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「困難しかない!」今プロスポーツチーム運営は! 山野勝行(Bリーグ アースフレンズ東京Z 代表)×坂本竜介(Tリーグ T.T 彩たま 執行役員監督)×谷口廣明(スポーツアナウンサー) 困難突破トーク
J SPORTSプロデューサーコラム by 杉山友輝(J SPORTSプロデューサー)プロスポーツチームの苦悩
新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、シーズン途中で終了となってしまったプロバスケットボールリーグ「Bリーグ」。そして、卓球「Tリーグ」は3月に予定していたプレーオフ ファイナルを開催することが出来ず19/20シーズンの幕を下ろした。 チームを運営するマネージメントサイドは、この困難を突破すべく、どのようなモチベーションで日々を過ごしているのか? ベンチャー魂にあふれた二人に、オンライン上で対談をしてもらった。進行はスポーツアナウンサーの谷口廣明氏。
3シーズン目と7シーズン目のベンチャーチーム
谷口:なぜチーム運営をするようになったのですか?
山野:「アースフレンズ東京Z」は大田区を中心に世田谷、品川、目黒、城南エリアで活動をしていて、6シーズン目が終わり、創業して7年目を迎えました。
今から15年ほど前にひょんなきっかけからバスケットボールを見て、身長差関係なくスターになれるスポーツで凄くおもしろいと思ったんです。世界を見るとNBAしかり、ヨーロッパ、アジア、南米でも楽しまれているグローバルスポーツで、世界一番競技人口が多いことに驚きました。一方で、日本国内の盛り上がりはいまひとつ、それがチームを始めるきっかけとなりました。
坂本:チームが立ち上がると同時にオファーをいただき、最初は監督というカタチでしたが、自分自身も起業して5年経っていたので、運営もできないかとのことで、監督兼執行役員になりました。また、選手の獲得も自分でしますのでGMも担当で、運営と現場をなんとかやっているという状況です。
Tリーグはまだまだ知名度が低いので、Bリーグに追いついていけるよう色々仕掛けています。T.T 彩たまも大きな親会社がついているわけではなく、地域密着型で運営しているので、山野さんと似ていますよね。
「困難」しかないので何が「困難」かわからない、そしてコロナの影響と本来の課題は「分けて」考えるべき
この対談直前まで打ち合わせを行っていた山野氏。この状況下でも多忙を極めている
谷口:今はどんな困難に直面していますか?
山野:創業してから困難しかないので何が「困難」か分からないですよね(笑)。
ただ、今回のコロナウィルスの影響は、過去最大級。Bリーグもシーズンのファイナルが出来ずに終わってしまい、ホームゲームの収益も減りました。Bリーグは6月決算の会社が多いこともあり、期末にこういうことが起きるか!?という驚きです。
でも、スタッフにもよく話しているんですが、コロナによって受けているダメージと、本来課題としてあったものが、コロナによってあぶりだされているのかは、分けて考えるべきです。課題としてあったものについては、できるようにしなくてはなりません。
そして、過去の事例でいうと入場者数が戻ってくるのには何年か必要です。いかに早く集客を戻せるか、露出を減らさないようにして、ファンの皆様がチームを忘れないよう、この時期に積極的にアクションを起こしています。時代と方法がかわったのなら、そこにどうアジャストして積極的に進めていけるか、他が止まる中でも自分たちが上がっていけたら、上にいるビッククラブに少しでも追いつけるチャンスと捉えています。
坂本:Tリーグは通常のシーズンが2月までのため、ギリギリシーズンは終えらましたが、3月14日に予定していたプレーオフは中止になりました。
シーズンが終わっていたので、支出という面では会場費、設営費などの固定費はかからず済みましたが、スポンサーに対しての営業ができなかったり、個人の試合も中止となっていて、来シーズンのスタートの予定が立っていません。
卓球にもテニスでいうウィンブルドンのような4大大会があって、T.T 彩たまでは来シーズン契約選手9名のうち、5名が世界のトップ選手のため、国際大会が優先でなかなか話がすすまないんですよ。
国内は9月まで試合が中止で、リーグ再開が決まった場合に、選手たちはいつ練習ができるのか、試合には来られるのかという懸念があります。
オンラインの活用次第では「濃厚」なふれあいが可能
卓球選手のセカンドキャリアにおけるパイオニア的存在の坂本氏。多くの卓球選手から兄貴分として慕われている
谷口:両チームとも、ベンチャースピリットにあふれていますが、今後どんな取り組みを考えていますか?
山野:選手に会いたい、話したい、プレーを見たいというのがニーズだと思うが、体育館が使えないので、ZOOMなどを駆使して選手と一対一で会話ができる「Zの部屋」という企画がスタートしました。試合があるのは年間60日程度。会場に行けない方や試合がない300日を、ファンの皆様にどうワクワクしてもらえるか、さらに企画を仕掛けます。
坂本:スポンサーの協力なしにプロチームは運営できません。スポンサーメリットをどうするかを考えるなかで、営業手段のひとつとしてオンラインは適していると思います。Tリーグには、卓球をやっている人なら誰でも知っている世界トップの選手が集まっているので、企業の代表や営業さんも参加してもらって、選手と共にCMを作ったりしたいです。また、卓球は子供たちも多いので、映像を送ってもらって選手が直接アドバイスする形を取れば、講習会や卓球教室、ファンミーティングでは出来ない「選手と一対一」という空間が作れます。オンラインの活用次第では、濃厚なふれあいが可能なんです。
T.T 彩たまは3歳児と4歳児と契約
Tリーグの中でも断トツのSNS発信数やイベント数を誇るT.T彩たま。坂本氏も必死になってアイデアを考えるという
谷口:チーム運営と言う面では、選手の育成もしにくい状況にありますね。
山野: ユースは学校が休校しているのと、体育館が使えないので一旦活動中止となっています。全中やインターハイの中止は、大切な機会の損失ではありますが、今できることとして、担当コーチとオンライン面談を行い、細かな指導しています。
坂本:Tリーグは2018年にスタートしましたが、T.T 彩たまはその時点で3歳と4歳児と契約をしているんです。極論ですが、卓球は始めるのが早ければ早いほど、ボールの感覚が身に着きやすいと言われていて、一流選手になるには7歳までに始めなければならないとまで言われています。
T.T 彩たまは今年2月にホームグラウンドが完成し、3月からトップチームとジュニアチーム、卓球教室の運営がスタートする予定でしたが、それも中止となりました。
選手それぞれに、練習ができない辛さ、レベル維持などの苦労はあります。
でも、卓球は二人いればできることと、卓球台がそこまで大きくないこともあり、家に卓球台をいれて自宅で練習している選手もいます。
BリーグとTリーグでの「コラボイベント」開催を!
驚かされたのは山野氏のスピード感。対談終了後、すぐにオンライン飲み会のスケジュールを調整した。
谷口:チームを運営するということの醍醐味はどのあたりでしょうか?
山野:日々大変なこともありますが、ホームアリーナで多くのファンの皆さんと、一緒に試合に勝つ喜びを味わう、あれに勝ることはないですね。まだ優勝という経験がないので、それを味わったらまた違うのかもしれませんが、昨シーズンは連敗のあとに勝った際、万歳三唱が起きたり、選手、演出チーム、チア、ファン、みんなで勝利を喜ぶ瞬間はそれまでの苦労が吹き飛びます。そしてありがたいことに、平均入場者数は年々増えていて、4年前の開幕戦は300人でしたが、昨シーズンの最終戦は2,000人を超えたんです。
坂本)私も山野さんとまったく一緒です。勝った時は最高、負けたときは最悪。
監督としても運営としても、勝利の喜びに勝るものはありません。卓球は個人スポーツなので、個人戦で勝ったときに選手は監督とコーチくらいしか喜びを分かち合えないのですが、Tリーグは団体戦なので、みんなで一緒に喜びを分かち合えます。選手もそれはとてもうれしいようです。
谷口:コロナの終息後、チャレンジしたいことはありますか?
山野:毎年様々なチャレンジはしていて、昨シーズンは「Zboyz(ゼットボーイズ)」という応援ユニットができました。来シーズンのキーワードは「オンラインとオフラインの融合」。これまでは試合会場のコンテンツをどうするか、飲食はどうするかなどリアルのことしか考えていませんでしたが、来シーズンはオンラインでの新たなチャレンジも考えたいです。
坂本:Tリーグは今年3シーズン目に突入します。これまでの2シーズンはリーグ側が運営をしていましたが、新シーズンからはチームや母体が運営をしていくことになります。卓球は競技人口が多いけれど、Doスポーツとして認知されていて、お金を出して見に行くという人が少ないんです。少しずつ増えてきてはいるものの平均1,200-1,300人とやはり少ないです。「エンターテインメント」をキーワードに、さらに集客できるよう考えていきたいです。
山野さん、屋内スポーツという共通点を活かして、是非TリーグとBリーグのコラボ企画で一緒に試合をやりませんか? お互いのファンが、お互いの競技を見てファンを増やしていけるように、どうですか?
山野:それはいいアイデアですね! さっそくオンライン飲み会で、話し合いましょう(笑)
コロナウイルス終息後の「進化した世界」に向けて
谷口:シーズンを待ちわびているファンに、メッセージをお願いいたします。
山野:私もTリーグの試合を見たこともありますし、是非試合を一緒にできたらいいですよね。ここから新たな未来をつくっていけるよう「何のため」にやっていくかを貫いて、ファンの皆様に応援していただきながら、頑張っていきたいと思います。
坂本)日々進化、日々変化です。いつになったらコロナが起こる前に戻るだろうか?ということではなく、コロナが終息した際にさらに進化した世界になれるように、努力していきたいです。そしてやはり、皆さんとスポーツを楽しんでいきたいです。
文:J SPORTS 杉山友輝
杉山友輝(J SPORTSプロデューサー)
若手のADを見るとすぐに「メシくってるか?」という昭和臭いプロデューサー。担当競技は卓球・ラリー・ゴルフ。毎日自らで作ったカスピ海ヨーグルトを食べるのが健康法。ニックネームはスギP。
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