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スポーツ界にもリスタートの時間が近づいている。
5月16日にはヨーロッパの主要リーグのトップを切ってドイツのブンデスリーガが開幕。その他の国でも再開日程が決まり始めている。
そして、日本でも5月25日に政府の緊急事態宣言が全面解除され、プロ野球は6月19日に無観客試合という形で開幕することが決まった。Jリーグも、間もなく再開の日取りが決まることだろう。ひとまずは、喜んでおきたい。
だが、Jリーグではまだすべてのクラブで本格的なトレーニングが始まっていない段階なので、再開までは最低でも3週間から4週間は準備の時間が必要となるから、再開は早くても6月末(27日・土曜日)か7月初め(4日・土曜日)となるだろう。
Jリーグは、2月に第1節が終了した時点で中断しているので、J1の場合まだ33節が、J2の場合は41試合が残っている。もし、7月第1週に再開するとして、天皇杯準決勝直前の週末(12月19日)まで試合があるとすれば、週末は25回ある。
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もし、秋になってもワールドカップ予選が再開できず、日本代表の活動がいっさいなかったとすれば、残り33節を消化するためには、ウィークデー開催を8試合組めばいいということになる。一方、J2は41試合残っているのでミッドウィーク開催が16回必要になる。なんとか、日程消化はできそうだ(6月末再開なら、さらに1週間余裕が増える)。
ただ、秋から日本代表の活動が入るとすると、ウィークデー開催の回数は増えていくし、秋から冬にかけて新型コロナウイルス(Covid−19)感染の第2派が襲ってきて再び中断せざるを得ない状況があったとすると、日程はさらに厳しいものになる。
しかし、前回のコラムでも書いたように、選手がフィジカル的に万全ではなく、しかも実戦から何か月も遠ざかっていた状況で真夏の35度もある中で週2試合という強行日程を組んだりしたら、ウイルス感染は防げたのに、熱中症で倒れる選手が続出といったことになりかねない。
ヨーロッパ主要国のリーグ戦では、かなりの強行日程が組まれるようだが、ヨーロッパの夏と日本の夏では、暑さのレベルが違うことはご承知の通りだ(逆に、ヨーロッパの選手たちは夏に試合をすることになれていないという困難もあるが……)。
また、ヨーロッパの場合はすでにシーズンの3分の2程度は消化できており、残りの10試合程度を消化すればいいという状況なのだ。早く試合日程を消化して、8月に開催と言われているチャンピオンズリーグや、その先9月には開幕するであろう2020/21シーズンに向けての準備をしなければならない(2021年6月には延期されたEURO開催が予定されているので、新シーズンもかなり厳しい日程となる)。
それに対して、Jリーグは、J1の場合で残り33節。J2では41節を消化しなければならないのだ。再開後の日程作成の難しさは、ヨーロッパの比ではない。
そこで、前回のこのコラムでは「秋春制」導入を提案した。「来年の初夏(東京オリンピック前)までを使って、余裕のある日程にした方がいいのでは?」ということだ。
だが、秋春制についてはこれまで、何度も議論がなされており、それだけに反対論も根強いということは僕も承知している。それなら、今シーズンの残りの日程に余裕を持たせるために他のやり方はないのかということを考えてみた。
報道によれば、再開直後は長距離移動を避けるために近隣の都道府県のチーム同士のカードが組まれるのではないかという。
緊急事態宣言が解除されても、地域によって新型コロナウイルスの感染状況にはかなりの違いがあるので、都道府県の境を越えての移動は、なるべく自粛した方がいい。たとえば、あまり感染者数が多くない東北各県にとっては、首都圏からの人の移動はあまり歓迎すべきことではないだろう。
したがって、近隣のクラブ同士のカードを組むというのはとても良いアイディアだと思う。
それなら、それをさらに1歩、2歩進めて、今年度の残り試合は同一地域内での対戦だけにしてしまったらどうだろうか?
つまり、J1からJ3までを含めて、地域毎にリーグ戦を行うのだ。
たとえば、東北地方にはJ3を含めれば全6県にJリーグクラブが存在する。それに北海道コンサドーレ札幌を加えた7チームで「北日本リーグ」を行うのだ。ホーム&アウェーで12試合ずつという計算になる。
その他の地域も、だいたい7クラブから9クラブ毎に分けて地域リーグを行う。
現在、感染者数が多い首都圏では東京都と神奈川県だけで9クラブが存在する。関東地方の残り5県で8クラブ。日本サッカー協会では山梨県も関東に属しているのでヴァンフォーレ甲府を含めれば9クラブということにする。
9クラブであれば、試合数は各クラブ16試合ということになる。クラブ数が少ない地域の場合には、3回戦総当たりにすれば試合数は調整できる。
そして、各地域リーグが終了した時点での状況が許すようであれば、プレーオフ大会(各地域の1位同士、2位同士、3位同士……)を開催して今シーズンのチャンピオンを決めるというのはどうだろう? もちろん、強豪ひしめく東京都・神奈川県リーグは激戦リーグとなるだろうし、各地域によって実力の違いが多すぎるので「正規のチャンピオン」と呼ぶことはできないが。
地域のビッグクラブと対戦できるとすれば、J3クラブにとっては大きなモチベーションとなるだろうし、地域からの注目を集めることもできる。
何よりのメリットは、地域の感染状況によっては再開直後から観客を入れての開催ができるという点である。
たとえば、東北各県にとっては感染者数が多い地域のサポーターが大挙して押しかけてくるのは絶対に拒否したいことだろうが、東北の隣接県からのサポーターなら許容できるのではないか……。
首都圏の場合は、観客を入れての開催はしばらくは無理だろうが、それにしても同一条件にあるとすれば、また移動距離が近いとすれば(選手が各自の車で来場することも可能)、感染防止のための対策も楽に実施できそうでもある。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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