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サッカー フットサル コラム 2020年7月28日

2021年東京大会は「簡素化」すべし。オリンピックにサッカーは必要なのか?

後藤健生コラム by 後藤 健生
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新型コロナウイルスの感染拡大によって延期された東京オリンピック。その開会まで1年を切ったことで、新聞やテレビなどのマスメディアでも様々な関連企画を目にすることも多くなった。

しかし、2021年夏にオリンピック・パラリンピックを本当に開催できるかと問われれば、「きわめて難しい」と答えざるをえない。すべてがウイルス感染の状況あるいは特効薬もしくはワクチンの開発にかかっていることで、1年後にそうした状況がどうなっているのかは神のみが知るところだ。

従って、本気でオリンピック開催を目指すなら、様々な状況を想定し、ウイルス感染の度合いによってどのような形での開催が可能になるのかをシミュレーションしておくべきだろう。

「通常開催すべき」とか「無観客開催はない」といった強硬論に固執するのは無責任極まりない態度としか言いようがない。IOC(国際オリンピック委員会)は「無観客は認めない」といったことを声高に言っているが、日本側としてはIOCの言うことに惑わされることなく様々なシミュレーションをしておくべきだろう。

現実を考えれば、実際に大会が開催できたとしても「簡素化」や「観客数の制限」が必要になるのは明らかだろう。では、何をどう「簡素化」するのか。それが問題だ。

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最近の報道によれば、IOCは開会式の時間の短縮や選手団入場の簡素化に反対らしい。すべて、高額の放映権料を支払うアメリカのテレビ局(NBC)の意向によるものだ。だが、逆に言えばテレビのコンテンツさえ提供できるなら、観客数が制限されることなどは受け入れ可能だということになる。

競技の削減についても聖域化することなく検討すべきだろう。

東京大会では従来の28競技に加えて5つの新競技が追加され、公開競技を含めて33の競技が行われる。日本が追加を希望した野球・ソフトボールと空手。そして、2競技の追加をIOCに認めさせるために、日本がIOCの意向に沿った若者受けする3競技(スケートボード、スポーツクライミング、サーフィン)と抱き合わせて提案した結果、33競技ということになったのだ。

1964年の東京大会の公式競技が16競技163種目だったのが、2020年大会では公式競技だけでも28競技321種目。多くの人たちの希望や利権を飲み込んで、競技数は半世紀のうちにほぼ倍増したのだ。

しかし、オリンピックを従来のように1都市集中という形で続けていくつもりなら、そろそろ競技数の縮小・軽量化を目指す必要がある。それは、新型コロナウイルスの感染拡大が起こる以前から指摘されていたことだ。

延期となった東京大会を簡素化し、それをきっかけに規模縮小につなげていければ、オリンピック・ムーブメントの将来にとっても大きな意義があるのではないだろうか。

では、どんな競技をはずしていけばいいのか……。

たとえばサッカーとか野球といったメジャー・スポーツはオリンピックには不要なのではないか。なぜなら、サッカーにはFIFAワールドカップという世界最高の大会があり、オリンピックのサッカーはU−23(オーバーエイジを含む)の年齢別大会の一つに過ぎない。女子は年齢制限なしのフル代表の大会だが、こちらも今では大規模な大会に成長した女子ワールドカップが存在している。つまり、サッカー競技にとって、オリンピックは世界最高峰の大会ではないのだ。

野球もそうだ。野球の最高の大会はアメリカのメジャーリーグ(MLB)であり、その優勝決定戦の名称は「ワールドチャンピオンシップ・シリーズ(略称:ワールドシリーズ)」となっている。国際大会としても、MLB選手も出場するワールド・ベースボール・クラシックという大会がすでに行われており、MLB所属選手が出場しないオリンピックの野球はどう考えても“世界最高峰”の大会とは言い難い。

同様に、テニスやサイクル・ロードレースなどプロ・スポーツの多くにとって、オリンピックはなくてもいい。いや、サッカーに限って言えば、オリンピックはかなり“迷惑な大会”でもある。7〜8月に開催されるオリンピックはヨーロッパ主要リーグ開幕直前というタイミングなので、一流選手にとっては参加しづらい時期に当たる。

プロ化以前にはオリンピックが最高の目標だった日本のサッカー界にとっても、今ではオリンピック代表の強化は悩ましい問題となっている。オリンピック世代でも多くの選手がヨーロッパのクラブで活動するようになり、オリンピック代表の強化試合のために彼らを招集することは難しくなっている。

東京オリンピックに向けて、2022年のカタール・ワールドカップを目指すフル代表の森保一監督がオリンピック代表監督も兼任することとなったが、オリンピック代表強化が思ったように進まないと「兼任は間違いだ」という批判の声も上がってきた。

そもそも、オリンピックのサッカー競技には23歳以下という年齢制限がありながらオーバーエイジ枠が認められる中途半端な大会となっているし、約2週間強というオリンピックの日程に詰め込むために中2日の強行日程となる。そして、消耗が激しい夏場の連戦であるにも関わらず、登録選手はわずか18人。FIFAが主催するU−17ワールドカップでもU−20ワールドカップでも23選手が登録できるのに、オリンピックはわずかに18人なのだ。サッカーの大会としては、条件が厳しすぎる。

また、1都市集中で開催されるはずのオリンピックの中で例外的にサッカーは地方都市でも開催される。東京大会でも札幌や宮城、鹿嶋などの6都市7会場で分散開催される。少なくとも2021年の大会では感染症対策のために人の移動を減らす必要があり、そのためにもサッカーは除外すべきなのではないか。

もちろん、参加を楽しみにしていた選手たちにとって、地元開催のオリンピックでプレーする機会を失うのは残念なことではあろうが、23歳、24歳になった選手たちにとって本来目指すべきはカタール・ワールドカップであるべきだ。

オリンピックでは、4年に一度しか日の目を見ないマイナーな競技こそ注目されるべきだ。もし、オリンピックでサッカー系の競技を行うなら中1日の連戦も可能なフットサルこそ最適なのではないか。

文:後藤健生

後藤 健生

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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