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サイクル ロードレース コラム 2010年9月5日

【ブエルタ・ア・エスパーニャ2010】第8ステージ レースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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スカイ・プロフェッショナルサイクリングチームのマッサー、ゴンザレス氏急死の報を受けて、チームはブエルタ撤退を決意した。開幕時から選手たちも体調不良を訴えており、前日までにすでに3人がリタイアしていた。チームは早急に原因究明と精密検査を行う予定だ。またスタート地では1分間の黙祷が行われた。第8ステージに関わる賞金は、全てゴンザレス氏の家族に寄付されることになった。大会1週目を終えて、プロトンは186人となった。

今大会初めての本格的山岳ステージとあって、序盤から多くの選手が飛び出しを試みた。アタックの応酬で少々ざわついたプロトンに、スタート10km地点で集団落車が発生する。50人近い選手が地面に投げ出された。その中には前日の勝者アレッサンドロ・ペタッキ (ランプレ・ファルネーゼヴィーニ)や、マイヨ・ロホのフィリップ・ジルベール(オメガファルマ・ロット)の姿も。これ以上の混乱を避けるために、開催委員会は18km地点の中間スプリントポイントをキャンセルすることに決定。おかげでバラバラになった集団はひとつにまとまり、負傷した選手たちは心静かに治療を受けることができた。一方ここで一旦ポイント=ボーナスタイムを手に入れていたホアキン・ロドリゲス(チーム・カチューシャ)は、後々悔しい思いをすることになる……。

一旦リセットされたアタック合戦も、再び50km地点前後から再開。ここで自他共にお待ちかねの、ダヴィ・モンクティエ(コフィディス ル クレディ アン リーニュ)が飛び出した。2年連続ブエルタ山岳賞に輝いているモンクティエは、第6ステージに「わざと」10分31秒遅れのグルペットでゴールしていた。総合を脅かす存在ではないことを自らアピールして、有力選手から山岳ポイント収集の旅にでることを許してもらうためである。ただし総合本命たちが逃げを黙認しても、青玉ジャージ着用者のセラフィン・マルティネス(シャコベオ・ガリシア)は危険人物をみすみす逃しはしなかった。マルティネスのほかに、山岳巧者ヨハン・チョップ(Bbox ブイグ テレコム)、今年限りで現役を退くホセルイス・アリエッタ(アージェードゥゼール・ラ・モンディアル)、アッサン・バザイエフ(アスタナ)がモンクティエと共に逃げに乗った。

普段は控え目で物静かなモンクティエだが、決めるときは決める男として有名だ。2004年と2005年のツール・ド・フランスでは、それぞれ1度ずつ逃げて、それぞれ確実に単独勝利を手に入れた。2008年ブエルタでも1度目の逃げで区間を取った。2009年ブエルタだけは、1度目の挑戦で珍しく勝利を逃している。山頂ゴールまであと800mに迫ったところで、メイン集団からアタックを仕掛けたダミアーノ・クネゴに追い抜かれたのだ。もちろん後にエスケープに再挑戦し、そこでは無事に大逃げ勝利を獲得。つまり……モンクティエと共に逃げた場合、区間勝利をモンクティエから奪い取ることなんてほとんど無理な相談なのだ。やはりこの日も、そうだった。最終峠ソレット・デル・カティの斜度のキツイゾーンで、モンクティエがたった一度ペダルを深く踏み込んだだけで、この日の区間勝負は決着がついた。

モンクティエは3本の指を立ててゴールラインに単独で飛び込んできた。3度目のブエルタ参戦で、3年連続の、3度目の区間優勝。ただしマルティネスが全ての峠でポイント収集に励み、10ポイント差で山岳賞首位を守りきったため、モンクティエの3年連続の山岳ジャージ獲得はお預けとなった。ちなみに2008年は区間勝利の翌日にジャージ回収、さらに2009年は一旦ジャージを手放したこともあり、決して過去2年も簡単に山岳ジャージを手にしてきたわけではない。引退宣言を撤回し、もう1年走るモチベーションを取り戻したモンクティエは、この先も青玉ジャージのために戦う準備は出来ている。

後方のメイン集団は、残り45kmから大きく動き始めた。それまでエスケープの5人に8分近くリードを与えていたプロトン内で、突然、サーヴェロ・テストチームが強烈なスピードアップを始めたのだ。2級カラスクエタ峠を上って下りる10kmの間で、なんと4分も縮まる猛加速。ところがラスト25km付近で、またしても突然、サーヴェロの牽引は終了する。タイム差も再び5分半へと広がった。果たしてサーヴェロの意図とは?最終峠ソレット・デル・カティの登坂口が非常に道幅が狭いことが、この行動のきっかけだった。180人の集団で山に突入した場合、ポジション取りの苦手なカルロス・サストレ(サーヴェロ・テストチーム)が後ろに取り残されてしまう恐れがある。だから集団をせめて80人くらいまでに絞り込んでおく必要があったし、2級カラスクエタ峠での加速で十分にプロトンを小さくすることが出来たとのこと。そして最終峠に入ったメイン集団内で、最初にアタックを仕掛けた大物はサストレだった!

ただし2008年ツール王者の飛び出しは、ライバルたちに行動のきっかけを与えたに過ぎなかった。すぐにロドリゲスとイゴール・アントン(エウスカルテル・エウスカディ)、ヴィンチェンツォ・ニバリ(リクイガス・ドイモ)の表彰台候補が加速し、3人だけの戦いの世界へと突入していった。特に総合同タイムで並ぶアントンとロドリゲスは、ほんの1秒でもライバルを引き離そうと、激しい戦いを繰り広げた。エスケープの4人がゴールしていたため、もはやボーナスタイムの残っていないフィニッシュラインへ向けて、ロドリゲスは苦手なスプリントさえ切った。

自転車競技のルールによると、もしもロドリゲスのバイク後輪の後ろと背後の選手/集団のバイク前輪の前の差が1秒以内だった場合、背後の選手にもロドリゲスと同タイムが与えられる。逆に1秒以上の差があった場合は、背後の選手/集団には実際のタイムが与えられるのだ。だからロドリゲスは、この1秒差をつけるためにスプリントを切った。しかし背後のニバリとの差は1秒以内で、さらにニバリとその背後のアントンとの差も1秒以内。つまり3人全員にロドリゲスのタイムが与えられ、ロドリゲスとアントンは同タイムで並んだまま。しかも赤ジャージ姿のジルベールは遅れていたため……2人のタイムはすなわち総合トップタイム。ただし同タイムとはいえ、順列をつけなくてはならない。2人はここまでのステージ順位の総和(アントン348、ロドリゲス350)で比較され、アントンに総合首位の座が与えられた。すでに数日前からレッドジャージ獲得を試みているロドリゲスは「(上述した)あのボーナスタイムさえあったら」とがっくり肩を下ろした。一方でジャージなどまったく期待していなかった27歳のアントンは、生まれて初めて着るグランツールリーダージャージに歓喜した。また2人と同時にゴールしたニバリは、2秒差で総合3位につけている。

サストレは3人組から6秒差でフィニッシュ。チームメイトのシャビエル・トンドも3秒差でゴールし、総合では42秒差の4位に浮上した。どうやらサーヴェロ・テストチームの仕事は大いに報われたようだ。エセキエル・モスケーラ(シャコベオ・ガリシア、3人組みから区間33秒遅れ)、フランク・シュレク(チーム・サクソバンク、1分07秒遅れ)、デニス・メンショフ(ラボバンク、2分15秒遅れ)は、思い通りの走りを見せることが出来なかった。メンショフは落車でヒザを痛めたと報告されている。


●ダヴィ・モンクティエ(コフィディス ル クレディ アン リーニュ)
区間優勝

開幕以来、ずっといい感触を抱いているんだ。エスケープ集団はタイム差を開くために、上手く協力し合っていい走りをした。最後の上りの、一押しで勝負が決まったね。ブエルタの目標は青玉ジャージを取ること。だから2日前には、飛び出す自由を得るためにあえてタイムを失った。今日のステージにはあらかじめ印をつけていたし、思い描いていたシナリオ通りに物事が進んだ。ジャージを取れなかったこと以外はね。山岳賞ではマルティネスがまだボクよりも上位につけている。手ごわいライバルだ。この先もボクに簡単に仕事をさせてはくれないだろう。

3回目のブエルタ出場で3年連続3回目の区間優勝。すごく嬉しいね。すごく調子がいいから、またアタックを打つつもりだよ。アンドラの頂上ゴールなんか悪くないね。ビッグネームたちを相手に自分がどれだけやれるのかすごく興味がある。伝統のコバドンガの頂については耳にしたことがあるけれど、どんな上りなのかまったく知らないんだ。この勝利はローラン・フィニョンと昨日亡くなったスカイのマッサーに捧げたい。人生には、スポーツよりも大切なことがあるんだ。

●イゴール・アントン(エウスカルテル・エウスカディ)
総合リーダー

果たして誰の手にマイヨ・ロホが渡るのか、ゴール後の3、4分はサスペンス状態だったよ。ボク自身はまるで考えてもいなかった。だってロドリゲスが途中でボーナスを取っていたから、彼がジャージを手するものだとばかり思っていたからね。集団落車のせいで中間スプリントの結果が取り消されていることを知らなかったんだ。だから総合首位に立ったことは、ボクにとってはすごいサプライズだったのさ。

今日のステージはほんの前哨戦に過ぎないんだ。ブエルタがこのままロドリゲス対アントンの一騎打ちとなるとは思わない。最も危険なライバルはニバリだ。彼は調子がいいし、モチベーションも高い。それにフランク・シュレクやメンショフといった選手を、表彰台候補リストから決してはずしてはならないんだ。だって彼らはほんのちょっとタイムを失っただけなんだから。全ては最終週に決まる。メンショフとシュレクも調子を上げてくるだろうし、モスケーラもやはり果敢に攻めてくる選手だよ。

このジャージは昨日亡くなったゴンザレスに捧げたい。数年間エウスカルテルで働いていたんだ。昨日、彼のために勝ちたいと思った。勝つことは出来なかったけれど、このジャージは彼のものなんだ。

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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