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4月4日のリバプールとのUEFAチャンピオンズリーグ(UCL)準々決勝第1レグで0-3というまさかの大敗を喫し、続く7日のイングランド・プレミアリーグで宿敵マンチェスター・ユナイテッドに2-3で逆転負けしたマンチェスター・シティ。今季初の公式戦連敗を受け、チーム全体に動揺が走った。プレミア制覇はほぼ決まっているとはいえ、UCL優勝という長年の悲願を諦めるわけにはいかない。10日のリバプールとのUCL準々決勝第2レグは勝ちに行くしかなかった。
ホーム・エティハド・スタジアムでの1戦ということで、彼らは積極的に仕掛けて先手を取り、ゴールを積み重ね、相手を無失点に抑えたうえで3-0以上の結果を残すしかなかい。それは名将ジョゼップ・グアルディオラ監督にとっても極めて難しいテーマだった。指揮官が採った策は3-4-3という変則システムの採用。直近2戦は基本の4-3-3で戦っていたが、それで結果が出なかったことで布陣変更に踏み切ったのだろう。
開始早々の2分に鋭いカウンターからラヒム・スターリングのラストパスをガブリエル・ジェズスが幸先のいい先制点を挙げた時点では、奇跡の逆転劇も可能かと思われた。その後もボール支配率ではマンチェスターCが圧倒し、主導権を握り続けた。が、この優位な時間帯に追加点が奪えなかったのが後々に響くことになる。前半41分のレロイ・ザネのゴールがレフリーの誤審で取り消される不運もあり、前半は1-0で終了。このスコアはリバプールのユルゲン・クロップ監督にとっては想定内だったに違いない。
後半突入後もマンチェスターCが押し気味に試合を進めており、先に1点を取っていたら試合展開は分からなかったが、後半11分のモハメド・サラーの1点が致命傷になってしまう。サディオ・マネとサラーと破壊力あふれるコンビの攻めが結実し、リバプールがアウェーゴールを奪った瞬間、マンチェスターCの希望はついえたと言っても過言ではない。
グアルディオラ監督もセルヒオ・アグエロやイルカイ・ギュンドアンといった持ち駒を投入し、最後まで追いすがろうとはしたが、逆にリバプールのロベルト・フィルミーノに2点目を浴び、万事休す。まさかの公式戦3戦連続黒星で、UCLとプレミアのダブル制覇の夢は消えてしまった。
試合のデータを見ると、ボール支配率は64%対36%、シュート数は20本対5本(うち枠内3本対3本)と明らかに攻撃面で優位に立っていたのはマンチェスターCだった。が、リバプールのクロップ監督は持ち前の走力と堅守、鋭いカウンター攻撃で2度続けて相手を振り切った。
リバプールの走行距離は114.9㎞でマンチェスターCより4.3㎞上回り、ディフェンスのインターセプトの回数も28回と相手の8回を大きく上回った。まさにクロップ監督の目指すアグレッシブな守備とスピーディーな攻めがはまったからこそ、合計スコア5-1という結果で4強入りを果たすことができたのだ。
リバプールが実践しているデュエルとタテに速い攻めは、9日に解任された日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督が目指していたものに近いスタイルだったのではないだろうか。もちろんリバプールと日本代表のレベルを比較するのはリバプールに失礼なことを承知で書くが、彼らがそれを体現できるのは徹底的に跳ね返せるだけのデヤン・ロブレン、フィルジル・ファンダイクら強固な守備陣とサラー、マネ、ロベルト・フィルミーノのような頭抜けた個の力と推進力を誇るアタッカー陣がいるからだ。
「ハリル監督がアルジェリアで成功できたのは、アルジェリアの選手の身体能力が高かったから。監督の求めるデュエルの部分やタテに速いサッカーは日本よりはやりやすかったかもしれないですね」と長友佑都(ガラタサライ)もコメントしていたが、リバプールのような高度な完成形を築き上げるには、やはり圧倒的なタレントを揃え、彼らを鍛え上げてタフに走れるようにし、連動して戦えるように仕向けるしかないのだろう。それをキッチリとやり切ってしまうクロップ監督の手腕には改めて恐れ入るばかりだ。
いずれにしても、マンチェスターCはプレミア制覇に照準を絞るしかなくなった。王手をかけながら、ズルズルと優勝決定が先延ばしになるのは決していいことではない。ここまでの悪循環を断ち切るためにも、14日のトッテナム戦で何とかタイトルを手にし、指揮官も選手たちもサポーターもスッキリした状態になりたいところ。3試合で合計8失点という守備の課題をいち早く改善すること。地道な仕事ではあるが、そこから始めてほしいものである。
元川 悦子
もとかわえつこ1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。ワールドカップは94年アメリカ大会から4回連続で現地取材した。中村俊輔らシドニー世代も10年以上見続けている。そして最近は「日本代表ウォッチャー」として練習から試合まで欠かさず取材している。著書に「U-22」(小学館)「初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅」(NHK出版)ほか。
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