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野球 コラム 2024年10月1日

【広島好き】高速化が進むプロ野球界にあらがい、13年連続一軍登板の通算80勝の野村祐輔が現役引退

野球好きコラム by 前原淳
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引退を発表した野村

先日、現役引退を発表した野村祐輔

球速の高速化が進む中、球の切れと制球力でプロ野球の世界を生きてきた。広島が27日、野村祐輔が今季限りでの現役引退を発表した。210試合登板で80勝64敗、防御率3.53。1年目から13年連続で一軍登板を果たした。6年連続V逸となったシーズンに、3連覇戦士がまた1人、ユニホームを脱ぐ。

野村は広陵から明大をへて、11年ドラフト1位で広島に入団した。1年目から先発ローテーションの一角を担い、9勝11敗。リーグ2位の防御率1.98を残した。当時は140キロ台中盤から後半の直球に、多彩な変化球を交えて打者を手玉に取った。16年には最多勝と最高勝率のタイトルを獲得して、リーグ制覇に大きく貢献。18年には開幕投手も任された。

18年までの3連覇に貢献してきたが、一方で17年に腰を痛め、18年には背中の痛みから離脱を味わった。度重なる負傷は球速にも影響した。とはいえ、球速を上げることを求めても限度がある。球速を求めて長所である球の切れや制球力が落ちては本末転倒だ。野村が選んだアプローチはこうだ。

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「全部、真っすぐに見えて欲しい」

直球を磨いてほかの球種と緩急差を出すのではなく、カーブを除いたほかの変化球が直球の軌道に近づくことを求めた。複数の球種を直球と同じ軌道から変化させる“ピッチトンネル”の精度を追い求めた。カットボールやスライダー、ツーシームと左右の変化球を両サイドに徹底して投げた。

直球に対する探究心がなくなったわけではない。技巧派にとっても、投球の軸は真っすぐ。投球技術を磨きつつ、直球にこだわり続けた。

速さはなくても、強さは出せる。右足でプレートを踏み、両手を上げてから左足を上げ、そして右腕を振るーー。限られた投球動作の中でも「体を大きく使う」意識を体にたたき込んだ。登板前のブルペン投球は、ラスト1球は必ず、打者のベルト付近への直球だった。

22年シーズンの初登板となった6月10日西武戦での全104球のうち140キロ超を計測したのは1球しかなかったが、それでも白星を手にした。今季初登板となった8月2日中日戦では、最速は139キロにとどまった。それでも同じ軌道から左右に曲げる変化球に、球速を落としたチェンジアップ、カーブで直球を引き立てた。5回6安打を浴びながら、無失点。勝ち星は得られなかったものの、粘投でチームの勝利に貢献した。

今季はここまで2試合の登板し与えられていない。21年から一桁登板のシーズンが続いたが、それでも腐ることなく、与えられる登板機会を待ち、そこに向けて全力を注いできた。

明大の後輩でもある森下は「自分のやるべきことをしっかりやられているなと。自分のことを分かっていて、練習の準備もいちばん多くやっていた。本当にすごいなと、日頃から見ていた」と感じていたと言い、1年目の常広も「祐輔さんは練習始まる前から1人で先に来て練習したりする姿を見ていた。気づいたのはキャッチボールの重要性。しっかり丁寧にボールを投げている印象です」と振り返る。

技巧派として、わずかな制球ミスも許されない勝負の世界を生き抜くために必要なことだったのかもしれない。ここ数年は苦しいシーズンが続いたが、そんな姿は若い選手には生きた教材となった。

新井監督は今季最終戦となる10月5日、本拠地マツダスタジアムでのヤクルト戦に先発させることを決めた。後輩にとっても、ファンにとっても、その姿を目に焼き付けることができる最後の登板となる。

文:前原淳

前原淳

前原淳

カープ取材歴18年。03年に地元福岡の大学を卒業後、上京。編集プロダクションで4年間の下積みをへて、07年に広島の出版社に入社。14年12月にフリー転身。現在は日刊スポーツの契約ライターとして広島担当。日刊スポーツだけでなく、NumberWebにて「一筆入魂」を隔週連載するなど幅広いメディアに原稿を執筆するカープライター。X → @mae_junjun

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