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【ジロ・デ・イタリア2023 レースレポート:第8ステージ】“アイリッシュ・ヤングスター”ベン・ヒーリーが狙って決めた50km独走劇 ログラのアタックでマリア・ローザ争いも形勢が揺らぐ
サイクルロードレースレポート by 福光 俊介「頂上まであと700mのところで踏み込みすぎてしまったんだ。プリモシュ(ログリッチ)に追いつけると思った瞬間に勾配の最も厳しいところを迎えてしまい、それ以上は攻められなかった。トーマスは彼自身のペースで上り続けていたね。経験豊富なライダーはやっぱりうまく対処する。今日は勉強になったよ」(レムコ・エヴェネプール)
フィニッシュ後に握手をかわすログリッチとトーマス
下りでまとまったログリッチ、ゲイガンハート、トーマスの3人は利害を一致させ協調しながらフィニッシュまでを急いだ。結果的にレムコやジョアン・アルメイダ(UAEチームエミレーツ)らのグループに対して14秒、レックネスンには34秒先着。フィニッシュ直後には、ログリッチとトーマスが手を取り合って奇襲成功を称え合う様子も見られた。
「調子は良かった。毎ステージ多くのプランを持って走っているし、突発的な出来事に対応するための準備も必要だ。めぐってきたチャンスを生かさない手はない。その意味では今日は大成功。レースを通して集中できていたし、結果にも満足しているよ」(プリモシュ・ログリッチ)
これにより、個人総合上位陣は順位がシャッフル。レックネスンはかろうじてマリア・ローザを守ったが、レムコとの総合タイム差は8秒に縮まった。38秒差の3位にログリッチが上がり、アルメイダが40秒差の4位。冷静な走りが光ったトーマスが52秒差の5位、ゲイガンハートも56秒差の6位に上げてきた。
そんな彼らの戦いは、第9ステージに設けられる35kmの個人タイムトライアルで一層加速する。ほぼオールフラットで、上位を押さえるには平均時速55kmを超すスピードで走り切る必要性が指摘されている。これを終えると1回目の休息日。つまりは、ここでのタイム差をもって大会第2週へ向かうことを意味する。
第1ステージの個人TTでは、レムコが総合争いのライバルに対して1kmあたりおおよそ2秒分の差をつけて勝っている。
「今度は1分は差をつけて勝ちたい。僕に合ったタイムトライアルであることは間違いないからね」(エヴェネプール)
「平坦のタイムトライアルは僕の脚にマッチするはず。きっと良い走りができるよ」(ログリッチ)
マリア・ローザ争いの趨勢が見えてくるであろう、大事な1日を迎える。
文:福光 俊介
福光 俊介
ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う
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