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2018年ロシアワールドカップも24日で2巡目が終了。グループAのロシアとウルグアイ、グループCのフランス、グループDのクロアチア、グループGのベルギーとイングランドがベスト16入りを決めた。優勝候補に挙げられるチームで予想外の苦戦を強いられているのがブラジルとドイツだが、両チームとも2戦目で初勝利を挙げ、突破へ大きく前進。ここからの上昇曲線が期待されるところだ。
そんな中、圧倒的な破壊力を示しているチームの1つがベルギーだろう。18日の初戦・パナマ戦(ソチ)をドリエス・メルテンス(ナポリ)の先制弾とロメル・ルカク(マンチェスターU)の2発で3-0と好発進を切った彼らは、続く23日のチュニジア戦(モスクワ)を5-2で圧勝している。この2戦目は、開始早々6分のエデン・アザール(チェルシー)のPK弾に始まり、ルカクが前半のうちに立て続けに2点をゲット。
後半にアザールとミシー・バチュアイ(ドルトムント)がダメ押し点を挙げるという実に効率いいゴールラッシュを見せた。もともとイングランド・プレミアリーグで活躍中の傑出したアタッカーを数多く揃えるベルギーは優勝候補の一角と位置付けられていたが、ルカクがここまで4ゴール、アザールが2ゴールと期待に違わぬ働きをしているのも特筆すべき点。それはチームにとって非常に大きなプラス要素と言っていい。
ルカクの4得点は、イングランドのハリー・ケイン(トッテナム)の5ゴールに続く得点ランキング2位。ポルトガルの絶対的エースFWクリスティアーノ・ロナウド(レアル・マドリード)とも並んでいる状態だ。今季マンチェスター・ユナイテッドでのルカクはプレミアで16得点にとどまっていて、32ゴールのモハメド・サラー(リバプール)、30ゴールのケインらに大きく水を空けられた状態でシーズンを終えていた。
マンチェスターU自体も失速感が否めなかっただけに、ロシアでのルカクのパフォーマンスには一抹の不安も感じられた。しかしながら、代表に戻ってくると周囲とのコンビネーションを合わせやすいのか、今大会の彼は非常にイキイキとプレーしている印象だ。実際、チュニジア戦の2発はイングランドで多いヘディングの競り合いや、相手を背負うような形ではなく、スピードでDFのギャップを突いてフリーになったり、背後に飛び出すというストライカーらしい得点だった。それだけルカクのコンディションがいいということ。今大会はさらに多彩なパターンからゴールを重ねていく可能性が高そうだ。
アザールの方も、今大会初ゴールとなったPKに始まり、トビー・アルデルヴァイレルト(トッテナム)のタテパスに鋭く反応し、相手を巧みな技術でかわして決めた4点目に好調ぶりがよく出ていた。今季プレミアリーグでのアザールはケガによる出遅れが響いた部分もあってシーズン12得点とやや物足りなさを感じさせただけに、本人もこの大会でのブレイクを心に期していたに違いない。
チェルシーでのアザールは自らドリブルで打開してフィニッシュに持ち込む傾向が強いが、今回の4点目のようなパスの受け手に回るのもうまい。ベルギーにはケヴィン・デブライネ(マンチェスターC)やマルアヌ・フェライニ(マンチェスターU)、アクセル・ヴィツェル(天津権健)のように長短のパスで相手を揺さぶれる選手が少なくないだけに、アザールのスピードがより生きる。エースナンバー10を背負う男は水を得た魚のように躍動感を示していくだろう。
この攻撃の2枚看板が調子を落とさなければ、ベルギーは今後も優勝候補という名前に相応しい戦いを見せる可能性が強い。さしあたって28日のイングランドとのG組1・2位決戦の行方は大いに注目されるところだ。イングランドも2戦合計8ゴールと大爆発していて、ベルギーにとっては決して侮れない相手だ。同国のアルデルヴァイレルトとヤン・フェルトンゲン、ムサ・デンベレと、イングランドのケイン、デレ・アリ、キーラン・トリッピアーらが同じトッテナム勢で、マンチェスターUやマンチェスターC勢も互いに入り混じっていることからも分かる通り、どちらにとっても「手の内を知り尽くした相手」であるのは間違いない。
それだけに、今季プレミアでの数々の名勝負を思い出しながら彼らの直接対決を見るのは興味深いところ。ラウンド16以降の動向を占う大一番であり、日本にも関係してくるビッグゲームという意味でも見逃せない。得点王争いで抜け出すのは、得点ランク2位につけるルカクか、それともトップに立つケインか。いずれにしても、プレミア看板アタッカーの彼らには、意地とプライドを激しくぶつけ合ってほしいものだ。
元川 悦子
もとかわえつこ1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。ワールドカップは94年アメリカ大会から4回連続で現地取材した。中村俊輔らシドニー世代も10年以上見続けている。そして最近は「日本代表ウォッチャー」として練習から試合まで欠かさず取材している。著書に「U-22」(小学館)「初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅」(NHK出版)ほか。
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