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インターナショナルウイークのため、18日の公式戦で一時中断となるイングランド・プレミアリーグ。イングランド代表は23日のオランダ、27日にイタリアとのフレンドリーマッチにのぞむが、エースFWハリー・ケインはケガのため招集されていない。
彼に代わる得点源としては、マンチェスター・ユナイテッドで最近好調のマーカス・ラッシュフォード、レスターを力強くけん引しているジェイミー・バーディーらがいる。今季プレミアリーグでは得点わずか3にとどまっているダニー・ウェルベック(アーセナル)もFWに名を連ねていて、彼らがどうケインの穴を埋めるかが、1つの注目点かもしれない。
一方、23日のマリ・27日のウクライナ2連戦(リエージュ)に挑む日本代表だが、プレミア組の岡崎慎司(レスター)と吉田麻也(サウサンプトン)は揃って招集が見送られた。吉田は18日のFAカップ準決勝・ヴィガン・アスレチック戦でベンチ入りし、ケガから回復した様子だが、「今回はムリをさせない」というヴァイッド・ハリルホジッチ監督の判断があったのだろう。
確かにロシアワールドカップ本番でも彼が不在という状況は起こり得る。その場合、誰をセンターバックの軸に据えるかは非常に重要なテーマだ。Jリーグ組の槙野智章(浦和)、森重真人(FC東京)、昌子源、植田直通(ともに鹿島)の4人はまだシーズン序盤ということもありコンディションがベストではない。そういう中でも、守り切れるところを見せてもらわないと、吉田自身も不安を覚えるだろう。
岡崎に関しては「今回呼んだFW3人(大迫勇也=ケルン、杉本健勇=C大阪、小林悠=川崎)は岡崎とは違う質を持っている。より得点を取れる。彼がレスターでやっている役割は代表が全く違うというのも選考理由の1つだ」とハリルホジッチ監督が発言していて、彼を代表1トップに相応しい存在と見ていないことが伺える。確かにレスター移籍後の岡崎はヴァーディーとのコンビで輝きを放っていて、最前線でターゲットマンになるような仕事はしていない。
そこが指揮官の懸念要素のようだが、こればかりは戦術や好みの問題だけにどうしようもない。ロシア本大会に向けて2トップのオプションを重視するのなら、岡崎再浮上の目が出てくる可能性もあるが、現状のままだと難しそうだ。
日本が対峙するマリとウクライナの両国は、ロシア本大会出場権こそ逃しているものの、「簡単に勝てる相手じゃない」と川島永嗣(メス)が言うほど侮れない相手。初戦のマリで注目されるのは、イングランドでプレーしているDFモラ・ワゲ(ワトフォード)とイングランド・チャンピオンシップのハル・シティに所属するヌハ・ディコだろう。ワゲの方は191㎝の長身を誇る選手で、マリ代表の最終ラインの一角を占める選手。今季プレミアリーグでは6試合出場1得点にとどまっているが、傑出した高さと身体能力はやはり目を見張るものがある。こういうDFを日本攻撃陣がどういなすか気になるところ。
ディコの方はフランス生まれの175㎝のアタッカー。ストラスブールを皮切りに、ウィガン、ブラックプール、ヴォルヴァ―ハンプトンなどで実績を積み上げ、ヴォルヴァーハンプトン時代の14-15シーズン・チャンピオンシップでは37試合出場14ゴールという数字を残している。
本大会の相手・セネガルには爆発的な推進力を誇るサディオ・マネ(リバプール)のような選手がいるが、彼も同様のタイプと見られるだけに、今回の対戦機会は貴重だ。彼らマリ攻撃陣を確実にストップしてこそ、日本代表守備陣は自信を深められる。そこも1つの見どころと言っていい。
ウクライナには、19歳でマンチェスター・シティに引き抜かれたオレクサンドル・ジンチェンコがいる。ウクライナと言えば、イェフゲン・コノプリャンカ(シャルケ)やアンドリー・ヤルモレンコ(ドルトムント)が有名だが、彼のポテンシャルの高さは折り紙付き。18歳だった2016年5月29日のルーマニア戦で代表初ゴールを挙げ、アンドリー・シェフチェンコ(現代表監督)が持っていた最年少得点記録の19歳を更新したというから、どれだけ大きな期待を背負っているかが分かるだろう。
そのジンチェンコだが、快進撃を見せるマンチェスターCではなかなか活躍の場を得られず苦しんでいる。今季はここまで7試合出場1ゴール。出場時間はわずか477分にとどまっている。その分、代表戦で持てる力を存分にぶつけてくるはずだ。近未来のウクライナ代表を背負うであろう非凡なアタッカーの一挙手一投足をぜひ見てみたいものだ。
こういった隠れたイングランド所属選手を間近で見られるのも、代表戦の醍醐味。日本選手はもちろんのこと、対戦相手のスター公候補に目を向けることで、より試合を深く味わえるはず。これまでとは少し異なる視点を持ってゲームを見てみたい。
元川 悦子
もとかわえつこ1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。ワールドカップは94年アメリカ大会から4回連続で現地取材した。中村俊輔らシドニー世代も10年以上見続けている。そして最近は「日本代表ウォッチャー」として練習から試合まで欠かさず取材している。著書に「U-22」(小学館)「初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅」(NHK出版)ほか。
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