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注目は“トップ7”の戦い!まもなくビーチサッカーW杯が開幕|FIFA ビーチサッカー ワールドカップ セーシェル2025
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Jリーグは2021年シーズンに「脳震盪等による交代」というルールを実施(試行)することを決めた。
国際評議会(IFAB)が昨年の12月に行った決定に従ったものだ。具体的には「交代枠を使い切った後でも、脳震盪が起きたときには追加で選手交代ができる」というものだ。
最近になって、脳震盪の危険性が広く知られるようになった。
ラグビーの世界では、元イングランド代表選手9名が、ラグビーの統括団体であるワールドラグビーを相手取って訴訟を起こすとも報じられている。脳震盪の後遺症によって試合の記憶もないのだという。
サッカーも、脳震盪の危険と隣り合わせだ。相手の頭や肘が頭部に打撃を与えて選手が倒れることはそう珍しいことではない。
1985年4月に日本代表が平壌で北朝鮮と対戦した時、MFの木村和司が空中戦で相手と接触し、そのまま落下して堅い人工芝のグラウンドに頭を打ち付けた。その後、木村はプレーを続けたが、試合後はそのまま現地の病院に入院。試合の記憶はまったくなかったそうだ(幸い、翌日には退院して無事に帰国した)。
今から思うと昔のサッカーは乱暴なものだった。「骨折したままプレーを続けた」などという“武勇伝”がいくらもあったのだ。
マンチェスター・シティのGKバート・トラウトマンは1956年のFAカップ決勝で負傷したままプレーを続け、試合後、首を骨折していたことが判明したという有名な話がある(ドイツ生まれのトラウトマンを主人公とした映画『キーパー ある兵士の奇跡』が昨年封切られたのは記憶に新しい)。
なにしろ、昔は選手交代が許されていなかったのだ。負傷してピッチを離れたら、味方が1人少なくなってしまうから、骨折して走れない状態でも「とりあえず前線に立っていろ」とピッチに送り出されたものだ。
今でも、3人の交代枠(今シーズンも、Jリーグは「5人交代制」を実施)を使い切ってしまった後だったら同じことだ。可能であれば選手はピッチに戻りたいだろうし、監督もそれを望むことだろう。実際、脳震盪を起こしてもその場では意識もしっかりしていて、プレーを続けらることが多い。しかし、その後に記憶が飛んでしまったり、後遺症が残ってしまうことがあるのだ。
だから、脳震盪を起こした選手はプレーを続けさせてはならない。そして「交代を躊躇わないように追加で交代できるようにしよう」というのがIFABの決定の趣旨なのだ。
追加交代に反対すべき筋合いはまったくない。
しかし、だ。実際にこの規則を運用して混乱は起こらないのだろうか?
つい2年前までは、公式戦での交代枠は「3人まで」だった。それが、新型コロナウイルス感染症の拡大によって過密日程が強いられ、給水が難しくなったため、飲水タイムが設けられるとともに交代枠も5人に拡大された。そして、さらに延長戦に入った場合にはもう1人が交代できるようにもなっている。そこに、さらに「脳震盪等による交代」が加わると、最大で7人が交代可能ということになる。
僕は「5人交代制」の実施によって戦術の幅も広がったし、交代枠を気にせずに早い時間から選手交代のカードを使えるのでサッカーが面白くなったように感じている。だから、コロナ騒ぎが収束した後にも「5人交代制」は続けるべきだと思っている。
だが、「5人交代制」に反対している人も多い。「サッカーも、ラグビーも、本来のフットボールから、ますますかけ離れたスポーツになってしまう」というわけだ。そういう人たちにとっては「脳震盪による交代」が追加されることにはどう感じるのだろうか? あるいは、脳震盪による交代で登場したフレッシュな選手が決勝ゴールを決めてしまったら、相手チームは不利益を受けたと感じるのではないか。
ワールドカップで初めて選手交代が認められるようになったのは1970年のメキシコ大会からだ。1966年大会の準決勝、西ドイツ対ソ連戦でソ連の選手が前半のうちに負傷でプレーできなくなり、その後、西ドイツが1人多いまま戦ったため、公平性を保つために交代を認めようということになったのだ。
最初は「負傷の場合のみ」という提案だった。だが、選手が本当に負傷しているかどうかを判定するのが難しいので、結局、理由の如何によらず交代を認めることになり、そして、西ドイツのヘルムート・シェーン監督はこの交代枠を戦術的に利用して戦った。
今回の新ルールでも、何らかの理由で“もう1人の交代”を使いたいチームが、実際にはそうではないのに「脳震盪だ」と主張して戦術的な交代を使うかもしれない。あるいは、逆に本当は脳震盪なのに、交代させたくないためにそれを隠してプレーを続行させることも起こりうる。
また、選手の健康や生命に危険を及ぼす恐れがあるというのなら、脳震盪以外でも、たとえば熱中症で倒れた選手でも交代を認めなければならないだろうし、重傷を負って出血がひどい選手が無理に止血をしてピッチに戻ることも望ましくない。つまり、「脳震盪等」を広く解釈すればすべての故障で追加交代を認めなければならなくなる。
そうしたトラブルを防ぐためには、第4審判の隣にニュートラルなドクターを配置して、プレー続行の可否を判定させる必要が出てくるでかもしれない。ボクシングの試合では、オフィシャルのドクターが負傷したボクサーを診察して試合をストップさせるシーンをよく目にするではないか。あれと同じだ。
さらに、せっかく「メディカル・レフェリー」を置くなら、プレー続行中にもピッチ内で負傷者の状態をチェックするようにしたらどうだろうか。
選手が負傷してピッチに倒れると、相手チームがボールを外に蹴り出してプレーを止める光景をよく目にする。もちろん、その選手が重傷を負っていたらすぐにプレーを止めるのは当然だが、倒れていた選手がすぐに立ち上がって何事もなかったように元気に走り出すのを見て興覚めしてしまうことも多い。
もし、「メディカル・レフェリー」がピッチに入って状態をチェックすることができれば、本当に重症の時に限ってプレーを止めるようにできるはずだ。
昔、「2人主審制」というアイディアがあって、そのテストがコッパ・イタリアの試合で行われていたのを見たことがある。結局、2人の主審の判定基準をそろえるのが難しくて「2人主審制」は採用されなかったのだが、選手が倒れた時に主審の1人が駆け寄ってプレーを止めるべきかどうかを判断できるので、無駄な中断が少なくなったのは確かだった。
「脳震盪等による交代」が試行されるということを聞いて、そんなことも思い出した。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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