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サッカー フットサル コラム 2020年4月26日

コロナウイルス禍のその先に……。新しい時代のスポーツイベントの在り方を考えよう

後藤健生コラム by 後藤 健生
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新型コロナウイルス(Covid-19)の拡大感染を巡って、Jリーグは素早い対応を見せた。いち早く試合の延期を決定し、また、プロ野球(NPB)と共同で対策連絡会議を設置。専門家チームを立ち上げて対策を実行するとともに、再開に向けていくつものシナリオに基づいて準備を進めている。残念ながら、感染はなかなか収束の見通りが立たないものの、Jリーグは事態にうまく対応している。

 

また、Jリーグが理事会や実行委員会などでオンライン会議をうまく活用していることも話題になっている。同時に、クラブや選手たちもSNSなどでを通じて積極的にサポーターに向けて情報を発信。先日は横浜F・マリノスの選手たちが、ファン・サポーターと6時間にも及ぶオンライン発信イベントを行ったことも話題となった。

新型ウイルスの感染がこれほど急速に世界中に拡大したのは、交通機関が発達し、世界中の人たちが簡単に旅行ができるようになり、物流面でも世界が一つになっている現代社会の負の側面を垣間見せたが、同時にオンライン会議やテレワーク、SNSといったテクノロジーの存在によって、人と人の物理的な接触を減らしながらも社会を維持できているのも、これまた極めて現代的な状況だ。

たとえばテレワークの活用が一気に進んだ。これまで経験したことのないテレワークやオンライン会議。実際に経験してみると、思ったよりずっと使い心地が良いとの意見を耳にする。世界がIT化するのは、21世紀の世界では必然の流れだったのだろうが、新型コロナウイルスの感染拡大によってそうした動きが一気に加速しそうだ。

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新型コロナウイルスの感染はいずれ収束に向かう。

大事なことは、今回の新型コロナウイルスを一つの教訓として、将来起こるかもしれないさらに強毒性の強い病原体の流行を見据えて、対策を打ち立てておくことだ。

同時にこうした病原体の感染に対して抵抗力の強い社会の形を作っていくことも重要だ。

たとえば、今回の事態によってテレワークが活用できることが実証された。これから、もっと経験を積み重ねていけば、テレワークはさらに有用なものとなるだろう。

そうなれば、われわれは大都市に集中して暮らしていく必要がなくなる。満員電車に揺られて、毎日のように大移動をしなくてもすむ。人と人がもっと分散して生活していれば、自然にソーシャルディスタンスを取りながら暮らすことができる。

社会は、集中から分散に変わっていくのではないか。

1922(大正11)年に関東地方を襲った大地震(関東大震災)の後、東京では大きな被害を出した下町から、「より安全」とみなされた山の手に移り住む人が多くなり、人口の重心が西に移動した。それと同じように今回の新型コロナウイルス禍を経験したことによって、「大都市に集中して住む」という生活スタイルが見直されるようになっていくのではないだろうか。

人口が数百万から一千万に達するような大都市が誕生したのは、近世以降のことである。

経済が活性化し、諸国の物産が大都市に集中。同時に、低湿地帯や海面を埋め立て、上下水道を整備する土木技術の発展によるものだ。この流れが数世紀も続いた。

だが、大都市は病原体の感染に対しては脆弱だし、海溝型の大地震を考えても人口の集中は望ましいことではない。さらに、もし温暖化がこのまま続いたら、海岸沿いの低地に立地する大都市は海面の上昇によって存在できなくなる。

臨海部の大都市から内陸の多数の中小都市へ分散して住む……。これから、人類の暮らし方は大きく変化していくのだろう。

スポーツの在り方も変わってくるかもしれない。大都市の巨大スタジアムに数万人から10万人規模の観客を集めるスポーツイベントではいわゆる「3密」も生じやすい。それなら、より小規模で快適なスタジアムでイベントを行えばいいではないか。そうしたイベントを、今後さらに発展していく通信技術によって、テレ観戦する。それが21世紀のスポーツイベントの主流になっていくのかもしれない。

もちろん、多くのサポーターが作り出すスタジアムの雰囲気とか、生観戦ならではの空気感をどのように作り出すのか、どのように伝えられるのかなど、解決すべき課題は大きいが。

ところで、巨大なスポーツイベントの最たるものといえばオリンピックである。オリンピックとは、まさに19世紀から20世紀にかけての「近代」を象徴するような巨大なスポーツイベントだった。

新型コロナウイルスの感染拡大によって、2020年のオリンピックは1年延期が決まり、多額の追加費用がかかることとなってしまった。もし、2021年になっても新型コロナウイルスの感染が収束していなかったら、オリンピックは中止となって、日本がこれまで投資してきた巨額の資金はまったく無駄なものとなってしまう。

夏季オリンピックは2024年にはパリで、2028年にはロサンゼルスで開催されることが決まっているが、その後のオリンピック開催に手を上げる都市が出てくるのだろうか?

多数の人が一か所に集中するオリンピックのような巨大スポーツイベントは、その存在意義を失うのではないか。

Jリーグは、現在全国39の都道府県に56のクラブが点在する形になっている。立地が大都市に集中しているプロ野球と比べれば、より分散的な組織になっているのだ。新型コロナウイルスの感染が収束した後も、この経験を生かしてオンライン・イベントなどを活用する、新しい時代のスポーツの在り方を追求してみたらどうだろうか?

文:後藤健生

後藤 健生

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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