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このブログについて
【栗村修】
一般財団法人日本自転車普及協会
1971年神奈川県生まれ
中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。豊富な経験を生かしたユニークな解説で多くの人たちをロードレースの世界に引き込む。現在は国内最大規模のステージレース「ツアー・オブ・ジャパン」の組織委員会委員長としてレース運営の仕事に就いている。
「栗村修の"輪"生相談」では、日頃のライドのお悩みからトレーニング方法、メンタル面の相談など、サイクリストからの様々な相談にお答えしております。栗村修に聞いてみたい、相談してみたいことを募集中。相談の投稿はこちらから。
【輪生相談】ステージレースでは、好調な選手でも突然、失速する「バッドデイ」のことをよく聞きますが、これはどうして起きるのでしょうか?
ステージレースでは、好調な選手でも突然、失速する「バッドデイ」のことをよく聞きますが、これはどうして起きるのでしょうか? 生理的にどのようなことが起きているのか、解明できているのでしょうか?
(自営業 男性)
■栗村さんからの回答
バッドデイについての科学的なエビデンスを持っているわけではないのですが、選手と監督を合計30年近くやってきた身としては、バッドデイはお馴染みの現象でもあります。ですので、ちょっと古い感覚かもしれませんが、現場からの経験的なお話をしましょう。
選手ではない皆さんも、よーく自分自身の心身を観察すると、とくに理由がないのに「なんとなく調子が悪いなあ」と感じる日があると思います。風邪をひいたわけでもなく、変なものを食べたわけでもない。普通の日常生活を送るにあたって支障はないんだけれど、なんか体調がよくない......というレベルの不調です。
そういった現象の多くは、数日経ってしまえば原因不明のまま忘れ去られてしまうものが殆どだと思います。ちょっとしたウイルスや細菌に感染したのかもしれませんし、気圧の変化のせいかもしれません。あるいは、最近食べたもののせいで腸内細菌叢のバランスが狂ってしまったのかもしれません。いずれにせよ、人間は複雑な存在ですから、色々な要因による不調がありえるわけです。
無数の不確定要素の中で戦い続けるプロ選手たち
それは選手も同じなのですが、一つ重大な違いとして、彼らは限界ギリギリのレベルで競い合っており、ほんの数パーセントの違いによって成果(順位)が大きく変わってしまう環境下で仕事をしている点が挙げられます。だから、上述のようなちょっとした変化が、大きな差となって現れるのではないでしょうか。それがバッドデイの正体ではないかと僕は考えています。
もう一つ付け加えておきたいのは、選手たちは、普通の人々よりも激しい環境の変化にさらされている点です。ステージレースでは毎日のようにホテルを替えますし、その部屋に前日に泊まった人が持っていたウイルスや細菌が残っている可能性もあるかもしれません。食事も、いつも望み通りのものが食べられるとは限りません。
レース中には雨も降れば、落車もあります。前のバイクが跳ね上げた泥が口に入ることだってあるでしょう。泥がついたボトルからドリンクを飲まなければいけないこともしばしばです。もちろん、体力的に常に限界付近をさまよっているのは言うまでもありません。ストレスも大きいですよね。
そんな生活を送っている選手たちですから、一時的に数パーセントのパフォーマンスダウン、すなわちバッドデイに陥っても不思議ではないと思います。むしろ、3週間安定した体調を維持するほうが難しいかもしれません。
というわけで、僕の感覚としては、バッドデイはお伝えしたような目に見えない様々な要因が重なり合って引き起こされる「わずか数パーセントのパフォーマンスダウン」なのだと思います。ご質問にある生理的なメカニズムは、かなり多様なのではないでしょうか。
文:栗村 修・佐藤 喬