人気ランキング
コラム一覧
リヴァプール時代のアンディ・キャロル
強烈すぎるインパクトだった──。
彼の左足から放たれる一撃は、うなりをあげてゴールに突き刺さった。
2~3人のDFに囲まれていても意に介さず、193cmの長身を利して真下にたたきつけるようなヘディングは、数多くのGKを無力にした。
1970年代にリヴァプールのアイコンとして活躍したケヴィン・キーガンが、「史上トップ3に入りうる逸材」と絶賛。イングランドの世論も「しばらくの間、ストライカーには困らないな」と、左利きのアタッカーに期待を寄せていたのだが……。
アンディ・キャロルである。並外れたスピードこそなかったが、ツボにはまったときの破壊力は凄まじいの一語に尽きた。左足のシュートも打点の高いヘディングも、相手守備陣は分かっていても止められなかった。
いまから10年ほど前、イングランド代表の前線はウェイン・ルーニーにおんぶにだっこ。攻撃の幅を広げ、ルーニーの負担を軽くする意味でも、キャロルはうってつけの存在だった。
豊富な運動量と卓越したビジョンを持つルーニーと、ポストワーカーのキャロル。補完性も十分なはずだった。
「とにもかくにも、アルコールを控えなければならない」
イングランド代表監督(当時)のファビオ・カペッロは、何度となく苦言を呈している。
キャロルは酒にまつわるトラブルが絶えなかった。バーで客ともめたり、けがのリハビリ中に大量のビールをあおったり、危機意識と自己管理能力が著しく欠如していた。
当然、コンディションが整うはずがなく、世界水準のスーパーゴールを決めたかと思えば、ちょっとしたプレスバックでハムストリングを痛める。豪快なヘディングでマーカーを吹き飛ばした次の瞬間、足首を抑えて転げまわる。行く先々で周囲の期待を裏切り続けた。
「アンディが自分を信じ、コンディションに気を配っていれば、アルコールを控えさえすれば、人生は変わっていただろう」
カペッロは、いまでもキャロルの不摂生を嘆いているという。
元イングランド代表のポール・ガスコインやトニー・アダムズ、元ブラジル代表のアドリアーノ、元アルゼンチン代表のアリエル・オルテガなど、酒で身を亡ぼした選手は少なくない。一滴も飲むなとはいわないが、やはり匙加減が必要だ。
1980年代後期から中期にかけ、世界の一大勢力として隆盛を極めた当時のACミランは、アルコールをほとんど口にしなかった。トヨタカップで日本を訪れた際も、基本的には常温のミネラルウォーターを採っていた。
いま、キャロルはチャンピオンシップ(実質2部)のレディングに籍を置いている。プレミアリーグの降格圏をさまようバーンリーがオファーを届ける予定との噂はあるものの、本稿執筆時点で大型ストライカーの去就は不透明だ。1月6日で33歳になった。まだ、ひと花は咲ける。
文:粕谷秀樹
粕谷 秀樹
ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。
あわせて読みたい
J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題
ジャンル一覧
人気ランキング(オンデマンド番組)
-
【限定】高円宮杯 JFA U-18 サッカープレミアリーグ2025 プレーオフ RB大宮アルディージャU18 vs. ジュビロ磐田U-18/米子北高校 vs. アルビレックス新潟U-18
12月14日 午前10:50〜
-
【限定】高円宮杯 JFA U-18 サッカープレミアリーグ2025 プレーオフ 東山高校 vs. 尚志高校/愛媛FC U-18 vs. ベガルタ仙台ユース
12月14日 午前10:50〜
-
サッカーニュース Foot! 超高校サッカー通信 Presents 高円宮杯U-18プレミアリーグ 土屋雅史の深掘りレポート2025 #21
12月11日 午後10:45〜
-
高円宮杯 JFA U-18 サッカープレミアリーグ 2025 WEST 第21節-2 ヴィッセル神戸U-18 vs. サガン鳥栖U-18
12月7日 午後12:50〜
-
高円宮杯 JFA U-18 サッカープレミアリーグ 2025 EAST 第21節-1 鹿島アントラーズユース vs. 青森山田高校
12月6日 午前10:50〜
-
【限定】ロングハイライト・高円宮杯 JFA U-18 サッカープレミアリーグ 2025 WEST 第22節-3 神村学園高等部 vs. ファジアーノ岡山U-18
12月16日 午後8:00〜
J SPORTSで
サッカー&フットサルを応援しよう!
