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サッカー フットサル コラム 2018年6月29日

前回王者・ドイツが史上初の1次リーグ敗退。その一因と言われるエジルの不振

元川悦子コラム by 元川 悦子
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27日の韓国戦をまさかの0-2で落とし、2018年ロシアワールドカップ・グループFを1勝2敗の勝ち点3で最下位に沈んだドイツ。今大会の優勝候補筆頭に挙げられた強豪が1次リーグで敗退するなど、一体、誰が予想しただろう。

ただ、2002年日韓大会で98年フランス王者のフランスがグループ敗退を余儀なくされたのを皮切りに、2010年南アフリカ大会のイタリア、2014年大会のスペイン、2018年ロシア大会のドイツと、前回優勝国が決勝トーナメントに進めないケースが過去5大会のうち4回も起きている。それだけ前回王者のサッカーが世界中に研究され、対策を講じられていることに他ならない。

ドイツを17日の初戦で1-0で破ったメキシコも徹底した堅守で相手の攻撃を防ぎ、一瞬のカウンターからチャンスを作っていた。前半35分にイルビング・ロサーノ(PSV)の電光石火の一撃も、ドイツ全体が高い位置を取っていた背後を突いた見事な速攻からだった。ドイツにボールを保持させておいて、裏を突くというのは最も効果的な攻撃パターン。それをメキシコにやられたことで、盤石だったはずの強国に少なからず綻びが生じたのは確かだ。

ヨアヒム・レーヴ監督が2010年南アフリカ大会から絶大な信頼を寄せてきたトーマス・ミュラー(バイエルン)やサミ・ケディラ(ユベントス)ら主力が不調だったのも大きな誤算だった。その最たる存在がメスト・エジル(アーセナル)だろう。

今大会のエジルは初戦・メキシコ戦とラストの韓国戦にそれぞれ90分フル出場したが、本来の創造性もアグレッシブさも影を潜めた。シュート数はそれぞれ1本ずつで、ゴールチャンスに絡んだ印象もあまりない。司令塔として重要な役割を担う彼から的確な配球やリズムの変化がもたらされなければ、ドイツの攻めも単調なものになってしまう。それは非常に大きなマイナス面だったと言わざるを得ない。

そもそもエジルは今季アーセナルでもあまり活躍したとは言い切れない状況だった。今季プレミアリーグでは26試合出場(うち先発24試合)で4ゴール。2013年夏から過ごすガナーズでは14-15シーズンと同じ得点数にとどまり、本来の実力を出し切れたわけではなかった。低調なパフォーマンスが特に批判されたのが、UEFAヨーロッパリーグ(EL)準決勝のアトレティコ・マドリード戦。

3日のセカンドレグではジエゴ・コスタの1点に沈み、2戦合計1-2で敗退。アーセン・ベンゲル監督のラストタイトルが幻と消える結果になった。このセカンドレグのエジルは消えていることが多く、「アーセナルのシャツを着るのにふさわしくなかった」とさえ現地メディアから揶揄されてしまった。

こういった出来事が躓きになったのか、ドイツ代表でも前向きな方向に切り替えられず、まさかの不発。チーム自体も史上最低の成績に沈んだ。2022年カタールワールドカップまで契約を延長していたレーブ監督も辞意を表明しているということで、南アから重用されてきたエジル、ミュラー、ケディラ、トニ・クロース(レアル・マドリード)らの黄金世代も一挙に終焉を迎える可能性がある。

とはいえ、エジルもまだ29歳。日本代表で言えば、吉田麻也(サウサンプトン)や香川真司(ドルトムント)と同い年で、決して老け込む年齢ではない。エジルの後継者たる絶対的司令塔がドイツに出てきていない点も今後の復活に影を落とす点だ。だからこそ、彼には今一度、右肩上がりの軌跡を描くべく、再起を図ってほしいもの。そのためにも所属クラブでの復調は必須条件と言っていい。

エジルは今年2月に2021年夏まで3年半の契約延長をアーセナルと行っていて、新たに指揮を執るウナイ・エメリ監督の下でどのように起用されるかが大いに気になるところ。エメリ監督はバレンシアやスパルタク・モスクワ、セビージャで経験を積み重ね、2016年から2シーズンに渡ってパリ・サンジェルマンを指揮。

今季は国内3冠を達成するなど卓越した手腕を見せている。その敏腕監督がエジルにどのような要求をするかまだ分からないが、いずれにしても彼自身がパフォーマンスを上げていかなければならないのは確か。今季のアーセナル、あるいは今大会のドイツ代表のように精彩を欠く状態が続けば、大幅に出番を減らす可能性も否定できない。

ロシアでの屈辱を糧に、ドイツ屈指のファンタジスタがどのような変化を見せるのか。もともと傑出した才能を持つ選手だけに、まだまだ十分にやれるはず。ここからの復活を楽しみに待ちたい。

代替画像

元川 悦子

もとかわえつこ1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。ワールドカップは94年アメリカ大会から4回連続で現地取材した。中村俊輔らシドニー世代も10年以上見続けている。そして最近は「日本代表ウォッチャー」として練習から試合まで欠かさず取材している。著書に「U-22」(小学館)「初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅」(NHK出版)ほか。

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