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このブログについて

プロフィール写真【栗村修】
一般財団法人日本自転車普及協会
1971年神奈川県生まれ
中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。豊富な経験を生かしたユニークな解説で多くの人たちをロードレースの世界に引き込む。現在は国内最大規模のステージレース「ツアー・オブ・ジャパン」の組織委員会委員長としてレース運営の仕事に就いている。 「栗村修の"輪"生相談」では、日頃のライドのお悩みからトレーニング方法、メンタル面の相談など、サイクリストからの様々な相談にお答えしております。栗村修に聞いてみたい、相談してみたいことを募集中。相談の投稿はこちらから。

2024年08月21日

【輪生相談】練習内容で悩んでいます。練習する時はどこを意識した方がいいのでしょうか?1週間に何キロ走ったらいいのでしょうか?

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現在中学2年生です。今、練習内容で悩んでいます。練習は長く走ることを意識した方がいいのでしょうか?それとも短時間高強度を意識した方がいいのでしょうか?具体的に1週間に何キロくらい距離を走ったらいいのでしょうか?

(男性 高校生以下)

■栗村さんからの回答

栗村さん

定期的にいただくご質問ですが、非常に大切ですので、今回は少し視点を変えて日常的な例を挙げつつお答えしましょう。

今回のご質問を「買い物」に例えると、いきなり「自転車と徒歩、どちらで買い物に行くのがいいですか?」「予算はいくらくらいがいいですか?」と質問された感じになります。肝心の「何のために」「何が買いたい」という目的が抜け落ちてしまっているんですね。

どの手段が適切かは、目的によって変わります。したがって、まずは目的を決めないと、何がいい手段かが判断できないのです。

もう少し細かく考えてみましょう。質問者さんが街へ買い物に行こうとしている時は、すでに「①目的」→「②時間」→「③手段」という3つの要素を順番に考えていると思います。例えば、今度のデートのために、どんなスニーカーを、いつまでに、どのお店にどうやって買いに行くか、というように。

まず「①目的」について考えてみましょう。これは、例えば「女の子にモテたい」から「おしゃれなスニーカーが欲しい」とか「流行りのジーンズが欲しい」といったように、我々は普段何のために何を手に入れたいかをある程度イメージして生活しています。しかし、スポーツや趣味の世界になると、なぜか目的と手段がすり替わってしまうケースが少なくありません。「将来、ツール・ド・フランスに勝ちたいから、21歳までにワールドチーム入りする」という様に、目的がはっきりしていると、それに向かってやることが明確になり効果的に進むことができます。もちろん、目的というのはある程度やってみて変更することも可能です。

次に「②時間」について。これは、いつまでに目的を達成したいかということです。例えば、「明日スニーカーを手に入れたい」、「夏が終わるまでに欲しい」、あるいは「高校生になるまでに揃えたい」といった具合に、具体的な期限を設けることが重要です。時間の設定がないと、目的を達成するモチベーションが下がってしまいがちだからです。自転車のトレーニングでも、例えば次の大会までにスキルを向上させるといった具体的な期限を設けることで、効率的に取り組むことができるでしょう。

最後に「③手段」について考えます。買い物に例えると、商品を買うためのお金が必要であったり、どの街のどのお店に行くのかを決めたりすることが該当します。また、お店に行く手段として公共交通機関を利用する場合には、乗り換えを調べる必要がありますね。同様に、目標を達成するためには適切な方法を選ぶことが大切です。たとえば、自転車のスキルを高めるためには、どのようなトレーニングやレースに参加するかを決める必要があります。

今回いただいたのは主に最後の「③手段」についてのご質問で、「①目的」や「②時間」が書かれていないことが気になりました。

誤解しないでいただきたいのは、決して質問の内容が間違っているというわけではなく、常に「目的」、「時間」、「手段」の3つを意識して取り組んでほしいということです。これらの要素は厳密である必要はありませんし、状況に応じて変更しても構いません。しかし、常に頭の中でこの3つを組み立てて考える習慣をつけることで、今とるべき行動がより明確になってくるはずです。

さて、具体的なアドバイスに移ります。

まず、ご質問いただいた「長く走る=LSD」と「短時間高強度」のトレーニング、それぞれの特徴をお伝えいたしますね。

前者は有酸素運動の基礎能力を高め、さらに効率的なペダリングを含めた自転車に順応させてくれます。しかし、レースで必要とされる強度に到達しないことからこれだけでは不十分です。

一方、後者はレース強度に達することができるので、より実戦的であり、今のトレーニングの主流となっています。しかし、短時間高強度の練習をやり過ぎると怪我をしたり、オーバートレーニングに陥るリスクが上がってしまいます。それに、ガムシャラなフォームでモガいているだけでは効率的なペダリングやフォームを身に着けることができません。中学生であれば、週1〜2回LSD、週1〜2回短時間高強度練習を取り入れるだけでも十分だと思います(質問者さんの目的と時間がわからないので一般論でしかありませんが)。

その上で、まず、自転車乗車スキルを高めるために、オフロード系のレースに楽しく参加することをお勧めします。テクニックや高強度のトレーニングが可能となり、スキルアップできるからです。また、ロードバイクで「ジムカーナ」的な走りに挑戦することも効きます。テクニック向上だけでなく、体幹も鍛えられますしね。

UCIシクロクロス_ワールドカップ.JPGオフロード系のレースに参加することもお勧め

次に、自転車に乗る前提として基礎体力を高めてください。陸上競技の中距離走や水泳、正しいフォームでのウェイトトレーニングなどがいいでしょう。こういった運動を取り入れることで、基礎体力をしっかりとつけることができ、自転車に乗る際のパフォーマンスがアップします。

さらに、週末には経験豊富な大人と一緒にロングライドに挑戦することもお勧めです。例えば、100kmくらいの距離にチャレンジすることで、エンデュランス能力や安全に走るためのスキルやノウハウを身に付けることができます。長く走るべきか、短時間高強度のトレーニングをすべきかと迷うこともあると思いますが、バランスよく取り組むことが大切です。どちらかに偏るのではなく、両方を意識しながら取り組むことで、総合的なレベルアップが期待できます。

1週間の走行距離については気にする必要はないでしょう。走行距離は「目的」ではなくて「結果」でしかないためです。重要なのは距離よりも、「時間」と「内容」になります。質を重視し、効率的にレベルを向上させることを目指してください。中学生であれば、LSDや高強度練習合わせて1週間に5〜10時間ほど自転車に乗っていれば十分ではないでしょうか。

このように、「目的」、「時間」、「手段」を意識して取り組むことで、効果的なトレーニングに辿り着くことができます。質問者さんも、これらの要素を常に頭の中で意識して、安全に自転車トレーニングに励んでみてください。

文:栗村 修・佐藤 喬

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