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サイクル ロードレース コラム 2022年9月22日

世界選手権男子エリートロードレース展望 | 別府史之のetape par etape

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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Cycle*2022 UCI世界選手権大会 男子エリート ロードレース

Cycle*2022 UCI世界選手権大会 男子エリート ロードレース

「今シーズン、J SPORTSではリモート解説という形でやってきましたが、なんと、今回、日本に帰国して、この世界選手権をJ SPORTSのスタジオで解説します。みなさんと一緒にライブでレースを見ることができるので、とても楽しみにしています。

また日本に帰ってからはイベント参加等々、盛りだくさんの予定です。もしもどこかでお会いする機会があれば、みなさんどうぞよろしくお願いします!」

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レース詳細ページ

●世界選手権とは、自転車界にとってどんなレースですか?

「世界選手権」という名前の通り、ワンデーレースの頂点に立つレースです。ワンデーレースにはモニュメントと呼ばれるミラノ~サンレモ、ツール・デ・フランドル、パリ~ルーベ、リエージュ~バストーニュ~リエージュ、イル・ロンバルディア……がありますが、世界選はそれらとは違い、普段のチームではなく、国を代表して走り、チャンピオンを決めます。シーズン後半ということもあり、シーズンの集大成といっても過言ではないですね。

国の代表として出場するレースですから、たしかにオリンピックに近いです。ただ世界選とオリンピックとの違いは「出場人数」です。普段のレースの結果によって、UCIポイントが選手個人や国に配分され、その集計によって世界選の出場国や出場人数が決まります。オリンピックの場合も、このポイントがもちろん加味されますが、出場人数制限もあります(注)。誰もが出れるわけではなく、つまりオリンピックは「ほぼ個人戦」に近いような形でレースが行われます。

これは僕の個人の意見なんですけども、世界選手権よりもオリンピックの方が難易度は低いのかなと。というのも世界選手権は、参加人数が一国あたり最大8人で、いわゆる「国同士の戦い」になります。その8人の国が集団コントロールを始めてしまうと、もはや参加人数が少ない国の選手、例えば日本選手にとっては個人で対抗することが難しくなりますから。

オリンピックの金メダルは一般に広く知られていますが、自転車選手の誰もが着てみたいと憧れるのは、レインボージャージの「アルカンシェル」なんです。由緒正しい、歴史のある、本当のチャンピオンだけが着てきたジャージです。

(注)2021年東京五輪の男子出場枠130人、最大枠5人を有するのは6カ国。2022年世界選手権は男子出場枠205人、最大枠8人を有するのは10カ国。

●別府さんにとって、世界選手権はどんなレースでしょうか?

世界選手権に初めて出場したのは2000年。ジュニア時代で、フランスのプルエー開催でした。プロになってから、GPウエストフランスで同じ土地に何度も行きましたけど、「わ〜懐かしいな、こんなちっちゃい町だったんだ」と想い出に浸ったものです。ジュニアの頃は右も左も分からなくて、なにもかもが大きく感じて。しかもエリートのプロ選手が目の前で走っているのを実際に見て、「あぁクリストフ・モローだ!、あぁカサグランデだ!」って(笑)。憧れの気持ちも強かったですね。

ジュニアやアンダー23の頃は、僕にとっては、世界の走りを見て、世界とのレベルを比べる場でした。自分は果たして今どのくらいの位置にいるのか。もちろん世界チャンピオンを決める大きなレースではあるんです。でも若い選手たちにとっては、次のステップにつなげるためのレースでもあります。そこで成績を出して、プロになるための場であり、スカウトの場であり。そういう意識がすごく強かったです。ここで活躍することができれば、よりプロ選手に近づける。そんな僕の中での目安でした。

プロになってからの世界選手権は、国を代表して走る、応援してくれる人のために走る、という意識でした。普段のレースでは、チームから求められるもの、というものを主に置いて走るんです。もちろんレース中は皆さんの応援が良く聞こえますし、がんばろうという気持ちも強かった。でも、世界選手権というのは、直に応援してくれている人の気持ちに応えなきゃいけない、という思いでした。

それから世界選手権のいいところとして、ジュニアもアンダー23も、女子も、一緒に日本チームとして大会入りします。つまり夢を持ってプロ選手になりたい、世界で活躍したい……っていう若い選手たちに、夢を与えなきゃいけないぞ、という意地も強くありました。

●今年の世界選手権のコースをどう読みますか?

コースプロフィル

コースプロファイル

スタートしたらまずはシドニー側の東海岸を南下して、平坦を30kmぐらい。その後に大きめの周回を1周ぐるりと回って、そこで1つ大きな山を越えます。そこから小さい周回に入り、17.1kmを12周回。この小さな周回には「コブ」が2つあるんですが、高くても標高が120mくらい……なので、そこまで登ってはいないです。上りの距離自体も短いですね。ただ周回はかなり町の中なので、結構ジグザグしてます。つまりテクニカルなコースでもあります。

展開としては、おそらく、最初の平坦区間と最初の大きな周回で逃げが決まる。それを追うような形で、じりじりじりじり、周回数を減らしていく。エリミネーション的な走りになってくると思います。こういううねうねしたコースでは、コーナーのたびに集団が長く伸びて、プロトンの後ろの方にいると脚を消耗してしまうんですね。だからチームメートに守られ、常にいいポジションで、いかに脚を使わずに周回をこなせるかがポイントです。

ラスト3~4周で「ふるい」がかかり、最終周回で最後の上りを上り切った後に、ハイスピードでフィニッシュまで突入するような感じになるのかな。だからスピードのある選手が有利だと思ってます。グランツールで活躍するような、長い上りが得意な選手というよりも、いわゆるパンチャーと言われるような選手たちに有利なコースプロファイル。最後の勝負どころと言われるようなところで飛び出して、単独で抜け出す、そういう展開になるのではないか。

ただ勝負どころになる山は、距離が短いので、結構まとまったままスプリント勝負になってしまうかもしれません……。この難易度だと、実際、誰にでもチャンスがある。隙をついてアタックががかかった時に、果たして見送ってしまうのか、それともスプリントに向け追走牽引できるか。もちろんアシストを人数残していたほうが断然有利ですから、スプリントに持ち込みたくないチームは、少人数にするためにかなり削るような走りをしてくるでしょうね。その辺りでも展開は変わってきます。

タデイ・ポガチャル

タデイ・ポガチャル

●ズバリ、優勝候補は?

ブエルタ・ア・エスパーニャ、そしてカナダのモントリオールとケベックの結果を踏まえて……うーん、どうしよう、迷うな。優勝候補に上げられそうな選手は何人もいますからね。

だけど、GPモントリオールを見て思ったのは、あそこの上りはかなり勾配がきついし、上り距離も少し世界選より長いんですけど……最後にあれだけのスプリントが出来て、しかもワウト・ファンアールトよりも速かったとなると、やはりタデイ・ポガチャルが有利なのかなと。

ポガチャルはツール・ド・フランスでマイヨ・ジョーヌを勝ち取ることはできなかったけれども、それは21日間という長さゆえの疲労もあってのことだったと思うんです。彼本来のパンチャーとしてのポテンシャルを発揮しさえすれば、世界選手権優勝も可能なはずです。

ただ、どうしてもやっぱりブエルタで総合優勝を果たしたレムコ・エヴェネプールの存在も気になります。先ほどグランツールで勝つような選手向きではない、とは言いましたが、レムコは本来ならばワンデーレーサーの気質も持った選手ですよね。

もちろんワウトも狙ってくる。だから今年の世界選手権はベルギー中心に動くと読んでます。まあ例年……去年のベルギー開催でもそうですけど、あまりのプレッシャーに優勝候補たちが脱落していったケースもあるので、そこが、ちょっとね。どれだけ勝てる布陣で行っても、どうチームがサポートするかで変わってくる。組み立てが難しいんですよ。

ワウトは単独で行くパターンも多いですが、もしもスプリントまで持っていってくれたらありがたい、という状況になるのかな。一方のレムコは、上りが終わった後に、みんながお見合いしている隙を突く。例えばリエージュ~バストーニュ~リエージュで優勝した時の走りなんかは、まさにそういった走りでした。相手の隙をついて飛び出し、あとは自分のリズムでタイムトライアルのような走りをしてしまえば、勝率は限りなく上がるでしょう。ワウトというチームメイトがいることによって、その他の選手に縛りを効かせることができるというのも、ベルギーチームにとっては大きい。

マイケル・マシューズは、大本命というわけではないんですが、地元オーストラリア代表ですからね。チームもかなり強い選手たちで周りを固めて、彼の走りをサポートしてくるでしょう。GPケベックで2位でしたし、今年のツール・ド・フランスはハードなステージで逃げからの優勝を果たしているんで、やはり目が離せないです。

イーサン・ヘイターやフレッド・ライトという、英国の若手も面白そうです。レースを見ていて、おっ、て思うような動きを常に披露してくれるので、うん、もしかしたらもしかしますよ。エヴェネプールはもちろん、ブエルタ・ア・エスパーニャで好走したフアン・アユソもそうですし、ヘイターにライト、さらにはエリトリアのビニアム・ギルマイ……彼らのような若い選手がエリートのカテゴリーにどんどん進出してきて、しかも「もしかしたら」っていう可能性を秘めている。若手の走りも本当に楽しみです。

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世界選手権男子エリートロードレース展望|第6回 別府史之のetape par etape

文:宮本あさか

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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