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サイクル ロードレース コラム 2009年9月20日

【ブエルタ・ア・エスパーニャ2009】第20ステージレースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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前日までの悪天候がまるで嘘だったかのように、スペインに真夏の陽気が戻ってきた。もちろん歴史深いトレドの町が最も熱を帯びたのは、黄金のジャージがゴールラインに飛び込んできたときだった。割れんばかりの拍手と、「ブラボー」という大歓声。大会関係者たちも地元スペイン人の総合優勝「ほぼ」決定に、笑顔が隠せない。優勝まであと一歩に近づいたアレハンドロ・バルベルデ(ケースデパーニュ)本人は、ほんの2分ほど前にゴールしたサムエル・サンチェス(エウスカルテル・エウスカディ)と固く抱き合い、喜びの瞬間を共に分かち合ったのだった。

区間勝利はデーヴィッド・ミラー(ガーミン・スリップストリーム)が手に入れた。まさに「3度目の正直」で獲得した栄光。1度目はちょうど3週間前のアッセンサーキットTT。優勝本命の中で唯一大雨にたたられ、好走するも15位に終わった。2週間前のバレンシア「市街地サーキット」TTでは、現役最強TTスペシャリストとの呼び声高いファビアン・カンチェッラーラ(チーム サクソバンク)の前に敗れ去った。そのカンチェッラーラは幸いにも第14ステージでリタイアし、すでに1週間後の世界選手権の調整へと向かっていた。「つまり彼の不在を上手に利用したのさ!」と笑うミラーは、27.8kmの難コースを35分53秒、時速46.486kmで走りきった。

ただし会場に詰め掛けた人々の視線は、マドリード入りを翌日に控えて、今ブエルタ最後の総合表彰台争いへと注がれていた。前ステージ終了段階で総合2位から4位のタイム差はわずかに33秒。特に3位イヴァン・バッソ(リクイガス)と4位カデル・エヴァンス(サイレンス・ロット)の差は14秒でしかなく、TT巧者のエヴァンスは大いなる逆転の可能性を秘めていたのだ。

10km地点に設置された第1中間計測ポイントで、エヴァンスは早くも総合タイム差を3秒にまで縮めた。続く19.5km地点では、逆に27秒リードを奪いとった。エヴァンスは2分先にスタートしていたエセキエル・モスケーラ(シャコベオ・ガリシア)をルート上で追い越し、ゴールではバッソとの総合タイム差を40秒にまで開いた。前日のステージで念願の総合3位に上がり、総合3位としてこの日のスタートラインを切り……、総合4位としてゴールラインを越えたバッソは、そのままスピードを緩めることなくゴールゾーンから無口で走り去っていった。

ミラーから9秒遅れと好タイムを叩き出したエヴァンスでも、逆転総合2位の夢は果たせなかった。これ以上ないほどの気合の塊となったサンチェスが、ミラーからわずか5秒遅れの区間2位に立ったのだ。「とにかく全力を尽くした。ウォーミングアップも、下見も、そして本番も」こう語るサンチェスのこの日の目標は、総合2位をキープすることなどではなく、逆転総合優勝だったのだから。しかしバルベルデとのタイム差は大きすぎた。なんとか31秒は縮めたが、まだ55秒ものタイム差が残っている。「黄金ジャージは結局取れなかったね。それなら次は赤色のジャージを目指すさ」。フィニッシュラインで早くも来年の総合優勝を誓ったのだった。

今大会12回目のマイヨ・オロ表彰式を終えたバルベルデは、最終日前夜恒例の総合優勝者記者会見に臨んだ。大会も残すところあと1日。わずか110.2kmのいわゆるお祝い走行を終えたあと、スペイン首都マドリードのシベレス広場にて、29歳のアレハンドロ・バルベルデは第64回ブエルタ・ア・エスパーニャ総合勝者の称号を手に入れる。


●デーヴィド・ミラー(ガーミン・スリップストリーム)
ステージ優勝

最後のタイムトライアルで、こんなにコースがハードだとは思ってもいなかったよ。ロードブックで見た感じではもっと簡単だと思っていた。だから実際に走ってみて、ショックを覚えたほどさ!でもいいコースだったよ。非常にハードな上りと、テクニカルな下りで攻勢されていた。ボクの戦術としては最初は控えめに走って、ステージ後半でタイムを回復することだった。とにかく最高に嬉しい。興奮しているよ。ボクはこのステージを絶対獲りたいと考えてきたから、目標を達成できたね。

ボク個人にとって大きな勝利だよ。チームにとってはどうかな?だってすでにヘシェダルが難関山岳ステージを、ファラーがスプリントを勝っているからね。チームはすでに今ブエルタでの目標を達成していたんだ。彼ら2人が勝てたのはすごく嬉しかった。若い選手が少しずつステップアップして、大きくなっていく姿を見ることが出来た。彼らはこれからが楽しみな選手だよ。

カンチェッラーラは世界一のTTスペシャリスト。だから彼の不在を利用して勝ったのさ(笑)。彼の才能はものすごく高く評価している。だからというわけじゃないけれど、世界選手権ではTTじゃなくて、ロード種目に集中していく。


●アレハンドロ・バルベルデ(ケースデパーニュ)
総合リーダー

すごく満足だし、ようやく気持ちが解放された。ずっと長い間グランツールを勝ちたいと願ってきたから、本当に嬉しいんだ。この3週間、最初から最後までチームがボクを支え続けてくれた。感謝の気持ちでいっぱいだよ。

ツール・ド・フランスの不出場が決まった後は、とにかく集中し続けようと努力した。目標をブエルタに切り替えて、モチベーションを保ち続けた。最高レベルでブエルタに臨むためにね。でも8月は家族から離れてハードなトレーニングを積んだから、辛かったよ。

今回のブエルタでは、今までと戦術を変えて臨んだんだ。とにかく体力を温存することを心がけた。以前のボクはアタックしすぎだったよね。今年は重要なステージレースに出場して、総合争いを繰り返すことで、グランツールの勝ち方を覚えたんだ。区間優勝のやり方ではなくて、総合優勝のやりかたさ。だから区間優勝が出来なかったことに対しては、何の後悔もないしストレスもないんだ。この3週間で一番苦しかったのは、ラ・パンデラ峠の上り序盤。でも本当に、序盤だけなんだ。自分のリズムで走ることで集中力も調子も戻ってきて、あとは山頂まで問題なく走れた。でも今日は気分が良すぎて、あまり悪かったときの状況は思い出せないや。嬉しい気分でいっぱいだからね。

これで初めてのグランツールタイトルを取ったわけだから、次はツール・ド・フランスの総合優勝にチャレンジしていきたい。もちろん難しい挑戦だろうね。コンタドールという強力なライバルもいる。でもまずは表彰台、そして総合優勝、という風に徐々にレベルを上げていきたいと思っている。

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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