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サッカー フットサル コラム 2021年12月6日

久保建英がスペインメディアに好かれる理由

木村浩嗣コラム by 木村浩嗣
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久保建英

久保建英

久保建英が今季初得点を挙げた試合後のインタビューが面白かった。

ーーゴール前で落ち着いていましたね。
という問いに

「いや、本当は緊張していました。ビデオを見ればわかると思うけど、タッチが短くなってしまって……」

アンヘルのパスで抜け出してGKオブラクと1対1になって、シュート前の何タッチ目かが短くなり、足下にボールが詰まった感じになって窮屈な前傾態勢からシュートせねばならなかった。股の下を抜けてゴールに転がり込み決勝点となったが、あそこは本来、余裕を持って左隅を狙うところだ。

タイミングを外すためにわざと一呼吸を遅らせて撃ったのかな、と思ったが、何のことはない。緊張でタッチが短くなったのだった。

こういう受け答えのできる選手はスペインメディアに好かれると思う。

まずは正直。黙っていれば高度な技で済んだかもしれないところを、正直に緊張していたことを白状した。プロでも緊張するんだな、と、親近感が湧いたと思う。それをまたあのポーカーフェイスで言うから面白い。にこにこ笑う必要はないが、ポーカーフェイスでぶっきらぼうは駄目。メディアに好かれない。

“メディアに好かれなくても別にいい”という考え方もあり、それでサッカー的には何ら問題はないが、露出に影響する。優等生発言ばかりで本音を言わない選手、嫌そうに話をする選手の話はまったく面白くないので、記者はインタビューを申し込まない。

数時間前、セビージャ対ビジャレアルの試合後会見場にいた。

ジューレン・ロペテギ監督とウナイ・エメリ監督を聞き比べて、圧倒的にインタビューを申し込みたいのはエメリの方だ。あまり話をしたくない前者と何とかわかってもらおうとする後者。ロペテギのぶっきらぼうさは幾分解消されていたが、エメリの伝えたい意欲は変わっていなかった。

監督で言うと、レアル・マドリーのアンチェロッティ、アトレティコ・マドリーのシメオネ、バルセロナのシャビ、ソシエダのイマノル・アルグアシルもエメリ側、ベティスのペジェグリーニはロペテギ側かな。選手では、レアル・マドリーのカセミロとかバルセロナのピケとかセビージャだとジョルダン、ビジャレアルだとパウ、ソシエダだとオヤルサバルとかアトレティコ・マドリーだとルイス・スアレスとかは、何か見出しになりそうなことを言ってくれる可能性がある。

久保はスペイン語はぺらぺらだし、頭の回転が速い、というのが好かれる第二の理由。

ーーこのゴールはマジョルカにもそうですが、所属元のレアル・マドリーにも意味がありますね。

アトレティコ・マドリーはレアル・マドリーのライバルで、久保はレアル・マドリーの選手。そして次節はマドリッドダービーがある。ならば、こういう質問は出て当然。マジョルカファンを傷付けず、レアル・マドリーファンにも目配せする粋な答えが求められていた。

「マジョルカに100%集中していますが、ついでに彼らも助けられるならこんなにうれしいことはないですね」

優等生の解答は「マジョルカに100%集中しています」止まり。これだけでは面白くも何ともない。そこに「彼ら」のことにもちゃんと言及することで、「久保のレアル・マドリーへの小さなアシスト」(『マルカ』紙)なんて、レアル・マドリーファン向けの記事が成立するわけだ。

ゴール後のファンやチームメイトとの喜び方も良かったし、2カ月を棒に振った久保がリーダーの座を急速に取戻しつつある。

文:木村浩嗣

木村浩嗣

編集者、コピーライターを経て94年からスペインへ。2006年に帰国し『footballista フットボリスタ』編集長に就任。08年からスペインに拠点を移し特派員兼編集長に。15年編集長を辞し指導を再開。スペインサッカーを追いつつセビージャ市王者となった少年チームを率いた。現在はグラナダ在住で映画評の執筆も。

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