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このブログについて

プロフィール写真【栗村修】
一般財団法人日本自転車普及協会
1971年神奈川県生まれ
中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。豊富な経験を生かしたユニークな解説で多くの人たちをロードレースの世界に引き込む。現在は国内最大規模のステージレース「ツアー・オブ・ジャパン」の組織委員会委員長としてレース運営の仕事に就いている。 「栗村修の"輪"生相談」では、日頃のライドのお悩みからトレーニング方法、メンタル面の相談など、サイクリストからの様々な相談にお答えしております。栗村修に聞いてみたい、相談してみたいことを募集中。相談の投稿はこちらから。

2022年08月17日

【輪生相談】婚約者がロードバイクガチ勢です。練習や大会の前後に妻がやってくれたら助かることって何でしょうか?

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婚約者がヒルクライムの大会に出るくらいのそこそこなロードバイクガチ勢です。練習や大会の前後に妻がやってくれたら助かることって何でしょうか?

(会社員 女性)

■栗村さんからの回答

栗村さん

いいですね。経済面や時間面などでご家族の理解を得ることに苦労している一部のサイクリストにとっては羨ましいと感じる質問内容なのではないでしょうか。世に言う「リア充」というやつですね。婚約者さんも喜ぶでしょう。

ただし、僕も監督という立場で10年以上選手のフォローをしてきたのでよくわかるのですが、求めるものは人によって異なります。今回は話をわかりやすくするために「S型選手」「M型選手」に分けて考えていきましょう。なんの略称かは、僕にもよくわかりません。

まず「S型選手」。表面上は強気で、オラオラなタイプです。しかし実は、表の顔の裏に打たれ弱い素顔を隠しているのが「S型選手」の特徴です。いえ、素顔をマスクするための強気なのかもしれません。

ですので、大変お手数ですが、基本は一歩下がり、彼を立ててあげてください。基本は黙ってついていき、タイミングをみて「あなたはすごい」「かっこいい」などといった言葉を、聞こえるか聞こえないかくらいの声量で口にしてみてください。そういう言動によって自信を深めるタイプです。

YouTubeでスポーツマッサージのやり方を学んで練習後の疲れを癒してあげたり、さりげなく目に入る場所にスポーツ栄養学の本を置いて食事内容を変えてみたり。また、練習前にボトルを準備したり、着替え一式を揃えるなど、専門性の高くないルーティーンを先回りしてフォローすると良いでしょう。ポイントは黙ってサポートすること。そういうサポートに対して「期待に応えたい」とモチベーションが高まるはずです。

しかしレースは水物ですから、狙い通りの結果が出るとは限りません。もしレースで成績が振るわなかったら、傷ついた自尊心を回復させる言動を心がけてあげてください。次のレースまでのモチベーションを維持させるためです。

妻の支えのもと、ツール総合優勝を果たしたヴィンゲゴー

ここでも基本は、黙って話を聞くことです。間違っても「なんであそこで踏めなかったの?普段強気なのにメンタル弱過ぎじゃない?」みたいな心の声は絶対に漏らさないようにしてください。一瞬でガラスのプライドが崩壊し、Zwift上からもしばらく姿を消してしまうでしょう。バイクをネットオークションに出してしまうかもしれません。

こういうタイプの選手は、一見、大物風なんですが、意外と繊細という難しいタイプです。上手く転がすとすごい能力を発揮するので、質問者さんの役割は重要です。そうか、「S」は「繊細」のSなんですね。

さて、一方の「M型フィアンセ」の場合です。

普段は「どうぞどうぞ」と受け身ですが、実はギャインギャインに打たれ強いのが「M型選手」の特徴です。ちょうどS型選手の反対です。見かけ以上に耐久性が高いわけです。

なので、そういう人は常にけっこうな伸びしろを秘めています。打たれることでエネルギーが高まる傾向にあるため、むしろ適切に愛のムチをふるってあげることで伸びていったりもします。

したがって、M型の選手に対しては、「あなたは十分やっているけど、まだできるよね」「もっとタイムを伸ばせるよね」という感じで、自主性を尊重しつつよりハードなトレーニングを求めてみてください。「よね」で常に課題を与えることが重要です。

YouTubeでセルフマッサージのやり方を学ばせたり、さりげなく目に入る場所にスポーツ栄養学の本を置いて独学させたり。また、「◯◯さんの旦那さんは△△峠でベストタイムを出したみたいよ。きっといろいろ勉強しながらやってるんだよね」とライバルの存在をちらつかせることも効果的だったりします。

レースでいい成績を出しても、あまりほめ過ぎず、改善点などを指摘するといいでしょう。いい成績が出なかった場合も、「踏めなかった理由はわかるよね」という感じで、適度に突き放します。すると彼は、嫌がるそぶりを見せつつも、直ちにZwiftを起動することでしょう。

注意する点としては、「よね」を多用し過ぎると、体が壊れるまで自分を追い込んでしまうリスクがあることです。本人にとっても家族にとっても「健康」が最も大切であるということを常日頃から共有していきましょう。玄関に「健康第一、安全第一、乗鞍(?)第一位」という家訓を貼ってみるのはどうでしょうか。

つまり、M型選手の「M」は、「もっと、もっと」のMなんですね。なるほど......。

まあ、きれいに2タイプに分かれるかはともかく、性格がトレーニングへのモチベーション、ひいてはレースの成績を左右するのがこのスポーツの面白いところです。もしプロのレースをご覧になるなら、ぜひ、お気に入りの選手がS型なのかM型なのかに着目してレースを見ると面白いかもしれません。フィアンセさんの能力を引き出すヒントも見つかるかもしれませんよ。

文:栗村 修・佐藤 喬

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