輪生相談

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このブログについて

プロフィール写真【栗村修】
一般財団法人日本自転車普及協会
1971年神奈川県生まれ
中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。豊富な経験を生かしたユニークな解説で多くの人たちをロードレースの世界に引き込む。現在は国内最大規模のステージレース「ツアー・オブ・ジャパン」の組織委員会委員長としてレース運営の仕事に就いている。 「栗村修の"輪"生相談」では、日頃のライドのお悩みからトレーニング方法、メンタル面の相談など、サイクリストからの様々な相談にお答えしております。栗村修に聞いてみたい、相談してみたいことを募集中。相談の投稿はこちらから。

2024年02月21日

【輪生相談】生活の変化で自転車に触れられる時間が減りました。乗れない期間が続くときの心の持ち方や過ごし方についてアドバイスがほしいです。

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輪生相談、いつも楽しく拝見させて頂いております。現在二児の父をしている会社員で、平日は日付が変わるくらいまで仕事、休日は家庭のために時間を充てている日々を送っています。結婚や転勤、子どもが生まれたことで生活が変わり、自転車に触れられる時間がかなり減りました。今の生活は、忙しいながらも非常に充実しているのですが、あれだけ好きだった自転車に乗る時間が減り、当初はそのことに対し複雑な気持ちを抱いていたものの最近はその感情に慣れてきてしまっている自分がいます。いつか落ち着いたらまた...とは思いつつも、このまま自転車への興味が無くなってしまうのではないかと考えてしまいます。自転車に乗れない期間が続くときの心の持ち方や過ごし方について、アドバイス等頂けると幸いです。

(男性 会社員)

■栗村さんからの回答

栗村さん

身も蓋もないようですが、今の質問者さんは、無理に自転車について考えなくていいと思います。今が「非常に充実している」のであれば、そこに自転車を付け加える必要はありません。人生を豊かにするために自転車があるのであって、その逆ではないからです。

一日の、あるいは人生の時間は限られています。その貴重な時間は、優先順位の高いものにこそ費やすべきであって、余裕のない状態で趣味に時間を割く必要はないと思いますよ。おそらくマジメな「犬型人間」である質問者さんのような方は、えてしてそういう疑問を無理に飲み込んで「~しなければいけない」という思考に向かいがちですが、その先には燃えつきが待っている恐れがあります。

26365047_m.jpg自転車ナビマークやナビラインの設置が増え以前より車道を走りやすくなった

質問者さんは、もしかすると、一度は心から愛した自転車という存在を忘れてしまうことを恐れているのかもしれません。でもその心配はいりません。自転車とたくさん、楽しい時間を過ごした質問者さんの心には、自転車のポジティブな記憶ががっつりと刻まれており、余裕ができればいつか必ず戻ってくるからです。

引退したプロ選手でも、ほとんど自転車に乗らなくなる人は少なくありません。とくに僕のように、「トレーニングのためだけに乗っていた」選手ほどそうです。そう、あまりおおっぴらに言うことはしませんでしたが、引退後の僕はほとんど自転車に乗っていなかったんですよ。年に数回、イベントやロケなどで乗るくらいでした。自転車の仕事をしているのに良くないなあ、と思いつつも、忙しさを理由にそんな日が続いてしまっていたんですね。

しかし人生は長いですから、ふともう一度乗るきっかけがやってきます。それも特にドラマチックなものでもなく、本当に「ふと」なんですね。

僕の場合、ある時ふと「自転車通勤してみよう」と思い立ったのがきっかけでした。もちろんロードバイクが進化していることや道路整備が進んでいることはよく知っていたのですが、現代の道路環境下で本格的な自転車通勤をしたことがなく、「"じてんしゃおじさん"なのに自転車通勤をしたことがないのはまずいな」と思ったんですね。

こうして僕は川崎の自宅から職場の目黒までの25kmくらいを走ってみたんですが、現役だったころとは全然違うんですよ。あらゆるものが。

僕が自転車に距離を置いてしまっていた理由の一つは、車道での自動車のストレスだったのですが、まずそれが激減している。もちろん今も自転車をめぐっては色々な問題があるのはよく承知していますが、僕が選手だった80、90年代とは天と地ほどの差があります。煽ってくるドライバーも減ったし、道には自転車が走るための矢羽根マークがあるし。

ロードバイクそのものも大きく進化しています。僕が乗っているのはちょっと前の、完成車価格が35万円のモデルで、コンポーネントは機械式のアルテグラです。だからミドルグレードなのですが、十分速いし、タイヤは太くて(28C)快適だし、ブレーキはディスクなのですごくよく効くしといいことづくめです。ウェアも飛躍的に進歩していて寒い冬でも超快適ですし、細かいところで言うと、ライトの性能がすごく向上していることにも感動しましたね。軽い・明るい・長持ちすると、重い単一電池のパックをボトルケージに刺して電源を供給していたころの自転車用ライトとは別物です。

それで僕は、また自転車に戻ってきました。選手としてではなく、通勤ライドを楽しむおじさんとしてですが。いやあ、自転車っていいものなんですね。

結局のところ、気分や環境などが自然と揃った結果、乗る気になったわけで、「自転車通勤への決意」や「ロードバイクの進化」などは後付けの理由に過ぎないと思っています。長年、心の中で「いつかまた乗りたいなあ」とは思っていましたが、その時は突然やってきたんです。

なお、僕が自転車に乗りたくなかったのは、現役時代の脚力と比べて虚しさを感じたくなかったこともあるのですが、これも、乗り始めて数ヶ月経つとはっきりと進化を感じられ、あっさりとリセットされてしまいました。

人生の時間は有限ですから、今は今しかできないことに集中してください。でも、僕がそうだった様に、いつか必ず戻ってきますから、その時はまた一緒に楽しみましょう。

文:栗村 修・佐藤 喬

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