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このブログについて

プロフィール写真【栗村修】
一般財団法人日本自転車普及協会
1971年神奈川県生まれ
中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。豊富な経験を生かしたユニークな解説で多くの人たちをロードレースの世界に引き込む。現在は国内最大規模のステージレース「ツアー・オブ・ジャパン」の組織委員会委員長としてレース運営の仕事に就いている。 「栗村修の"輪"生相談」では、日頃のライドのお悩みからトレーニング方法、メンタル面の相談など、サイクリストからの様々な相談にお答えしております。栗村修に聞いてみたい、相談してみたいことを募集中。相談の投稿はこちらから。

2023年04月03日

【輪生相談】楽しくロードバイクに乗っていますが、「自分より上の人」が可視化されやすく、及び腰になることがあります

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自己満足にまつわる質問です。ゆるポタくらいの趣味でロードバイクに乗っている者です。ゆるポタとはいいつつも、ポジショニングの研究、ちょっとした筋トレなど、身体を動かすことが純粋に楽しくて満足しています。ただ、近年はSNSなどで「自分より上の人」が可視化されやすく、「(レースを走るわけでもないのに)こんなことして意味あるのか......自分より速い人はいるし......」と及び腰になることもあります。もちろん、「意味」を追い求めているのではなく、「楽しい」からやっていることではありますが。ここで質問なのですが、「いい諦め方」や「自己満足の方法」などにまつわるマインドセットなどありますでしょうか。諦めるというのはかならずしも悪いことではなく、自身のできることをしっかり理解することだと思っているのですが、栗村さんはご自身の様々な転機をどう受け止めましたか?

(会社員 男性)

■栗村さんからの回答

栗村さん

趣味とはなんぞや、という問題に行きつきそうですね。

安全で快適な現代では、人々はドーパミン(脳内物質)を放出させるために、趣味に非日常的なスリルや競争を楽しむようになりました。旅行、映画、ゲーム......。趣味は、いわばドーパミン獲得競争です。ロードバイクもそうですね。

しかし、どういう状況になればドーパミンがドバドバ放出されるかには個人差があります。競争好きな人もいれば、一人で追い込むのが好きな人もいるでしょう。のんびり走っているときが一番幸せ、という人も多そうです。

気を付けなければいけないのは、この個人差を意識しないと、楽しいはずの趣味も苦行になってしまうことです。本当はのんびり走りたい人が、周囲に流されてキツいトレーニングばかりやっていても、幸せにはなれません。逆もしかりですね。

質問者さんは、ご自身がどういうタイプなのかを認識することが大事かなと思います。つまり、どういう形でロードバイクに乗っているのが一番幸せかということです。他人との競争でしょうか? 一人で走ることでしょうか。ヒルクライムのタイム短縮に喜びを感じるなど「自分との競争」を楽しむタイプもいますね。

質問者さんは「諦めるというのは......自身のできることをしっかり理解すること」と書かれていますが、それに近いかもしれません。競争タイプではない人が競争から降りるのは、諦めというよりも、ご自分を理解したからですよね。ポジティブな諦め(選択)です。

あるいは、他人との競争や比較に喜びを感じるタイプだとしても、すべての他人に勝って世界一になれるわけでもありませんから、いずれ頭打ちになります。つまり、持続性には限界があるわけです。

持続性のない楽しみ方に全力を投入するのは、いいやり方とは言えません。どの程度まで楽しさが続きそうか、見極めたほうがよさそうです。

Pauline-Ballet.jpg究極のドーパミン獲得のために北の地獄に挑む選手たちと興奮する観客たち

質問者さんは楽しみを自己完結できるタイプです。他人がいないとモチベーションが高まらないタイプに比べて、本来、趣味が長続きするはずなんです。ですので、質問者さんにとっては「害」でしかない他人との比較はどんどん排除していくべきでしょう。

世の中には、争うことや勝つこと、比べることなどで快楽を得るタイプの人たちがたくさんいます。特にSNS上にはそういった人たちの「マウント」が溢れています。良い悪いではなく、自分がどの種類なのかを見極めて、情報との関わり方を工夫してみてください。

ロードバイクは楽しみ方が多様なだけに、ご自身に合った楽しみ方と、やっていることが食い違ってしまうケースもたまに見られるんですね。なので、ご自身のタイプを知ることが大切になる趣味だと思います。その過程で諦めることが必要になったとしても、それはそれでいいのではないでしょうか。その先には、本当の自己満足が、つまり幸せが待っているわけですから。


文:栗村 修・佐藤 喬

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