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サイクル ロードレース コラム 2017年6月30日

【ツールに恋して~珠玉のストーリー21選~】日本自転車界を牽引する男、新城幸也の矜持

ツールに恋して~珠玉のストーリー21選~ by 山口 和幸
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※本企画は2017年に実施されたものです。予めご了承ください。

世界中の自転車ファンを魅了して止まないTour de France。男たちの激闘の裏に隠されたHUMAN DRAMAに僕らは胸を打つ。ここに紡ぐ珠玉のストーリー21選があなたに届くとき、聞こえるのはきっと、ツールへの恋の予感。

【STAGE 21】日本勢初のステージ優勝を目指す、新城幸也(日本)

「あー、やらかしちまった!」

2009年7月5日、F1グランプリで有名なモナコで行われたツール・ド・フランス第2ステージ。ステージ5位になった瞬間に新城幸也(当時Bboxブイグテレコム)の口をついて出た言葉だ。

もちろん大失敗したという意味で、満足のかけらさえなかった。新城はその後、ツール・ド・フランスに通算6回出場して全完走という日本自転車界不滅の記録を更新し続けているが、ステージ成績としてはこのときの5位がいまもなお日本勢の歴代最高位である。

開幕初日は個人タイムトライアルだったため、この日が通常形式のロードレース初日だった。そんな状況で、しかも初出場の新城がいきなり5位をゲットしたというのに、なぜ不満だったかといえば、「千載一遇のチャンスを逃してしまったから」にほかならない。

新城は大胆不敵にもステージ優勝に照準を合わせていたが、チャンスはそれほどないことも分かっていた。「一度逃したら次のチャンスはない」という予感は的中した。

「いつものレース。気負うところはない」と満面の笑顔で初日のスタート台を発進し、「はいつくばってでもパリ・シャンゼリゼまでたどり着きますよ」とコメントしていた新城だが、スペインのバルセロナにゴールする第6ステージで落車し、太ももから臀部にかけて強打した。

ゴール後に声をかけると「大丈夫です」と気丈にふるまったが、後日話を聞いてみたがケガの程度は深刻だったようで、翌日からのピレネーでの山岳ステージはリタイアしても不思議ではなかった。

大会10日目に設定された最初の休息日に、新城に疲労の色とあせりが感じられた。発言にも追い詰められた者の焦燥感があった。

「完走とステージ勝利のどちらを取るかといわれたら、迷わずにステージを取る。だから優勝できたら翌日にリタイアしてもいい!」

こうして新城は、別府史之とともに日本勢初の完走を遂げることになるが、「3週間のレースを完走できてよかったとは思うが、積極的な動きをすることができず、悔しい気持ちも強い」というのが本音だった。

「3週間は長くてツラいだろうなあと思いこみすぎていたのか。実際のところはいつものレースと同じで、あっという間だった。走り続けてきたので、明日もレースがある感じ。レース終了後にシャンゼリゼをパレードして、ようやくこの大会が終わったことを実感した」

新城がツール・ド・フランスに寄せる思いは人一倍強い。2012年には第4ステージで敢闘賞、2016年の第6ステージで敢闘賞。そして2017年も日本勢初のステージ優勝を目指す。

代替画像

山口 和幸

ツール・ド・フランス取材歴25年のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、日刊スポーツ、東京中日スポーツ、Number、Tarzan、YAHOO!ニュースなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)。2013年6月18日に講談社現代新書『ツール・ド・フランス』を上梓。青山学院大学文学部フランス文学科卒。

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