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サッカー フットサル コラム 2018年5月28日

リヴァプールのUCL制覇叶わず。致命的ミスを犯したかつての岡崎・武藤の同僚GKカリウスに求める今後の奮起。

元川悦子コラム by 元川 悦子
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今季欧州シーズンのラストを飾るUEFAチャンピオンズリーグ(UCL)ファイナルが26日(日本時間27日未明)、キエフのオリンピスキ・スタジアムで行われた。レアル・マドリードの3連覇か、あるいは進境著しいリヴァプールの13シーズンぶりのタイトル獲得か。その動向が大いに注目されていたが、レアル・マドリードがカリム・ベンゼマの先制弾とガレス・ベイルの2ゴールで、レアル・マドリードが3-1で勝利。73-74シーズン~75-76シーズンに3連覇したバイエルン・ミュンヘン以来の偉業を果たすことになった。

ユルゲン・クロップ監督率いるリヴァプールは前線からのハイプレスとタテへの推進力、ゴール前の爆発力を前面に押し出して、絶対王者を撃破しようと目論んでいた。圧倒的にボールを支配され、回されるのも想定内だったことだろう。前半は拮抗した展開が続いていたが、予期せぬアクシデントが起きる。

前半26分、今季プレミアリーグ得点王でUCLでも10ゴールを叩き出している最大の得点源、モハメド・サラーがセルヒオ・ラモスと競り合った際、腕を巻き込まれ、左肩から地面に転げ落ちた。一度はプレーに戻ったものの、結局31分にアダム・ララーナとの交代を強いられた。サラーは涙を流しながらピッチを後にしたが、負傷の度合いは深刻で、直近に迫ったロシアワールドカップにも影響しそうな雲行きだ。エースFWを失ったことがリヴァプールにも大きな影を落としたことは間違いない。

この後、彼らの前線は右にサディオ・マネ、中央にロベルト・フィルミーノ、左にララーナという並びになったが、サラーがいる時のような攻めの迫力が出ない。前半は0-0で折り返したものの、迎えた後半6分、守護神のロリス・カリウスが不用意なキックをベンゼマに当て、そのまま1点を献上してしまうという致命的なミスをしてしまう。直後の後半10分に右CKからマネが同点弾を奪い、再び試合を振り出しに戻したものの、攻守の要にアクシデントが起きる状況ではリヴァプールに勢いは出てこない。結局、クリスティアーノ・ロナウド、ベイル、イスコらタレント揃いの相手に寄り切られる格好になった。

自身初の大舞台で信じがたいミスをしたカリウスは涙を流しながらサポーターに謝罪。多くの人々が彼に対して温かい拍手を送った。しかしながら、地元メディアには批判的な論調もある様子。確かに彼の失敗がなければ、リヴァプールはもう少し粘りを見せ、UCL王者に近づけただろう。ここまでクロップ流のハイプレスとタテに速い攻めで勝ち上がってきただけに、カリウスがファイナルで汚点を作ってしまったことは悔やまれる。GKというのは往々にして戦犯にされがちな役割だが、24歳の守護神は勝負の厳しさを再認識したのではないだろうか。

そのカリウスだが、ドイツ人でありながらマンチェスター・シティのユースに所属していた経験があり、当時から能力を高く買われていた。2011年からマインツのセカンドチームでプレー。2012年にはトーマス・トゥヘル監督(来季PSG)が率いていたトップチームでデビューし、若干20歳だった13-14シーズンには正守護神の座をつかんだ。

その年から岡崎慎司(レスター)もマインツに移籍。シーズン15ゴールを挙げ、ブンデスリーガ1部・7位浮上の原動力になったのだが、GKカリウスの存在も非常に重要だった。彼がいなければ守りの安定感は得られなかったはずだ。 岡崎が去った2015年夏には武藤嘉紀が加入。同シーズンのマインツは6位躍進を果たしたが、それもカリウスやヨハネス・ガイス(セビージャ)、ユヌス・マリ(ヴォルフスブルク)ら若いタレントが輝いていたことが大きかった。カリウスと武藤の間にもお互いにリスペクトがあり、いい関係を築いていたのは確かだろう。

こうした実績を引っ提げ、クロップ監督率いるリヴァプールに赴き、2年がかりでUCLファイナルという高い領域に上り詰めた。夢に見た大舞台で今回はまさかの屈辱を味わうことになったが、彼はまだ若く、伸びしろがある。「GKは理不尽な役割。練習で100本止めても、試合で1つのミスを犯したら、それだけで批判される。それでも試合で完封できた時の達成感は凄まじいものがある」と川島永嗣(メス)も話していたが、そういう境地を目指して、このレアル戦のミスを糧にするしかないのだ。

長く育成畑で働いてきたクロップ監督もそういう方向へとカリウスを導いてくれるはず。リヴァプールで高度な経験値を積み上げていけば、いずれはドイツ代表入りも可能だろう。マヌエル・ノイヤー(バイエルン)、マルク・アンドレ・テア・シュテーゲン(バルセロナ)などドイツのGK陣はいずれも世界最高クラスだが、そこに割って入るべく、来季以降のカリウスには奮起を求めたい。ここからが本当の勝負である。

代替画像

元川 悦子

もとかわえつこ1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。ワールドカップは94年アメリカ大会から4回連続で現地取材した。中村俊輔らシドニー世代も10年以上見続けている。そして最近は「日本代表ウォッチャー」として練習から試合まで欠かさず取材している。著書に「U-22」(小学館)「初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅」(NHK出版)ほか。

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