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サッカー フットサル コラム 2018年5月9日

吉田麻也抜きの残留争い大一番でスウォンジーに勝利。1部生き残りを確実にしたサウサンプトン

元川悦子コラム by 元川 悦子
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5月5日のエバートン戦で吉田麻也の退場、終了間際の失点で勝ち点2を落とすというショッキングな結末を強いられたサウサンプトン。彼らは、プレミアリーグ残留の懸かる8日のスウォンジーとの直接対決を、守備の要不在で戦わなければならなくなった。 マーク・ヒューズ監督は前節まで吉田が務めていた3バック中央にジャック・スティーブンスを起用。右DFにヤン・ベドナレク、左DFにヴェズリー・フートを配する最終ラインで挑むことにした。3人のDFのうち、指揮官の信頼度が最も高いのはフート。

彼を真ん中に持ってくるというアイディアもあったはずだが、ヒューズ監督は吉田がいる時のバランスを崩したくなかったのだろう。代役・スティーブンスも吉田が出場機会から遠ざかっていた1~2月にかけてコンスタントにピッチに立っていた選手。十分な対人の強さと冷静な判断力を兼ね備えている。そこに期待しつつ、まずは無失点でゲームを乗り切るところからスタートしたかった。

もう後がないサウサンプトンは積極的な入りを見せた。相手もアンディ・キングのミドルシュートなどで攻めに出るが、30分には鋭いカウンターから決定機を作る。ボランチのピエール・エミル・ホイビュルクのスルーパスを受けたチャーリー・オースティンがDFラインの背後を抜け出して右足を一閃。これは入ったかと思われたが、惜しくもGKのウカシュ・ファビアンスキに防がれてしまう。後半立ち上がりにもオースティンがビッグチャンスを迎える。今季ここまで総得点36と決定力不足に悩んできたサウサンプトンだが、終盤に来てオースティンやデュサン・タディッチら攻撃陣にゴールの迫力が出てきた。それは非常に前向きな要素だった。

彼らの勢いが結実したのが、後半27分の先制点のシーンだ。タディッチの左CKをファーサイドから折り返し、オリオル・ロメウの頭を経由して、オースティンがシュート。それをGKが弾いたところに後半途中から入ったマノロ・ガッビアディーニが詰め、待望の1点をもぎ取った。流れの中からゴールを奪えないチームはリスタートの迫力を高めるしかないが、終盤戦のサウサンプトンはその傾向が強まり、得点力もアップしてきた。ヒューズ監督就任後は手堅く勝ち点を得る方向にチームが進化しているのは確か。指揮官交代が奏功したと言っていいだろう。

ここからは守備陣が奮闘する。吉田不在のディフェンス陣は体を張って相手の攻撃を必死に守る。相手の韓国代表MFキ・ソンヨンのFKチャンスもGKアレックス・マッカーシーの好セーブなどでゴールを許さない。この日のサウサンプトン守備陣の集中力は凄まじいものがあった。6分間のロスタイムも耐え抜いて、とうとうタイムアップの笛。敵地で絶対に勝たなければいけなかった残留争いのライバルから勝ち点3をゲットした。

これで彼らは勝ち点を36まで伸ばして16位に浮上。13日の最終戦は今季王者のマンチェスター・シティ相手で勝利は難しいが、同勝ち点の17位・ハダーズフィールドタウンとは得失点差で11、勝ち点3差のスウォンジーとは得失点差で9上回っていることから、ほぼ残留確定したと言っても過言ではない状況だ。出場停止だった吉田もスーツ姿でチームメートに飛びついて歓喜を爆発させていたが、チャンピオンシップという最悪の状況は免れたのはほぼ間違いないはずだ。

大迫勇也所属のケルンがドイツ・ブンデスリーガ2部降格を余儀なくされ、川島永嗣所属のメスもフランス2部落ちが決定してしまうなど、日本人欧州組を取り巻く状況は険しい。酒井高徳所属のハンブルガーSVも12日の最終節で史上初の2部降格が現実になってしまう可能性が高いだけに、吉田がそれを回避できたのは日本代表にとってもプラスだろう。

西野朗新監督が真っ先に足を運んだ通り、吉田というのは今の日本守備陣に不可欠な存在。エバートン戦でレッドカードを突き付けられるような不用意なミスもまだまだ多いが、やはり彼の世界トップクラスの経験値はロシアを戦ううえで欠かせない。これで2部落ちを強いられていたら、本人は来季の去就を考えながら、2回目の世界舞台に挑むことになっていた。そういう不安要素を取り除けたのは非常に大きい。

彼に残された今季公式戦はマンチェスターC戦のみ。ここでいい実戦感覚を取り戻して、代表に合流することは重要だ。ワールドカップ本番を視野に入れ、ガブリエル・ジェズスやレロイ・ザネ、ケヴィン・デブライネらをしっかりと封じることができれば、間違いなく自信につながる。願わくば、今季王者を零封し、勝ち点3を挙げて帰国してくれれば理想的。大一番を欠場した分、持てるエネルギーを存分に発揮してほしいものだ。

代替画像

元川 悦子

もとかわえつこ1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。ワールドカップは94年アメリカ大会から4回連続で現地取材した。中村俊輔らシドニー世代も10年以上見続けている。そして最近は「日本代表ウォッチャー」として練習から試合まで欠かさず取材している。著書に「U-22」(小学館)「初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅」(NHK出版)ほか。

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