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オープン戦に登板する松井裕樹(パドレス)
何か感覚をつかむべく、何度も一定の動きを繰り返した。春季キャンプのとある日。パドレスの松井裕樹投手(28)はブルペン入りした。
翌日にオープン戦での登板を控えていたため、わずか10球の制限付きの投球練習。投げ終えるとそこから1時間15分、軸足(左足)から、右足を踏み出す並進運動、体重移動の流れの確認に時間を費やした。
「力のベクトルですね、簡単にいうと。それを直角90度、この軸足のここから、直角90度にホームベースに向けるための身体の位置だったり、よりこっち(捕手の方向に向かっていく)のスピード感、並進のところです」
ルーベン・ニーブラ投手コーチが、身ぶり手ぶりで動きを伝え、松井が右足を挙げてから、踏み出す流れの中で右腰を支える。マウンドの傾斜からホーム側に倒れながら、力をロスすることなく投球につなげる感覚を探し求めているようだった。
3月7日、ガーディアンズとのオープン戦では、7回に6番手で登板。1回1安打、無失点と好投した。この日は13球を投げ、10球のストライク、2三振を奪い、直球を11球投げ、最速は92.4マイル(147.8キロ)だった。
「体重移動だったり、タイミングのところを引き続き、意識というか、それを身体に染み込ませるようにやっています」
「タイミングが合った中でアームスピード(腕の振り)も、けっこう上がってきたのかなっていう感覚。球速自体はそんなに出てなかったですけど、感覚はすごい良かったですし、何よりバッターの反応が良かった」
球速は91~92マイルだが、投げるボールに力が適切に伝わっている好感触があった。打者が振り遅れる、タイミングが差し込まれ気味にすることができる、詰まった打球で打ち取ることができる。地道に取り組む細かな作業が、着実に身についていることを実感できるマウンドだったようだ。
メジャー2年目を過ごす松井は、環境や練習の流れを把握し、快適に過ごしている。
「施設もそうですし、チームメートだったり、スタッフさんだったり慣れてきたんで、すごく自分のやりたいことに集中させてもらっている、そこに集中できてます」
フォームチェックする松井と見守るダルビッシュ
さらに尊敬するダルビッシュ有投手(38)は松井にとっては、先輩のチームメートであるばかりではなく、コーチ的な役割なのかもしれない。
ダルビッシュはたびたび松井のブルペン投球などを間近でチェック。また、松井もダルビッシュの実戦投球練習などを見学している。
「僕がダルさんのチェックするなんて、そんな大それたことはしてないですけど(笑)」
「ダルさんがやりたいことを聞かせていただいているんで、意識して、どういう動きを取っているかっていうので、それを見て、ダルさん、どうでしたかみたいな。何が良かった、何が悪かったのか、その要因を教えてもらってますね」
「僕のやりたいことも、ダルさんにお話しさせてもらって、キャッチボールとかも、ちらっと見てくれたりとか、前回よりこうなってたねとか、感覚の話とかだったり、いろいろたくさんお話しさせていただいてます」
謙虚に学び、実直に野球に取り組む姿勢の継続している。今季は勝利パターン継投の一角に入ることを目指している。
同地区で戦力補強を進めたのは、昨季のワールドシリーズ覇者のドジャースばかりではなく、一昨年のナ・リーグ王者のダイヤモンドバックスもいる。ポストシーズン進出とその先へ、リリーフ投手陣で松井が重要な役割を担う。
文/写真:山田結軌(MLBジャーナリスト)
山田 結軌
1983年3月生まれ、新潟県出身。立教大時代にJ SPORTSの野球班でプロ野球中継の現場でスコアブックを書くアルバイトを経験した。サンケイスポーツに2007年4月入社、阪神、広島、楽天などを担当し、2016年2月より大学時代から夢みたMLB取材を続けている。2025年2月に18年間務めたサンケイスポーツを退社しフリーに転身。
X(旧:Twitter)
@YamadaMLB
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