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マンチェスター・シティの4シーズンぶりのイングランド・プレミアリーグ制覇が決まるかもしれない大一番ということで、世界中から注目された7日のマンチェスター・ユナイテッドとのダービーマッチ。4日の敵地・アンフィールドでのUEFAチャンピオンズリーグ(UCL)・リバプール戦を0-3で落とした彼らが中2日でどう立て直してくるのか。そこは大いに注目された。
ジョゼップ・グアルディオラ監督はプレミア史上最速優勝を決めるべく、マンチェスターダービーを大得意にしているセルヒオ・アグエロら主力を投入してくると思われたが、アグエロのみならず、ガブリエル・ジェズス、ケヴィン・デブライネも温存。10日のUCL第2レグも視野に入れながら、メンバー編成を考えた様子。前線3枚は右からベルナルド・シウバ、ラヒム・スターリング、レロイ・サネという並びとなった。
アグエロとジェズス不在ということで、攻撃の迫力が低下する恐れもあったマンチェスターCだが、前半はライバルを圧倒した。ボール支配率は66%と相手を大きく上回り、ゴールもたびたび脅かす。前半25分にレロイ・サネの左CKからヴァンサン・コンパニが豪快なヘッドで先制点を挙げ、その5分後に相手守護神ダビド・デヘアのミスキックをサネが拾ったところから最終的にイルカイ・ギュンドアンが2点目を叩き出すという流れは、両者の勢いを考えると当然だったかもしれない。その後もマンチェスターCはスターリングやギュンドアンがたびたび決定機を迎え、前半だけで3~4点奪っていてもおかしくなかった。前半のシュート数はマンチェスターCの9本に対し、マンチェスターUはゼロ。このデータを見ても、いかに内容に差があったかよく分かる。だからこそ、この45分間で勝負を決めておきたかった。
逆に前半眠っていたマンチェスターUは相手のスキに助けられる格好となった。彼らもさすがに「このままではいけない」という危機感が募ったはず。後半に入ると別のチームのように迫力ある攻めを仕掛け始めた。
その火付け役となったのが、アレクシス・サンチェスとポール・ポグバ。冬の移籍期間にアーセナルから加わったサンチェスは新天地・マンチェスターUで思うようなプレーができずに苦しんでいた。ポグバの方も3月にジョゼ・モウリーニョ監督との確執が報じられるなどモヤモヤが続いていただろう。
その2人が後半8分の1点目、10分の2点目に絡む。前者はサンチェスの右からの折り返しをアンデル・エレーラが胸トラップした瞬間、ポグバがDFの背後に侵入。右足を振り抜いたゴールだった。後者はポグバから受けたボールをサンチェスが左サイドからロングクロスでゴール前へ送った。そこにポグバが入り込み、完全にフリー状態でヘッド。名手・エデルソンも微動だにできなかった。
そして試合をひっくり返したのが、後半24分のクリス・スモーリングの3点目。これもお膳立てしたのは、サンチェスだった。左サイドからの精度の高いFKをスモーリングが巧みなボレーで決めたこの一撃で、マンチェスターUは意地を見せる。3得点全てに絡んだサンチェスにしても、ここまでの不完全燃焼感を思い切り晴らす納得のパフォーマンスだったのではないだろうか。
まさかの逆転劇にアルディオラ監督も焦燥感を露わにし、温存していたデブライネ、ジェズスを慌てて投入。アグエロまで送り出して反撃に打って出たが、一度失った流れは取り戻せない。前半のお祭りムードから一転、エティハド・スタジアムはネガティブな空気に包まれることになった。これこそ、マンチェスターUが思い描いたものだったに違いない。同じ町のライバルに史上最速優勝を決められることだけは絶対に許されない…。そんな赤い悪魔の強い思いが最終的に3-2という結果につながったと言える。
マンチェスターCにしてみれば、リバプール、マンチェスターUに2戦連続黒星という予期せぬ現実を突き付けられた。公式戦連敗というのは今季初。しかも、2試合連続3失点というのは、グアルディオラ監督も想定外だったに違いない。今季プレミアのここまでの31試合の失点がわずか21という研ぎ澄まされた堅守が立て続けに崩されたショックは大きい。
この後も10日にUCL・リバプール戦、14日にプレミア・トッテナム戦と上位対決が続くだけに、いち早く守りの修正を図る必要がある。UCL準々決勝敗退、プレミア優勝も先送りという最悪のシナリオを回避するためにも、「しっかり守って、決めるべきところで決める」というマンチェスターC本来のスタイルを取り戻さなければならない。今季最大の正念場をどう乗り切るのか。名将・グアルディオラ監督のチームマネージメントと選手たちの底力が問われる。
元川 悦子
もとかわえつこ1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。ワールドカップは94年アメリカ大会から4回連続で現地取材した。中村俊輔らシドニー世代も10年以上見続けている。そして最近は「日本代表ウォッチャー」として練習から試合まで欠かさず取材している。著書に「U-22」(小学館)「初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅」(NHK出版)ほか。
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