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まさかの総合首位交代劇が起きた。アルデンヌクラシック風でもあり、上れるスプリンター向きでもあるコースで、風と分断が多くの選手を苦しめた。クリス・フルームはチームメートに惜しみない感謝を贈りつつ、たった2日でマイヨ・ジョーヌを取り戻した。1日中プロトン先頭で働いてきたチームサンウェブとBMCレーシングチームの俊足エース対決は、マイケル・マシューズに軍配が上がった。
またしてもファーストアタックが決まった。これまでの平地区間と同様に、バトルは一切起こらなかった。人生最後のツール・ド・フランスだというのに、いまだ少々逃げ足りないトマ・ヴォクレールが、前日に続いてスタートフラッグと共に飛び出した。素早く反応できたのはチモ・ローゼン、マキシム・ブエ、そしてトーマス・デヘントのみ。少しだけ遅れてレト・ホレンシュタインが合流を果たすと、これにて打ち止めとなる。
いや、むしろ、逃げ合戦は許されなかった。すぐさまサンウェブとBMCが集団前方で横一列になり、プロトンに固く蓋を閉めたからだ。地形的には大逃げだって可能なはずだった。しかし「上れるスプリンター」マシューズを有する前者と、ワンデークラシックスペシャリストにして、2年前に同じフィニッシュラインで栄光をつかみ取ったフレフ・ヴァンアーヴェルマートを擁する後者が、制御不能な人数を飛び出させるつもりはなかった。
つまり大逃げの果てにマイヨ・ジョーヌの日々を通算20日間も楽しんできたヴォクレールや、今区間を含む逃げ距離がダントツナンバーワンの通算約590kmに達したデヘントにとっては、少々不満の残る1日となった。「スプリンターチームの作戦にはうんざり。もうおなかいっぱい」(テレビインタビューより)と、引退まで1週間と1日に迫った38歳はこぼし、「正直言って勝つ脚はあった。でも、そのためには、一緒に逃げてくれる協力者が必要なんだ」(ミックスゾーンインタビューより)と、ベルギーの髭面は肩を落とした。
5人は決して3分以上のリードをもらえなかった。ラスト32km地点でデヘントが独走を始めてからは、ただじわじわと距離を詰められていくだけだった。
写真:逃げた選手のうち、最後まで残ったデヘント
ステージ前半には、マルセル・キッテルにも素晴らしいスプリントの脚があった。55.5kmの中間スプリント地点は、メイン集団の先頭で駆け抜けた。わざわざ緑色のジャージ用ポイントを新たに10pt追加したのは、フィニッシュが自分には難しすぎることを、承知していたからかもしれない。ステージの折り返し地点で、道は中央山塊へと分け入る。起伏は徐々に増していく。フィニッシュまで約50km、この日最初の3級峠で、早くもキッテルは遅れ始めた。
しかも、嫌な横風が、吹いてきた。途端にプロトン全体が、ぴりぴりとした雰囲気に包まれた。分断の危険を避けようと、総合表彰台候補はポジション取りに神経質になった。サンウェブとBMCはより一層スピードを上げた。集団後方は長い長い一列棒状となり、次々と脱落者が生まれていった。
ラスト12.5kmで、ついには、孤独な旅を続けていたデヘントも飲み込まれた。同時に数度のカウンターアタックが発生すると、やはり2チームが完璧に対処した。たとえばトニー・マルティンがタイムトライアル世界チャンピオンの強烈な脚で、カオスを生み出そうと試みるも、サンウェブ列車が冷静に飲み込んだ。続いてやはりカチューシャからマリウツ・ラメルティンクが飛び出すと、すかさずBMCはダミアーノ・カルーゾを張り付かせた。サンウェブもニキアス・アルントを送り込んだ。ラメルティンクが先頭交代を促しても、至極当然のことではあるけれど、2人は頑として前には出なかった。フォルテュネオのピエールリュック・ペリションが遅れて合流してくると、ようやく少しだけ加速に協力してくれた。結局ラメルティンクは独走態勢に入るのだけれど、残り4kmで、無駄な抵抗には終止符が打たれた。
カウンターアタックに対処したサンウェブとBMCの代わりに、メイン集団先頭でスカイが隊列を組んだ。キッテルはいないけれど、フィリップ・ジルベールとダニエル・マーティンという2人のアルデンヌ巧者を誇るクイックステップも、猛烈に集団先方で加速を繰り返した。カヴの抜けた穴を、どうにか埋めようと必死の努力を続けるディメンションデータは、ラスト1kmから、早めの仕掛けで集団をかく乱しにかかった。
全長570m、平均勾配9.6%の上り坂に差し掛かると、クラシックの国の住民がパーティーへと繰り出した。ベルギーチャンピオンジャージを身にまとうオリヴェル・ナーゼンが真っ先にパンチ力を披露し、クラシック現役最多13勝を誇るジルベールが跳ね上がり、昨夏のリオ五輪金メダリストのヴァンアーヴェルマートが加速態勢に入った。
「残り400mで本気の加速を切った。でも、すごく、長かった。いつまでも終わらないような、そんな気持ちを抱いた。そうこうしているうちにヴァンアーヴェルマートに追い越された」(ジルベール、フィニッシュ後インタビュー)
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