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サッカー フットサル コラム 2021年6月28日

バルサ復権の鍵を握る《天才》フレンキー・デ・ヨング「周りがどう思うかは関係ない」

木村浩嗣コラム by 木村浩嗣
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フレンキー・デ・ヨング 映像協力:Diari ARA

フレンキー・デ・ヨングは「完璧なMF」と呼ばれる。

パス能力は良く知られている。彼は昨シーズン、リーガエスパニョーラで最もパスを出した選手であり、その成功率92%はMFではクロースに次いで2番目。攻撃面の指数ではゴール3もアシスト4もチーム5位。それとあまり知られていないことだが、ドリブルも得意で58はチーム3位でメッシ、デンベレに次ぐもの。ペドリやグリーズマンの倍である。守備面ではボール回復数でブスケッツ、ジョルディ・アルバに次ぐチーム3位。現在、開催中のEURO2020でも似たような数字を残している。欧州の名手ぞろいの大会でパス本数でMFとしては6位、ドリブルで15位、ボール回復数で22位である(グループステージ終了時)。

実はもっと凄い数字が残っている。それが出場時間数である。彼の記録した3159分はリーガ全体でGKを除けば2位。リーガ38試合中36試合で先発し、うち29試合がフル出場。つまりほとんど休まない。バルセロナの2シーズンでケガは1度だけで、昨シーズンは1度もケガをしていない。180cm、74kgはサッカー選手としては普通の体格だが頑丈で体力抜群なのだ。

これ、若さ(24歳)だけのせいにしがちだが、若くてもケガがちの選手、後半にパフォーマンスが落ちて交代を用意しておかなければいけない選手はいる。EUROでもシーズンの疲れを引きずっている様子はない。3試合すべてに先発し休んだのは10分間だけだ。繊細なテクニシャンではない。フィジカルのタレントでもあるのだ。

以上、こうして見えてくるのは、“パスで中盤を支え、ドリブルでの単独突破もでき、フィニッシュにも絡み、ボールを奪い返すために労を惜しまない選手”なのだが、この描写でさえ彼の全体像を把握するのには十分ではない。昨季のリーガでは守備的MF(ブスケッツがプレーするところ)で16試合、CBで6試合、トップ下で1試合と前から後ろまでまんべんなくプレーし、本職のインサイドMFとしては14試合しか出ていない。つまり、彼は何でもできる選手であり、どこでもプレーできる選手なのだ。

もし、来季インサイドMFに専念できれば、フィニッシュ関連のゴール数やアシスト数は増えるに違いない。そうなれば選手としてのマルチさやオールマイティな部分は薄れるかもしれないが、「完璧なMF」により近づくだろう。

さて、これだけの選手でありながらインタビューを見ると、無頓着な今風の若者という印象を受ける。

フレンキー・デ・ヨング 映像協力:Diari ARA

もの凄い重圧の中でプレーしているはずだが「周りがどう思うかは関係ない」し、ミスを恐れることなくプレーするスタイルは「意識はしてないよ。ナチュラルにそうなんだ」と自然体。憧れのチームで凄い重圧の中でプレーしているはずだが、「特に対策はしてない。精神面を鍛えるトレーニングもしていない」と呑気だ。サッカーの社会的な意義についても、自ら人種差別と闘うアクションを起こしながらも「でも世界で起こる問題に対して毎回 選手たちに何かをするべきとプレッシャーを掛けるべきではないよね」とも言っている。バランス感覚がありクールである。

ただ、「でも攻撃的に行って負けるのなら守備的でもタイトルを獲る方を選ぶよ」という部分には負けず嫌いさ、勝利への貪欲さも覗く。

ポジションについては「どこでプレーしたい?」と聞かれたら「ミッドフィルダーだ」と自己主張しながらも、「監督が必要だと思うポジションでプレーするのが僕の役目だと思っている」が結論だ。これ、一見優等生発言にみえるが、インタビューのやり取りから推測するに“MFにこだわってベンチよりもプレーする方を選ぶ”ということなのではないか。

こだわらないのは何でもできるから。呑気なのはそれでベストパフォーマンスができるから。「天才」という形容しか浮かばない。

※オランダ代表はこのあと決勝トーナメント1回戦でチェコに破れてしまった。
フレンキー・デ・ヨングにとっては願わない形でバケーションに入ることになっ
たが、英気を養って新シーズンに戻って来てほしい。

文:木村浩嗣

フレンキー・デ・ヨング選手インタビュー 映像協力:Diari ARA

木村浩嗣

編集者、コピーライターを経て94年からスペインへ。2006年に帰国し『footballista フットボリスタ』編集長に就任。08年からスペインに拠点を移し特派員兼編集長に。15年編集長を辞し指導を再開。スペインサッカーを追いつつセビージャ市王者となった少年チームを率いた。現在はグラナダ在住で映画評の執筆も。

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