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【Cycle*2022 ジロ・デ・シチリア:レビュー】驚異の「アッズーリ旋風」 4日間に人生を賭けた男たちがシチリアの英雄カルーゾに勝利をもたらす
サイクルロードレースレポート by 福光 俊介勝利を喜ぶカルーゾ
第3ステージこそ逃げ切りを許し、ジャージを手放したアッズーリだったが、「もともとエトナの上りに集中していた」とカルーゾが語った通り、大会最後にやってくるシチリアの名峰でもうひと勝負に出た。獲得標高3500mにも及んだ1日は、2回のコントラーダ・ジウラーナ峠を経て、全長17.4kmのエトナ登坂で総決算。ここで決めたのは、やはりカルーゾだった。無所属組のお膳立てによって終盤まで脚を残すと、「残り7kmで周りがどんな様子か見てみようと思って、軽くアタックしてみたんだ」と余裕まで見せて。
ジャブを打ってライバルの走りをうかがうと、きっちり勝負どころを見極めて頂上を前に独走態勢に持ち込んだ。カルーゾにとっては勝手知ったる上りだったとはいえ、今回ばかりはただの1勝ではない。キャリアの灯を消さぬまいと懸命に走る後輩たちに報いる、いつもとは異なる価値の勝利だった。
「私のために働いてくれたメンバーみんなに捧げる個人総合優勝だよ。彼らはそれに値するくらいの走りをしてくれだんだ」(ダミアーノ・カルーゾ)
この言葉がすべてを物語っているといえよう。彼らはまだ走れる。プロトンの一員であるべきだということを。
連覇はならなかった二バリ(写真左)
シチリアの栄に浴したアッズーリの陰に隠れる格好となってしまったとはいえ、先に待ち受けるグランツールへ好感触を得た選手たちの様子も見受けられた。個人総合2位に食い込んだジェフェルソン・セペダはジロ・デ・イタリアでの走りが期待できそうだし、過去2回ツール・ド・フランスの総合トップ10入りを果たしているルイス・メインチェスもエトナを2番目で上ってみせて健在ぶりをアピール。島の英雄ヴィンチェンツォ・ニバリは大会2連覇こそならずも個人総合4位とまとめて、同様にシチリア島を走るジロへ好感触。
また、UCIワールドチームから同コンチネンタルチームまで幅広いチームが集うレースには、ワールドツアーとは違った楽しみも満載。特にニュースター候補の走りが見られるチャンスで、実際に19歳のフラン・ミホリェビッチが見せた第3ステージでの大逃げは、世界にその名をとどろかせるには十分すぎる走り。父・ウラディミールも元トッププロ選手で、現在はバーレーン・ヴィクトリアスの監督。そうしたバックボーンからも、将来は約束されたようなもの。日本人選手4人をそろえたEFエデュケーション・NIPPOは、第1ステージで岡篤志がスプリントにチャレンジし、第2ステージでは門田祐輔が逃げグループにジョイン。織田聖、津田悠義もメイン集団内で走るシーンがたびたび国際映像で取り上げられるなど、しっかりと存在を示した。
文:福光 俊介
福光 俊介
ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う
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