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【Cycle*2023 ツアー・ダウンアンダー:レビュー】地元オーストラリアのジェイ・ヴァインがプロ人生初のステージレース総合優勝
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか第5ステージ勝者はサイモン・イェーツ
こんなヴァインの加速に反応できたのはイェーツただ一人だけ。少し遅れて、単独で、ペリョ・ビルバオも追いついてきた。最終的な総合トップ3の直接対決だった。
「I love it when a plan comes together(作戦がうまく行くのは最高)」
区間優勝こそビルバオに奪われたが、ステージの終わりにリーダージャージを身にまとったヴァインは、インタビューで、特攻野郎Aチームの「ハンニバル」ことジョン・スミスの決め台詞を口にしている。
「チームなしでは僕は成し遂げられなかっただろう。このリーダージャージはすべてチームメートのおかげ。このステージで僕がすべきことは、とにかく最後の山でプッシュすることだけだった」(ヴァイン)
大会史上初めてプロローグで始まったダウンアンダーは、大会初登場の山道で、最終日のクライマックスを迎えた。16秒以内に総合上位3者が並んでいた。スタート直後から逃げと吸収が幾度も繰り返された。緊迫した戦いが続く中、文字通りフィニッシュラインを越える瞬間まで、総合優勝の行方は分からなかった。
今度はイェーツがアタックを打つ番だった。16秒差を逆転するために。チームに今季初勝利をもたらすために。すでにポイント賞を確定させていたマシューズが、発射台さえ買ってでた。元ブエルタ総合覇者は、残り1.7kmですべての力を解き放った。
もちろんヴァインは難なくついてきた。2021年ツール総合4位のベン・オコーナーも同伴した。イェーツは邪魔者を振り切ろうと、何度も加速を試みるが、ただひたすら「イェーツについていけ」と自らに言い聞かせ続けたヴァインを、置き去りにすることなど不可能だった。それでもフィニッシュラインでは、ぎりぎりで先行を成功させ、腕を天に突き上げた。総合2位イェーツと総合首位との最終的なタイム差は、11秒だった。
母国オーストラリアで、27歳ヴァインが、プロ人生初のステージレース総合優勝を成し遂げた。新チームではジョアン・アルメイダの補佐役に指名され、この先2月中旬からジロ・デ・イタリアまで同じレースを転戦する予定だが……今回の成績をきっかけに、自由に走る機会も、時には与えられるのかもしれない。
もはや世界は正常化し、以前となんら変わらないレースシーンが戻ってきた。この先も中東や南米、さらにはスペインや南フランスと、陽光を求めて大陸を股にかけた転戦が続く。2019年以来4年ぶりのフルシーズンが、いよいよ始まったのだ!
文:宮本あさか
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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