人気ランキング

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

メルマガ

お好きなジャンルのコラムや
ニュース、番組情報をお届け!

メルマガ一覧へ

コラム&ブログ一覧

サイクル ロードレース コラム 2010年9月8日

【ブエルタ・ア・エスパーニャ2010】第10ステージ レースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
  • Line

1回目の休養日に地中海岸スペイン北部のカタルーニャ地方に突入したブエルタ一行は、チーム・カチューシャの激しいコントロール下に置かれた。チームリーダーのホアキン・ロドリゲスはこれまでも散々努力を繰り返してきたにも関わらず、結局「タイム差ゼロ」の総合2位のままで、念願だったマイヨ・ロホ地元凱旋は叶わなかった……。ならばこのカタルーニャで赤ジャージを奪取しようと、今ステージはさらに毅然とした態度で集団制御に務める。

湿気を含んだ海風が肌にまとわりついてくるなか、スタート直後からハイスピードの追いかけっこが繰り広げられた。飛び出したい選手たちと、誰一人として飛び出させたくないチーム・カチューシャ。アタックしては潰し、潰されてはアタックの連続で、序盤30分はなんと時速51kmを記録したほど!ただし41.2km地点に設置された第1中間スプリントポイントでロドリゲスが3位通過=ボーナスタイム2秒をもぎ取り、(暫定)総合首位に立つと、カチューシャはようやく12人にエスケープの許可を下ろした。

ところが、12人の中にはフィリップ・ジルベール(オメガファルマ・ロット)の姿があった。第3ステージ終了後から5日間に渡って総合リーダージャージを着用していたジルベールは、未だ首位からわずか1分55秒差につける危険人物だ。カチューシャは自ずと追走の手を強める。そのジルベールは、マイヨ・プントス争いで好ポイントを重ねた。世界選手権では共にベルギー代表ジャージをまとうグレッグ・ヴァンアーベルマート(オメガファルマ・ロット)との連携をまるで確かめ合うかのように、56.9km地点の第2中間スプリントポイントをワンツー通過。4ポイント手に入れてポイント賞2位にせり上がった。そしてこの地点を過ぎると、1人で静かにエスケープ集団から後退していった。

ようやく、ついに、エスケープ集団は静けさを手に入れた。タイム差は一気に5分40秒まで開いた。今ステージ唯一の1級峠への登坂口、ゴール前約36km地点ではプロトンに2分10秒差に迫られたが、後方の有力者たちは互いの様子見とタイム差コントロールに興味があっただけ。登坂口へ向けてのスプリントと上り序盤のポジション争いを繰り広げた以外は、特にエスケープ吸収に向けての追い上げを見せることはなかった。おかげで逃げ切りを意識し始めた前方11人は、1級峠から区間勝利へ向けての争いを開始した。

「1級の山頂を越えて、もう終わりだと思っていたのに……。その後も何度も厳しい上りがあってびっくりしたよ!」とゴール後のロドリゲスが語ったように、確かに山岳ポイントがつく峠は1つしか登場しなかったが、この峠がステージ唯一の峠ではなかったのだ!そしてラスト25km、予想外にハードな無名峠で、先頭からイマノル・エルビーティ(ケースデパーニュ)が飛び出しを成功させた。

下りを上手く利用して逃げのライバル8人を突き放したエルビーティは、25kmもの長距離を見事ひとりで走りきった。2008年ブエルタでも逃げ切りの果てに区間を制した経験を持つエルビーティだが、2年前はニコラス・ロッシュ(アージェードゥゼール・ラ・モンディアル、当時はクレディアグリコル)を軽い上り坂スプリントでギリギリ退けての勝利だった。前回はゴールラインで両腕を上げる余裕がなかった分、今回はたっぷりとガッツポーズを繰り返し、勝利の感激に浸りながらフィニッシュラインを越えることができた。またケースデパーニュにとっては、休養日前の第9ステージに続く嬉しい2区間連続勝利となった。

エルビーティから1分38秒遅れのメイン集団内で1日を終えたロドリゲスは、とうとうマイヨ・ロホを肩にまとった。ボーナスタイムで手に入れたわずかな2秒差。「でもボクにとってはどんなやり方で手に入れたリードだろうが、どんなわずかなリードだろうが大切なんだ」とスペイン語で語ったロドリゲスは、地元メディアやファンに向けてはカタルーニャ語で喜びと感謝の言葉を繰り返した。セビーリャの開幕からチーム全体で赤ジャージのために働き、何度もあとわずかのところで悔しい思いをしてきたが、最高の瞬間は地元で迎えることが出来た。しかも翌第11ステージの山頂フィニッシュの地、アンドラは、ロドリゲスが現在の住居を構えるピレネーの小国だ。「勝手知ったるトレーニングルート」だという第2の地元へ、さらなるリードを奪うために赤ジャージ姿でいざ乗り込む。

またスタート前にアンディ・シュレクとスチュアート・オグレディ (共にチーム・サクソバンク)が、チームから帰宅処分を言い渡された。2人は休養日の夕食後にアルコールを飲みに出かけ、これがチームの内部規律に触れたとのこと。表彰台を未だ諦めていないフランク・シュレクは、大会折り返し地点で早くもアシストを2人失ってしまった。


●イマノル・エルビーティ(ケースデパーニュ)
区間勝利

今ブエルタではボク、ロペスガルシア、パサモンテス、ガルシアアコスタの4人が逃げに反応していくよう指示されていた。その2人が、2ステージ連続で勝つことが出来たんだから、本当にすごいことだよね。他の2人も勝てる実力を持っているから、この先も期待できるよ。ボクにとってはブエルタ2勝目。確かにアシスト選手にとって勝利をつかむのは簡単なことではないよ。でもこの勝利のおかげで、アシストにも勝利のチャンスがあることを証明して見せた。いい日を選んで、脚があれば、アシストにだってチャンスはある。

最終盤では下りが危険だと考えた。だから1級峠を終えた後の小さな上りでは、山頂を先頭で通過して下りに備えようと考えていたんだ。その上りでライバルたちが苦しんでいることに気がついて、脚に力を込めたんだ。

●ホアキン・ロドリゲス(チーム・カチューシャ)
総合リーダー

このジャージを手に入れるために、すごく働いた。大会スタート時からチーム全体で必死に仕事をしてきた。そしてちょうど、地元に来たタイミングでジャージが手に入った。今後の作戦は、対する選手によって変わってくる。とにかくこのリードは非常に大切なもの。ボクにとってはどんなにわずかなリードでも大切なものなんだ。多分タイムトライアルでタイムを失うことになるから、この先大切なのはさらにリードを広げること。チームはこれまでも非常によく働いてくれた。ジャージがないときでさえこれだけ働いてくれたんだから、ジャージを取った今はさらにいい仕事をしてくれるだろう。

今日の最終盤はきつかった。最後の1級峠は好ポジションで入るために全員が戦って、すごくリズムが上がった。しかも1級峠の山頂を越えた後にも上りが何度もあって、脚には厳しかったね。ゴールまでの体力配分は難しかった。今日は地元でちょうどよくジャージが取れたけれど、別に地元だからと狙ってきたわけではない。ジャージが取れたらいつだって、それは非常に大切なことなんだ。明日のステージもよく知っている。いつもトレーニングしている場所だからね。これまで以上にタイム差が大きくつくだろう。さらなるリードを奪うには良いチャンスだよ。

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

  • Line

あわせて読みたい

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

ジャンル一覧

J SPORTSで
サイクル ロードレースを応援しよう!

サイクル ロードレースの放送・配信ページへ