人気ランキング

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

メルマガ

お好きなジャンルのコラムや
ニュース、番組情報をお届け!

メルマガ一覧へ

コラム&ブログ一覧

サッカー フットサル コラム 2021年11月16日

スペイン代表エンリケ監督のメディア対応「サッカーについて私は君たちよりもはるかに知っている」

木村浩嗣コラム by 木村浩嗣
  • Line
ルイス・エンリケ監督

ルイス・エンリケ監督

「1試合負けた途端に、『食人族』がまたやって来るよ。大変ハードな映画だ。だが我われは重圧に慣れている」
こんなことを言うから、ルイス・エンリケは嫌われるのである。

14日夜スペインはスウェーデンに勝利しカタールW杯の出場を決めた。負ければ、予選以上に厳しいプレーオフに回っていたところ。監督ルイス・エンリケの進退も必ずや問われていただろう。

そんな大一番で土俵際に追い込まれながらも勝利。“良かった、良かった”で済ませばいいのに余計なことを言ってしまうところが、ルイス・エンリケである。“勝ったら喜び、負けたら怒る。メディアはしょせん結果論”と軽蔑を込めて皮肉っているのだ。

これ、「メディア」を「父兄」に変えれば、私が少年チームの監督時代に思っていたことと同じ。もっとも、私は心の中で言うだけだったが、ルイス・エンリケはちゃんと口に出している。

おめでたい夜ですら、メディアと和解するつもりはなかったようだ。

1カ月ほど前にはまた、こんなことも言っていた。

「(メディアの言うことには)まったく興味がない。読みも見も聴きもしない。サッカーについて私は君たちよりもはるかに知っているからね」

これもまったくその通りである。

レアル・マドリーとバルセロナでプレーしバルセロナで監督をしたルイス・エンリケと、せいぜいアマで齧った者が大部分のジャーナリストとでは、知識量も経験値も比べものにならない。

当たり前だ。監督が戦術、システム、練習メニュー、選手の配置、招集メンバー選び、先発メンバー選び、交代、戦術変更などすべての決断と、その結果に責任を負っているのに対し、ジャーナリストには何の責任もない。そもそも、監督とメディアではサッカーとの向き合い方と覚悟がまったく違うのだから。

ただ、そんな力量が異なる両者の間で「批評(しばしば批判)」というものが成立するのには、二つ理由がある。一つは監督も当然ミスを犯すこと、もう一つはメディアはそれを後から指摘できることだ。

チョキを出したルイス・エンリケへの“あそこはパーで行くべきだった”という批判は100%的を射ている。先にアクションを起こすのは監督で、メディアがするのはそのリアクションだから“後出しじゃんけん”が常に可能なのだ。

この狡いやり方、メディア内では結構重宝されている。ルイス・エンリケが後出しじゃんけんでやられているうちに、メディアに愛想を尽かした、というのはよくわかる。

監督がメディアの敵を買って出て、選手へのプレッシャー軽くしたり、外圧を利用してチーム内の結束を固くしたりというのはよくある。レアル・マドリー時代のモウリーニョのマネージメントがこのやり方だった。個人的にはメディアは味方に付けた方が得だと思うが、ルイス・エンリケは違う道を選んだ。あえて険しい道を歩むことでW杯優勝を頂点に失われた闘争心を取り戻そうとしているのかもしれない。

挫折を願うメディアすらいる中での第一の関門は突破した。国内の敵と国外の敵、両方の戦線を開いたまま、元無敵艦隊スペインは世界へ漕ぎ出すことになった。

文:木村浩嗣

木村浩嗣

編集者、コピーライターを経て94年からスペインへ。2006年に帰国し『footballista フットボリスタ』編集長に就任。08年からスペインに拠点を移し特派員兼編集長に。15年編集長を辞し指導を再開。スペインサッカーを追いつつセビージャ市王者となった少年チームを率いた。現在はグラナダ在住で映画評の執筆も。

  • Line

あわせて読みたい

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

ジャンル一覧

人気ランキング(オンデマンド番組)

J SPORTSで
サッカー フットサルを応援しよう!

サッカー フットサルの放送・配信ページへ