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携帯電話は普及していない。タブレットのタの字もない。女性アイドルはキャンディーズかピンクレディで、個人的にはどちらにも興味がなかった。まったくなかった。いまから遠い昔の40年前、日本で第二回ワールドユース(現アンダー20ワールドカップ)が開催された。
当時の筆者は学生で、キャンバスよりもバイト先を重視する健全な生活を送っていた。クッソつまらない講義よりも大切なおカネ。実に現実的で妥当な選択だ。しかもそのおカネをワールドユースの観戦につぎ込んだのだから、健康的でもある。
国立競技場、三ツ沢球技場、大宮サッカー場といった首都圏だけではなく、神戸にも遠征した。「パラグアイのフリオ・セサール・ロメロって凄いらしいぞ」という情報を、専門紙でつかんだからである。たしかにロメロは凄かった。40年前の話だけに記憶は薄れてきているが、キックが非常に正確で、状況判断が優れていたことはなんとなく覚えている。しかし朧気ではなく、長い年月が過ぎても強烈なインパクトが消えない稀有なタレントが、ディエゴ・マラドーナだ。
凄いなんてもんじゃない!! ペレやヨハン・クライフ、ミシェル・プラティニを初めて見たときよりもショックは大きく、まるで魔法に操られているかのようだった。ボールコントロールもパスも異次元で、「これほどの男がまだ19歳なのか!?」と愕然とした。
その後のマラドーナに関しては、皆さんもご存知だろう。齢60を間近にしたいまでもハチャメチャだが、アルゼンチン代表をワールドカップ優勝に導き、ナポリにはスクデットをもたらした。フットボール史上に残るスーパースターであり、彼のパフォーマンスは後世まで語り継がれていくに違いない。
そして5月23日、U20ワールドカップがポーランドで開催される。今大会もスター候補性が目白押しだ。右にディエゴ・ダロト(マンチェスター・ユナイテッド)、左にルベン・ビナーグレ(ウォルヴァーハンプトン)。ポルトガルの両サイドバックは強力だ。アメリカは《リベリアの怪人》ことジョージ・ウェアを父に持つティモシー・ウェアを擁し、ことし3月にフル代表デビューしている韓国のイ・カンインは、ビッグクラブのリクルート担当も興味津々の逸材である。
また、フランスのムサ・ディアビはサディオ・マネ(リヴァプール)を彷彿とさせるウイングであり、さらに地元ポーランドでは、古豪レギア・ワルシャワのレギュラーに定着したGKラドスラフ・マジェツキが期待されている。古くはヤン・トマシェフスキ、近年ではルカシュ・ファビアンスキ(ウェストハム)、ヴォイチェフ・シュチェスニー(ユベントス)といったポーランドGKの系譜を踏まえると、マジェツキも沈着冷静、かつ強気な守りを見せてくれるだろう。
今大会で輝いた選手たちは来年のヨーロッパ選手権、3年後のカタール・ワールドカップでも主役を務める公算が非常に大きい。明るい未来予想図を描くためにも、FIFA U-20 ワールドカップは必見だ。
粕谷 秀樹
ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。
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