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2月26日の開幕戦から過密日程が続いていたJ1リーグは、「代表ウィーク」による短い中断期間に入る。4月2日〜4日の第7節までわずか2週間弱の期間ではあるが、この「ミニブレーク」をどのように活用するのかが、これからの各チームの行方を決めることになる。各クラブの監督にとっては一つの手腕の見せ所になる。
各チームとも開幕前の合宿を通じて万全の準備はしてきたつもりだったろうが、いざ開幕を迎えて実戦に臨むと、思った通りのプレーができない。あるいは、期待通りに戦術が機能しない。そんなことがよくある。しかし、リーグ戦がある間は週に1回、または2回のペースで試合をこなさなければならない。とくにミッドウィークにも試合がある場合には、次の試合に向けてのコンディション調整だけしかできず、戦術的な立て直しは難しい。そんな中、たとえ2週間弱ではあっても中断期間は貴重な時間となる。
とくに、開幕で出遅れたチーム、あるいは新監督の下でまだ新戦術が浸透しきれていないチームにとっては、ぜひともこの「ミニブレーク」を態勢の立て直しのために使いたい。
たとえば、6試合で18失点の横浜FCなど守備が崩壊気味のチームにとっては「守備の構築」が急務だ。何が何でも、この2週間弱をフルに活用して守備戦術の徹底を図りたい。開幕からわずか1か月ではあるが、全38節で行われる今年のJ1リーグも実はすでに6分の1近くが終了していることになる。現在、低迷しているクラブにとっては、この「ミニブレーク」で立て直しがきかないと、今後の戦いはかなり厳しいものとならざるをえない。
また、新型コロナウイルスの感染者が出たことによって、まだ1試合しか消化できていないガンバ大阪もこれからは難しいシーズンになりそうだ。
活動を休止していたG大阪は、ちょうど「代表ウィーク」に入ったたタイミングで3月23日に活動を再開したというが、試合から遠ざかっていた分、2週間を使ってコンディションを上げていかなければなるまい。そして、再開後は未消化の試合をこなす必要が出てくるため、かなりの過密日程となることが予想される(G大阪はACLも控えている)。過密日程をこなしながらいかにして勝点を積み上げていくのか。目標の再設定と、今シーズンのプランの練り直しが必要となるだろう。
極端な話だが、思い切ってJ1リーグは「残留さえ達成すればよし」と割り切って、まだ開幕していないACLに全力を傾けるという選択も考えられる。
一方で、新監督の下で戦いながら、まだ結果に結びつけられずに苦戦を強いられている浦和レッズも、この「ミニブレーク」を使って勝ちパターンを確立したい。
リカルド・ロドリゲス監督を招聘して攻撃的なスタイルに転換を図っている浦和。サイドバックの宇賀神友弥を攻撃参加させるスタイルを模索したり、小泉佳穂などの新戦力をさまざまなポジションでテストしたりしているが、ある時間帯ではうまく機能していたと思ったものが突然機能しなくなったり、スピードのある相手にまったく付いていけなくなったり、試合毎に、あるいは1つの試合の中でも時間帯によって振れ幅が非常に大きいのが現状だ。
しかし、第6節の川崎フロンターレ戦では、最終的には川崎の攻撃力の前に守備がまったく付いていけずに5失点の大敗を喫してしまったが、前半の42分に小林悠に先制を許すまでは川崎と互角に渡り合っていた。
とくに、それまで相手のプレッシャーでボールを失って失点につながる場面が多かったので心配していたが、川崎戦では金子大毅と伊藤敦樹のボランチにトップ下の小泉佳穂の3人のMFによるトライアングルがバランスよく機能し、川崎のプレッシャーをかいくぐって、川崎と対等にパス回しで対抗していた。川崎と互角にパス回しで渡り合えたのだから、高く評価してもいい。
第6節までの戦いで、さまざまな戦い方をテストしてきた浦和レッズ。そこで得た情報を分析整理し、「ミニブレーク」の時間を利用して今後の戦い方のベースを構築しておきたい。浦和にはこれから西大伍や興梠慎三、トーマス・デンといった選手が故障から復帰して戦列にっ加わってくるはず。うまく「ミニブレーク」を活用すれば、反攻への期待も大きく膨らむ。
一方で、第6節まで良い結果を残していたチームの監督にとっては、「ミニブレーク」は迷惑なものなのかもしれない。
圧倒的な攻撃力で首位を走る昨シーズンの覇者、川崎フロンターレ。イタリア人監督、マッシモ・フィッカデンティの下、まるで一時代前のカルチョの世界のような「ウノゼロの美学」を実現している名古屋グランパス。そして、攻撃的な守備で開幕から無失点を続けるサガン鳥栖。せっかく好調に走っている時期に、中断期間が挟まるのは嫌なものだろう。試合間隔が開くことによって、試合勘がズレてしまってはいけない。
こうしたチームにとっては、3月27日、28日に開催されるJリーグYBCルヴァンカップのグループステージ第2節の試合でも、休養が必要な選手を除いてフルメンバーで戦って、1週間に1試合のリズムを崩さないようにすべきだろう。
もっとも、ACLに出場する川崎と名古屋、そしてセレッソ大阪はルヴァンカップの試合がなく、試合間隔が1週間開くわけで、リズムを維持するために実戦に近いような形での練習試合を組むしかないだろう。
そんな中で、川崎はこの「ミニブレーク」の意味が他のクラブとはちょっと異なってくる。というのは、川崎からは日本代表およびU-24日本代表に数人の選手が招集されたからだ。当初はフル代表に山根視来。そして、U-24に三笘薫と旗手怜央、田中碧の3人が招集されたが、さらにその後、脇坂泰斗も追加招集されることとなった(もっとも、あれくらい圧倒的な戦力を誇るチームなら、普通は代表に10人以上が招集されるはずだ。「海外組」が代表の過半数を占める日本だから、川崎からは“わずか5人”の招集ですんだのだ)。
川崎にとっては、この「ミニブレーク」はベテラン選手たちに休養を与え、今シーズン新たに加入した新戦力の選手をチームへ組み込むために使うべきだろう。これから、ACLの日程もあり、ますます過密になる日程をこなすためにも、若い選手がレギュラー陣と変わらぬパフォーマンスを示すことが重要になる。そうなれば、もともと分厚かった川崎の選手層はさらにかさ上げされ、本当に2つのチームを作れるようになる。
いずれにしても、それぞれのチームの現状によってその内容はさまざまだが、「課題」「テーマ」を明確化させて、この「ミニブレーク」をうまく活用したいものである。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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