディションが整うはずがなく、世界水準のスーパーゴールを決めたかと思えば、ちょっとしたプレスバックでハムストリングを痛める。豪快なヘディングでマーカーを吹き飛ばした次の瞬間、足首を抑えて転げまわる。行く先々で周囲の期待を裏切り続けた。

「アンディが自分を信じ、コンディションに気を配っていれば、アルコールを控えさえすれば、人生は変わっていただろう」

カペッロは、いまでもキャロルの不摂生を嘆いているという。

元イングランド代表のポール・ガスコインやトニー・アダムズ、元ブラジル代表のアドリアーノ、元アルゼンチン代表のアリエル・オルテガなど、酒で身を亡ぼした選手は少なくない。一滴も飲むなとはいわないが、やはり匙加減が必要だ。

1980年代後期から中期にかけ、世界の一大勢力として隆盛を極めた当時のACミランは、アルコールをほとんど口にしなかった。トヨタカップで日本を訪れた際も、基本的には常温のミネラルウォーターを採っていた。

いま、キャロルはチャンピオンシップ(実質2部)のレディングに籍を置いている。プレミアリーグの降格圏をさまようバーンリーがオファーを届ける予定との噂はあるものの、本稿執筆時点で大型ストライカーの去就は不透明だ。1月6日で33歳になった。まだ、ひと花は咲ける。

文:粕谷秀樹

粕谷 秀樹

ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。

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